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丸い扉

2019-10-06 23:18:13 | 桜坂の家


家を訪問した際に、印象に残るシーンは何かしらあるものだと思いますが、「桜坂の家」では、不思議なことに多くの方に言われるのが「丸い扉」のこと。
リビングに白い大きな壁があって、その中に突然、その「丸い扉」はあります。
黒い和紙が貼ってあって、ちょっと高さの低い扉。
丸い扉と言われたり、アーチの入口と言われたり、あるいは、茶室だよね、と言われたり。

実際には、扉の奥は和室になっていて、茶室ではないですが、すこし独立した雰囲気の部屋になっています。
扉の奥に、なにか謎が秘められた感じ。
外の緑が鮮烈だからこそ、逆に黒い扉のもつ「謎」感がつよまります。
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壁のこと

2019-05-19 22:22:49 | 桜坂の家


 僕が設計する家は、壁が多くて、窓が少なく見える、という特徴があるようです。実際には窓が少なかったり小さかったりするわけではないのですが、道路からなど、外から人目につきやすいところには窓をあまりつけない、ということが結果的にそのような印象につながるようです。
 プライバシーを考慮してそのようにしているということもありますが、壁が街並みのなかでゆったりとある姿は、ずっと古い時代の建物が持っていたような静謐な雰囲気であったり、秘めやかな雰囲気を宿すように思います。そしてその多くは、石造であったり土壁であったり、自然から生まれた材料そのものを使っているから、必然的にアースカラーの外壁になることが多いのです。

 上の写真は「桜坂の家」の外観。コンクリートの腰壁の上に、大きなアースカラーの壁面があり、中庭に面して緑に覆われている。ただそれだけの簡素な外観です。イメージのもとには、ジョルジョ・モランディの風景画にあるような、素形としての建物の佇まいでした。

 敷地の環境に合わせて壁でゆったりと囲み、暮らしに合わせて窓を開ける。たったそれだけの単純な操作でできあがる佇まいと空間が、時代を経ても変わらない居心地の良さをもたらしてくれると信じています。

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キッチンの小窓

2017-06-07 22:04:36 | 桜坂の家


「桜坂の家」のキッチン。油はねにも無敵(?)の黒タイルの壁に、小さな小窓がひとつ。
まわりの壁が黒いから、額縁のようになって緑が映えます。
たったこれだけのことで、ほっと息が抜けますね。
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8年目の春

2013-04-25 16:47:54 | 桜坂の家

足早に過ぎ去った桜の季節の後、緑陰の心地よい桜並木を抜けて、ひさしぶりに「桜坂の家」を訪れました。前庭のジューンベリーの緑も若々しくて、いい具合。

この住宅は、僕が独立して事務所を構えて、最初に設計した家。だから、並々ならぬ思い入れ(!?)があります。そんな家も、できあがってまるまる7年が経過し、8年目の春を迎えました。この家が建つ敷地は、古色ある落ち着いた街で、とても静かな分、道行く人やご近所の気配が近い雰囲気の場所です。ですから、家の内と外に適度なキョリ感が出るようにしたいと、間取りや窓のプロポーションを一生懸命に考えた記憶があります。 

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家のなかにいて、とても落ち着くということ。そりゃあ、住み慣れた家であればどこでだって落ち着くよ、と言われそうですが、それでも、無為に過ごしているときに、じんわりといいなあと思えるような美しさをつくりだそうとするのは、なかなかに難しいことだと思います。それが、この家でうまくいったかどうか。

ジグザグとした間取りを利用して、窓越しには自分の家の外壁が見えるように設計してあります。そこには緑陰が映り込み、その雰囲気は時間と共に変化していきます。そう、家は動かないものだけれども、とても変化に富んだものにすることができることを、この家に教わったような気がします。

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敷地の廻りの特徴を読み込んで読み込んで・・・。一か所、どーんと大きくとったダイニングの窓からは、お向かいのケヤキの古木が今日も見えます。その足元の、とても小さな、でもとても落ち着く中庭。家に使った材料が7年分の年をとって、味わいがでてきました。そして同時に、新建材といわれる工業製品の材料は、どれだけ時間がたっても、味わいにはならないし、見ていて嬉しくないなあということにも気づかされます。

この家ができあがった当初、まだ独立したてで鼻息が荒かった僕は、内覧会を開いたりして、どのような反応がかえってくるかを楽しみにしたところ・・・同業の若い設計者仲間からは、明確で鋭いコンセプトをもっとカタチに打ち出すべきだ、とか、イマっぽくないよね、というような感じの反応で、ちょこっとペシャンとつぶれたような気持ちにもなったのでした(笑)。でもこうして7年経って、当初考えていたことの効果がじわじわと表れてきたように思えて、ようやくしっくりとくるようになりました。まあ、鮮烈なものよりも、やんわりとしていて、懐の深いものにつながっていくのが希望です(笑)。

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3年目の家

2009-06-08 19:23:07 | 桜坂の家

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「緑と住まい」というような内容でブログが続きましたが、最後にもうひとつ。

先日、オノ・デザインで設計した「桜坂の家」に遊びに行きました。住み始めてから、ちょうど3年ほど経ちました。

こんもりとした緑。

大きな左官塗りの壁。

控えめに開けられた窓。

ようやく、地域の古色ある雰囲気になじんできました。

中にはいると大きなソファのあるコーナーがあって、そこにも素適な窓辺を思い描いていました。

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白い障子がたてこまれ、穏やかな光に満たされた静かな空間。

そして障子を開けると、ジューンベリーの鮮やかな緑に包まれるような空間。

外からの視線も気にすることなく窓を開けて、読書する時間が楽しい明るい窓辺。

3年の間に成長した植栽が、ようやくこの空間を実現してくれました。

都市部の小さな敷地では、うかつに窓を開けるとすぐに外からの視線にさらされ、なかなか落ち着いたスペースがつくれません。家の配置と、窓の配置と、植栽の配置。これらを小さな敷地のなかで、やりくりをしながらあれこれと考え、ようやく居心地のよいスペースができあがるように思います。僕にとっての「居心地の良さ」とは・・・どうやら、静けさとか、秘めやかさとか、そんな風な言葉で表現されるものなのでしょうか。

「桜坂の家」ができたとき、オープンハウスを開きました。多くの方に来ていただいて、それは光栄なことだったのだけれど、今こうしてあるべき姿に落ち着いてきたのを見ると、あの時、あまりこの住宅のことを紹介できていなかったのだろうという悔恨の念もでてきます。なにしろ、できたてほやほやで初夏の太陽のもと、むき出しのまま天日にさらされていたような状態でしたから。

僕の設計する住宅の場合、求める空間の雰囲気が得られるまで数年間、どうやら辛抱強さが必要のようです。それでも、長い時間をかけて味わいを増していく住まいなのであれば、むしろ喜ばしいことなのだろうと思います。

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