前回取り上げた「リバース・イノベーション」が最新バリバリで、先週の新聞読書評に先んじ紹介できたが、今週はやや周回遅れ。
だが、そのショッキングなタイトル!だけで、まず強烈な刺激は十分?!
「超」整理法だけでなく「論客」として有名な 野口悠紀雄氏の著作。
サブタイトルは、貿易赤字時代を生き抜く経済学。
以下、各章で刺さったフレーズをメモ。
(カッコ内は当ブログの記述)
第1章 日本の輸出立国は大震災で終わった
貿易赤字は一時ではなく、構造的(原発問題以降、こうなった)
電力問題は、脱工業化だけでしか解決できない(電力使用過多の産業には頼れない)
第2章 日本の貿易構造は変化している
機械や部品の輸出が増えるべきだが、増えているのは原材料製品
エネルギー多消費的な産業において国内生産比率が一定または上昇気味という傾向が見られる
(高付加価値の輸出が増えていない)
第3章 円高について通念を変えるべきとき
海外から資源を安く買えることは復興に不可欠(震災後の日本では円高が重要な意味を持っている)
政府がぼろ儲けの手段を提供した(FX投機者は政府介入することでノーリスクで儲けた)
第4章 電力問題に制約される日本経済
東電は、地域独占と総括原価方式で支えられていた(かかったコストは上乗せでOK)
(にもかかわらず)
安全対策を疎かにするインセンティブが、会計上存在していた(!!)
第5章 縮原発は不可能ではない
「エネルギー基本計画」には定量的な記述が少ない(定性的な一方、唐突な数字が根拠レスで登場)
経済成長率を見直せば、原発依存度は半減する(電力需要が減少するので)
第6章 製造業の事業モデルを変える
製造業の赤字は一過性なものでなく構造的
輸出立国モデルは継続できない
製造業を日本に残しても雇用問題は解決しない(過去のデータで結果が出ていない)
第7章 海外移転で減少する国内雇用をどうするか
仮に製造業の国内生産が拡大したとしても、国内雇用は減少し続ける可能性が高い
給与の低いサービス産業に労働力が移動した(確かに!)
日本経済の問題は、価格下落でなく所得下落(問題はデフレでない)
第8章 TPPで本当に議論すべきは何か?
中国の出方次第で、日本は大打撃を受ける(関税率の低いアメリカも巻き込む複雑な外交ゲーム)
TPPやFTAは輸入振興策としては時代遅れ(えっ!)
第9章 欧州ソブリン危機は日本に波及するか?
決して内容全てに同意するわけでもないし、はっきり言って第6章は解決策提示部分が弱い、などと気になる点もある。
が!
「新聞を鵜呑みにしてはいけない」と感じさせる「論点」がこれだけたくさんあるという点で、非常に貴重な読書だったと結論づけたい。
野口氏がこ論客として毎週吐き出す、週間ダイヤモンドの「超」整理日記に、毎週ちゃんと目を通さねばと反省しきり...
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