Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

退廃芸術の行方は?

2013-11-08 | 歴史・時事
火曜日の記者会見を受けて、FAZがトップ記事でグルリット家の絵画について伝えている。興味深いのは、雑誌の報道が事件解決に困難をもたらしていることで、実際79歳のコルネウス・グルリットが生きているのか、どこにいるのかも「関係者以外には明らかに出来ない」ということで、その押収した絵画の山の現在の所在と共に謎のままである。そして、2010年にチューリッヒからミュンヘンへ向けて列車で移動中に、通常の検査で新札の札束を持っていたこの男性がヒルデガルト・グルリットの息子かも断言されていない。ヒルデガルトには、未亡人ヘレナと他に娘のレナーテがいたとされる。因みに、ミュンヘンのアパートに家宅捜査を掛けたのは、2011年になってからであり、マックス・ベックマンのそれがオークションに掛けられたのはそれ以前と訂正されて、更なるアジトの存在は否定されている。

絵画の内容では、1942年にフランスから強奪されたマティスの「座る婦人」のほか1919年と記された未知のオットー・ディックスの「自画像」があって、ハレの美術館にあったフランツ・マルクの「馬のいる風景」も紹介されている。その他ガッシュの作品群として、シャガール、ピカソが挙げられる。その他、ココシュカ、ロートレック、アウグスト・マッケ、キルヒナー(これは既にメランコーリッシェス・メードシェンとして市立のマンハイムのクンストハーレが返還を希望している)、ルノワール、カール・シュミット・ローットルフ、クリスチャン・ロールス、カール・ホーファーなどがあるが、1937年の法に基づく押収ものとは異なるということでもある。

コルネリウス・グルリットへの嫌疑は、脱税容疑であったが、それ自体本人がその合法的な所有を証明できるならば、それ以上の罪に問えないので、当局がそれを証明する立場にはないとするのは当然であろう。相続税脱税の時効は遠に過ぎていることでもあろう。しかし、個人が所有権を主張しているマティスの作品など200点と想像される作品群は1998年発効のワシントン条約で返還される。

面白い記事に、今回の主役となったリスト作りを進めているマイケ・ホフマン博士に関連して、こうした数ある退廃芸術に関する学術的な研究を専門としている研究室や施設は存在しておらず、今回の件もそれに関して専門の彼女が任を担っているということである。

音楽とは異なり美術骨董品は、その芸術を愛でようが関心がなかろうが、こうして所持しておくだけで、それが本物である限りその価値は維持されて、それが闇で扱われようが表に出ようが投資価値が維持されるということでもある。先頃、投資ファンドの有名なコレクターである総裁が、所持していた美術品を一斉処分することになって話題となっていた。今回の件を見ると、追徴課税などを処分できる美術品で清算すれば何とかなるということならば、どのような手段で強奪しようが盗もうが時効がこればなんとかなるということにもなり兼ねない。そのような背景があるからこそ、今回押収した宝の山の所在は安全のために秘密にされているというのも納得できるのである。



参照:
Schwabinger Sensation, David Klaubert,
Der Star ist die Kunsthistorikerin, Julia Voss, FAZ vom 6.11.2013
グルリット家の負の遺産 2013-11-07 | 歴史・時事
山本太郎よりも厄介な天皇 2013-11-06 | マスメディア批評
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする