寄る辺を築く

2016-02-06 22:23:57 | 白楽の家
「白楽の家」の敷地に旧家屋が建っていた時は、平屋建てでした。数十年前は、平屋でも遠く富士山まで見通せた、絶景のロケーションだったそうです。
だんだんと近隣地域の市街化がすすみ、いつしか、富士山を望むことができなくなってしまいました。
2階建てとして建て替えれば、きっとまた富士山を望むことができる。それも、この家の建て替えの楽しみのひとつでした。

2階にリビングをつくり、見晴らしを愉しむ窓辺をつくることが設計のテーマとなりました。





木でつくった大きな窓辺。そこはベンチにもなっていて、座ると包まれたような雰囲気のスペースです。
この窓辺は、いろいろな工夫を重ねてデザインしてあります。
準防火地域ですから、防火用のアルミサッシを使う必要があるのですが、アルミサッシは、見た目にも無味乾燥として窓辺の空間に馴染みません。
そこで、アルミサッシの枠が目立たないように木で窓枠を造りました。
風景がきれいに見えるように、網入りガラスの代わりに防火シャッターを設置し、透明なガラスをつけています。
また、網戸がいつも付いているのもジャマですから、収納式のプリーツ網戸を木枠の中に仕込んで、普段は隠れるようにしています。
ロールスクリーンも、レースとドレープのものが2重に入るように、十分な大きさのロールスクリーンボックスが組み込んであります。
そして、ベンチの背もたれも木でしっかり造りました。
窓脇の本棚収納やAVボードも、木の窓枠と一体となったデザインとなっています。

こんな風にして、窓辺に寄り添うことを考え抜いてデザインをしました。
ここから、遠くを眺める。開放感と安心感とが交った不思議な感覚。
ベンチに座って見下ろすと、古くから残る庭木が身近に感じられるようになりました。

この家の主役として、以前からあったものを大切にしたかったのです。
古くから残る木々を身近に感じ、記憶のなかの風景を、もういちど蘇らせること。
大きな窓辺のデザインに、そんな思いを込めました。



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