日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
このプラットフォーム上で思いついた企画を実行、仮説・検証を行う場。基本ロジック=整理・ソートすることで面白さが増大・拡大
 



前に予告?していましたが、 タイトルだけでぐっときてしまった本、「サッカーで燃える国野球で儲ける国」を読了した感想を。

著者は、スポーツ系の経済学者、ステファン・シマンスキー(英)、アンドリュー・ジンバリスト(米)。


サッカー、野球、対比することによってそれぞれの個性が浮かび上がる企画だけに、興味深く読ませていただきました。

一言に言うと、片や閉鎖的、独占的、そして儲かる野球。
       片や開放的、競争、そして儲からないサッカー(FIFA,UEFAではなく、クラブチーム)

お互いが実は意識しあいつつ、リーグ構造や選手年俸に改革を加えてきた両者。
前半はサッカー、野球それぞれの歴史をたどっていくのでそれほど特徴はないのですが、選手の年俸とクラブに関して記述している章から俄然おもしろくなり、後半のメディア特にテレビ放映権の話、チームの戦力均衡と人気についての章で一気にピークに達します。

「メディア、テレビ放映権」の話で特に興味をひいたのが、メディアが登場した当初(ラジオ)、野球でもサッカーでもそれによって観客動員が減少する懸念が論議されるくだり(それは杞憂に終わるわけですが)
あと放映権によってファンがふりまわされる現象の部分も。
スペイン・リーグの放映権がまだ固まらないためにヤキモキしているバルセロニスタ他のスペインファンには身にしみる話題です!


また「チームの戦力均衡と人気」も正に永遠のテーマと言え、各種の分析調査などが引き合いに出され、読ませます。

ただし視点として、「チーム数と人気」という見方も実は重要なのではないかと私は思います。
この2つの視点がミックスされることで、より立体的に俯瞰することが可能になり、特に日本の現状を考えるにはいい分析法になります。

例えばJリーグで感じるのは、リーグチーム数を急激に増加したことによって、各チームに戦力が分散化し、試合自体の面白さがかなり減少してしまっていることです。
日本がアジアのクラブチームレベルで闘えない要因のひとつとも言えます。
この本では、サッカーは人気が特定のクラブに集中していることを指摘していますが、日本では逆点した現象になっているわけです。

日本では、「巨人・大鵬・卵焼き」(古い!)というくらい巨人が戦力的にも人気的にも圧倒してきました。
そしてその巨人は、ナイターの視聴率低下はとどまるところを知らず、コンテンツとしての力を落としつつあります。
私見ですが、野球自体のコンテンツ力の低下とともに、日本においては、超メジャーすぎるものゆえに加わっていた求心力が低下し、「巨人に集中していた野球人気の分散化」も関係していると思います。
「チームの戦力均衡と人気」の項もこういう前提で読むとより面白くなります。


日本の野球全体についてふれますと、本当に不思議で仕方ないことがあります。

世間的にも言われており、当ブログでも再三指摘している「1試合あたり時間の短縮策」。
こういう施策が行なわれる気配が未だに全くないことです。
日本流のダラダラした駆け引きが、どれだけ試合のスリリングさをそいでいるかは、世界の野球を観てしまったファンには痛いほど感じることなのに....

そして日本だけでなく、世界的な野球自体の地盤沈下が起りつつ有ることをこの本でも指摘しています。
この本が出版されたのが今年の2/16のため、WBCがどんな事態になってしまったかにはふれられていませんが、野球の閉鎖的なマイナス面がさらに世界的に大きく吹き出している現状です。

今や「閉鎖的、独占的、そして儲かる野球」とは言い切れず、「閉鎖的、独占的、であるがゆえに地盤沈下の野球」なのかもしれません?!

(この本、話題まだまだ突っ込めそうなので続くかも)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



     


 
編集 編集