富士市で手がけてきた住宅「富士のふたつの家」が、引き渡しの日を迎えました。この住宅は2軒の家が隣り合って建っているのですが、ひとつの群造形として一体的にデザインしたものでした。ひとつは平屋。もうひとつは2階建て。それぞれの特徴を活かした設計に取り組んできました。
雄大な富士山を間近に望みながらも、交通量の多い街道の交差点にある大きな敷地。風光明媚で開放的というよりも、少し寄る辺のない印象をもちました。
だからこそ、このなかに落ち着きのある「奥行き」のある居場所をつくろう。設計の当初から、そんなことを考えていました。
最初に考えたのは、ふたつの家の中心に、濃く緑が植わる中庭を築くこと。そしてそのまわりに生活の場が広がるようにすること。友人知人が集まる賑やかな場所と、一人でゆっくりと時間を過ごすための静かな場所の両方を、中庭の廻りに散りばめたいと思ったのです。
木漏れ日が心地よい場所。
白い壁に映り込む陰影の美しい場所。
天井が高く開放的な場所。
座ったときにちょうどいい、とても天井が低く落ち着く場所。
いろいろな場所を散りばめました。
考え続けてきたのは、居心地の良い自然の光と陰影。場所に応じたスケール感。そして手ざわり。