パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

日本一の女

2014-12-21 | book
1964年生まれの斉木香津(さいき・かづ)の「日本一の女」を読む。新聞書評から。生まれ故郷の大分を舞台に,戦前,戦中,戦後を生きた女性の一代記。2014年6月刊行。

大分の商家に生まれたサダ(サル)は,同じ大分の田舎の農家,匹田家に嫁ぐ。嫁入りの金を実家から借り,精米機を購入し,人を雇い,財を成す。サダは子宝にも恵まれ,9人の男子を成す。そして,戦争。

頑として自説を曲げない。自分の考えを通す。そんなサダを人は煙たがり,実の息子たちにも嫌がられる。しかし,商売や生き方など,その筋の通った理屈は,明確であっけらかんだ。敗戦後も自由闊達な生き方を通す。

18歳で嫁に来て。昭和56年,74歳で亡くなる。33回忌の法事に孫娘が,会社,夫のことで悩み,実家を訪れ,菩提寺の和尚さんに,サダのことを聞きはじめるところから物語は始まる。小さい頃から容姿に悩み,親兄弟にも不満がある中で,ただ一人,商才に恵まれ,女手一つで人生を切り開く。義母と長男を亡くす戦争という暗い影の中でも,歯を食いしばり,周りの嘲笑や偏見にもくじけない。そんな姿はまさに,日本一にふさわしい。

タイトルの「日本一の女」とは何か。決して点数では表せない,自分のものさしで日本一にふさわしいなら,それが日本一なのだ。痛快で読後もさわやか。語りのうまさが際立つ。しかし,最近の女流作家は皆,元気だ。出版界と読者がそれを支えている。

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