ヴォールト天井

2017-01-05 15:06:58 | 陶芸家の家


新年あけましておめでとうございます。
本年のブログは、昨年に竣工した住宅から。

写真は「陶芸家の家」のリビング。円弧を描くヴォールト天井が連なります。
リビングはⅬ型の平面をしているから、居る位置によって天井の見え方も、陽の入り方も、緑の見え方も異なります。
ですから、ひとつの部屋にいながら、居る場所、居る時間によっていろいろな雰囲気が楽しめます。

もともとこのヴォールト天井、きっかけは、施主が所有していた一体の彫刻作品でした。
前川秀樹氏の作品なのですが、流木をつかってつくりあげたものです。
流木の「流れ」や「波紋」のようなものであるとか、前川氏の彫刻のもつ宗教的なイメージに導かれ、聖母子像の納められるイタリアの修道院の室内のような、そんないろいろなイメージが交じり合ってできあがった天井のデザインでした。
そう、ちょうどひとつ前のブログで書いたフィレンツェのサン・マルコ修道院のような。

左官塗りで仕上げられた白い天井は、自然の光や照明の光をしっとりと空間に広げ、落ち着いた雰囲気をつくり出してくれます。
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初窯

2016-08-13 09:17:01 | 陶芸家の家


「陶芸家の家」のお施主さんから、初窯の器を贈っていただきました。
新しくできあがった工房の窯で、初めて焼きあがった器。ずっと家と工房づくりに関わってきた身として、感慨ひとしおです。
ご夫婦それぞれの作風が表れたマグカップと蕎麦ちょこ。この器を使うたびに、ふとお二人のことを思い出すのだろうと思います。
設計者としても、思い入れのつよい仕事となりました。

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光の生まれるところ

2016-05-01 23:16:56 | 陶芸家の家


植栽の打合せで、「陶芸家の家」へ。
この家は、ふわっと円弧を描く天井のかたちが特徴的なのですが、それが不思議な光の波長を生み出すようです。
いつ行っても、一期一会のような光の印象があります。

新緑の季節になり、窓の外に見える借景の緑がぐぐっと濃さを増し、癒される雰囲気の窓辺になってきました。



応接室から見える庭は、まだこれから。でも一方で、白い壁越しにすうっと入ってくる不思議な光の効果も見逃せません。

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生活のはじまり

2016-03-04 15:12:32 | 陶芸家の家


「陶芸家の家」が完成し、いよいよ引っ越し。まだ生活が始まったばかりのところへ、ご様子をうかがってきました。
家具もうまくおさまり、生活の場としての雰囲気が整ってきています。

ダイニングコーナーの広さがうまくいきました。広すぎず狭すぎず、落ち着くちょうどよい大きさ。
丸い天井がふわっと上に掛かり、居心地の良い窓辺になっています。

ダイニングテーブルは holly wood buddy furniture 宮嶋 浩嘉氏によるもの。
ダイニングチェアはハンス・ウェグナー「Yチェア」。
ペンダント照明はルイス・ポールセン「PH5]。

障子越しの柔らかい光が、ナラのテーブルの木目や、器の表情や色味、左官塗の壁の質感を美しく浮かび上がらせてくれます。
お茶をいただきながら、至福のひととき。



キッチンの中には大きな食器棚を造りつけました。
陶芸家である施主の手による器や、これまで集めてこられた数々の器が入ります。天窓のある明るいキッチンのなかで、今日はどの器を使おうかな、と選ぶ時間も楽しいものだと思います。



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ただひとつのオブジェのための

2016-02-26 22:13:19 | 陶芸家の家


このオブジェを置きたいんです。そう言いながら施主に手渡された一枚の写真には、木彫の女性像のオブジェが映っていました。
それは、アーティスト前川秀樹氏の作品でした。
中世の古画のように、静けさに誘う不思議な佇まい。僕も、惹きこまれました。

氏は流木を用いたオブジェをよく製作されるそうです。ゆっくりと流されてきたものが、オブジェとしてここに係留される。そんな物語に僕はわくわくしました。
家の隅に飾るのではなく、いっそのこと、生活動線の中心に置いて、一日のなかに何回も「出会う」ことを愉しみたいと思うようになりました。
家は、そんなオブジェの背景になるのです。



丸い天井は、かつて流木が身をゆだねた波のイメージのような。
あるいは、中世の古画が眠る、かつて訪れたフィレンツェのサン・マルコ修道院のイメージのような。
そんないろいろなイメージがゆっくりと重なり合って、「陶芸家の家」はできあがりました。

静かな光のなかで、左官壁の微妙なテクスチュアと、丸い天井の柔らかさが、背景としての優しい趣きを宿してくれます。
空間の主役となるのは、選ばれた家具と、陶芸家である施主ご自身の手によってつくられた器。
その中心にあるオブジェのために、天窓から光が降り落ちます。

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