京都の下鴨神社に、イタリア人の巫女さんがお目見えするというニュースがありました。アルバイトということですが、巫女としての礼儀作法や言葉使いを学んだり、下準備が大変そう。でも、このような形で、古来の文化が広く伝えられていくのは素晴らしいですね。
下鴨神社は、「糺の森」という森のなかにあり、京都市中にありながら日中でも幽玄な雰囲気を漂わす、不思議な場所です。この神社に対になるように、さらに北に上賀茂神社があります。僕は学区が下鴨の地域に属していたので、友達との遊び場はもっぱら下鴨神社の境内でしたが、家から近いのは上賀茂神社でした。近いけれども、普段は行かない場所。そこに行くことは、小さな僕にとっては特別の感情がありました。
上賀茂神社界隈に、社家町という景観保存区域があります。いぶし銀の瓦と土塀。そこからのぞく和風の木の風情。脇を流れる疎水。そんな秘めやかな情感は、僕にとって強い原風景になっていて、今の自分の物事に対する好みにもつながっているように思います。
そんな地域にある上賀茂神社は、鳥居をくぐると一変、大陸的な広がりのある雰囲気になります。土塀がもたらす秘めやかさとは逆に、ここでは舞台や神殿が自由に舞うように配され、訪れる度に不思議な気持ちになりました。自分の身近にある存在でありながら、どこかずっと遠いところに来たような。
下鴨神社も上賀茂神社も世界遺産に登録され、観光客もずいぶんと増えたそうですが、観光だけでなく、地域の人々に「しもじん」「かもじん」と親しみを込めてよばれ、子供の遊び場や犬の散歩、あるいは合唱コンクールの練習に至るまで、日々の暮らしに密接に関わる場所としてあり続けているのが嬉しいところ。なにしろ、一見さんお断りの文化、良きものを「隠す」のが京都の風習ですからね(笑)
ところで最近入手した茶室の本によれば、この上賀茂社家町のなかに、とても雰囲気のある茶室があるとのこと。土塀の裏側に隠された狭い茶庭と露地は幽玄の気に満ち、古き物がやすらぐ静かな場所であることが見てとれました。さーて、どこだ・・・?
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