
著者の和久貴洋氏は、日本スポーツ振興センター所属、バリバリの現役。
そんな彼のこの本のテーマは、サブタイトル= オリンピックの勝敗は情報戦。
確かに最近のオリンピックでは、紙一重の僅差で金・銀・銅の勝負がつくギリギリの戦いが増加中。
アスリートも、「アマチュア」という言葉は、完全にブランデージ時代の過去の言葉となり、フルタイム・アスリートが主流の時代に。
そういう時代になると、各国のメダル戦略を形作る「情報」が俄然注目されるのは必然かもしれない。
そうして「スポーツ・インテリジェンス」が脚光を浴びつつあるのだろう。
本では(あえて)一言も触れていないが(9月10日 第一刷)あの瞬間から、全く違う次元の視点での読書に変わったことを痛感する。
あの瞬間とは当然、9月8日。
痺れまくった最初の投票→イスタンブールとマドリッドがタイ→決選投票の結果= マドリッドが除外→5時の発表までジリジリ→そして5時、遂に開催地発表!
2020東京オリンピック開催決定によって、地の利を最大限生かすメダル戦略がリアルで真剣な課題になったからだ!
本で紹介されている英のロンドン・オリンピックに向けてのインテリジェンス活動(ミッション2011)やカナダのバンクーバー、のようなポジションに日本も立っている、ワオ!
本から読み取れる、日本のスポーツ・インテリジェンスの歴史をまとめてみる。
2001年 国立スポーツ科学センター スポーツ情報研究部が出来、JOCと連動開始
2002年 ソルトレイク・オリンピックでの惨敗を受け、JOC内に分析チーム発足
2003年 タレント発掘、育成に着手
2004年 アテネ・オリンピック「東京Jプロジェクト」原地との最新情報共有、分析
2005年 JOCゴールドプランステージ2を策定し、重点強化方針を打ち出す
2008年 ナショナル・トレーニングセンターがオープン
北京オリンピック 選手村以外のサポート拠点構想始まる
2010年 広州アジア大会にて、マルチサポートハウスをテスト
2011年 スポーツ基本法の制定
2012年 ロンドンオリンピックで、マルチサポートハウスが本格稼働
上記だと結果、政策中心で面白い感じが伝わらない(笑)
が実は、とてもスリリングなのが、原地でのインテリジェンス活動。
他のサポートハウス視察、情報収集、分析、評価そして交換(give & take)
原地だけでなく、終了後の非公式会議で試合結果から導き出されるさらに深い情報交換。
プライオリティ・スポーツの選定、メダルポテンシャルアスリート分析etc...
こうした中で、マスメディアで行っている希望観測的な予想とはまるで違う、プロフェッショナルなメダル獲得数予想がなされていく。
う~ん痺れる(笑)
後書きで作者が語る、スポーツ・インテリジェンス活動に最も必要な資質とは=「感性」
そしてまだ日本はインテリジェンスの世界扉を開けた段階に過ぎず、これまで以上に研鑽を積まねばならない、と締めくくっている。
今後の日本でのこの動向に注目しなければ、とはっきり思わせる点で、非常にタイムリーに有効な一冊だと結論づけたい。
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