山中湖 夕方。

2024-06-23 21:59:56 | 山中湖の家


冬から続いてきた「山中湖の家」の現場通いも終盤になってきました。
真っ白の銀世界から始まって、新緑そして梅雨時期へ。

現場での打合せを終えて、ちょっとした安堵感とともに夕方の湖畔に足を運ぶのが習慣になりました。
このあたりはカフェやお店も早い時間に店じまいをしてしまうので、行くところが無いというのもありますが(笑)
でも、この夕方の光景が、ぼくにとっては最高の現場後のご褒美(?)なのです。

近隣の河口湖に比べると観光客もとても少ないのですが、夕方ともなると、ほぼ人影がなくなります。
とぷんとぷん。
湖の水面が揺れる音と、鴨がすいすいと波紋を残しながら泳いでいくのを眺めながら、満たされた気持ちになります。
作家の須賀敦子さんが著作「時のかけらたち」のなかで、夕方のヴェネツィアで感じ取った心情にちょっと重ね合わせながら、少しばかりの時間を過ごすのが、とても好きなのです。



夕方の光景は特別だな、とよく思います。
陽の光が次第に弱まりながら、でも横から事物を照らします。
照らされた事物は、光を受ける反対側に陰影を色濃く宿します。
そうすると、目の前にある事物が、真昼間には見せなかったような趣きを放ち始めるのです。
存在の「しわ」というのか、歩んできた時間や記憶というのか。

夕方には、山中湖畔の木々も、そんな趣きを宿して。


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書籍の取材

2024-06-18 16:54:29 | アート・デザイン・建築


少し前のことになりますが、書籍の取材で2軒の住宅を訪れました。
5月の気持ちのよい日の撮影取材となりました。
新緑の庭を通して窓越しに入ってくる光は、室内の壁をほのかに緑に染めています。
窓辺に置かれた家具や小物が、その質感を美しく見せてくれていました。



たんなる日常の光景だけれども、じんわりと趣きをもって感じられることが、本当にかけがえのない素敵なことだなと思います。
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キオストロ・ヴェルデ

2024-05-29 18:40:35 | 緑の回廊の家



以前にイタリアのフィレンツェを旅したときに、心に残った場所があります。
そこはサンタ・マリア・ノヴェッラという教会にある中庭でした。
その中庭は小さくて心地よい広さで、緑が植えられていました。

中庭を囲むように回廊が巡っていて、ベンチに座って時間を過ごしていると、とてものんびりできました。
明るくて、通る風が心地よくて。

キオストロ・ヴェルデ ~緑の回廊~ 

この場所はそんなふうに呼ばれているそうです。
緑あふれる回廊を巡る楽しみをつくりたい。
そんなことをずっと思い描いていました。

それから何年も経って、実現したこの家。
家のまわりにはゆったりと回廊が巡り、さらにその周りには緑があふれます。
回廊には屋根が掛かり、列柱が空間にリズムを刻みます。床のタイルのテラコッタ調の色彩が、緑とあわさって優しい感じです。
そして回廊は屈曲しながら奥へ奥へと続き、誘われるようして歩み進むと、そこには・・・。
ここからは、またあらためてブログでご紹介します(笑)


新緑の季節らしい気持ちのよいお天気のなか、この「緑の回廊の家」を訪問しました。
植わってからまだ2か月ほどしか経っていないけれど、若々しく元気な緑が迎えてくれました。
回廊には木漏れ日がゆらめき、秘めやかな風情に満ちていました。



愛犬家のためにつくられたこの家。
室内と庭との間にゆったりと広がる回廊の空間は、天候に関わらず愛犬とゆっくり過ごすのにうってつけです。
でもそれだけでなく、せっかくだからガーデニング用具を回廊の壁に掛けようとか、干し柿を吊るしたいねえとか、建て主といろいろな話で盛り上がりました。
家ができあがってから、むしろ楽しみが広がっていく家というのは、とても素敵だなと思います。

そして、年々と成熟していく緑はいちだんと回廊を包み込み、さらに風情が増していくことでしょう。




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個室のこと

2024-04-23 22:30:28 | 緑の回廊の家


上の写真は、先月にお引渡ししたばかりの「緑の回廊の家」の、個室です。
広い庭があって、そこに面して正方形の窓がひとつ。
庭が広いのだから、もっと大きな窓にすることもできましたが、やはりこのサイズがいいと思いました。

立ったときには、窓の高さがとても低く感じます。
でも、すわったときには、すぅっと目線が庭に滑り出て行って、とてもよい案配。
この部屋では、建て主の愛犬が一緒に過ごしたり一緒に寝たり。そんな暮らしのことをイメージしながらつくった部屋でした。
愛犬の目線からも、無理なく庭が眺められそう。

窓の傍らには、真新しいライティングビューロー。建て主がずっと憧れていたものだそうです。大事なものが、窓辺の傍らに。
無垢のチェリー材で丁寧に作られたこの家具は、家具工房ウッドユーライクカンパニーのもの。職人さん自ら運び入れてくださったそうです。

自分だけの窓辺と、デスクがひとつ。
ぼくにとって、個室のいちばん魅力的なあり方は、そんなところにあります。




上の写真は、かつてイタリアを一人旅したときに訪れた、フィレンツェ近郊の小さな村にある修道院の個室。
回廊のある開放的な1階の空間のうえに、修道士のための個室が並んでいます。
とても小さな空間で、こちらも無垢の木でできたデスクと、小さな窓がひとつ。
要素がとても少ないぶん、窓からの光も鮮烈で、デスクの経年の味わいも際立っていました。
デザインなどなにも無いような空間だけれども、逆に余計なものが何もなく、純粋で真正なものだけがある、という充実感に心が満たされたのを覚えています。
一人旅だったせいかな、笑

このときの一人旅では多くの修道院を訪れて、人々が語らう開放的な緑あふれる回廊と、ひとりきりでいることが心地よく感じる美しい窓辺の個室を、じっくりと見て回りました。
そのときに感じた気分が、その後ぼくが設計する住宅には、静かに息づいているような気がしています。


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ランチ会

2024-04-16 22:16:27 | わらびの家


5年前に完成した「わらびの家」の建て主から、ランチにお誘いいただきました。
ランチ会には工事を担当した監督さんもいらっしゃって、久々に家づくりのメンバーが集い、楽しいひと時となりました。

この家は、テンションの上がるキッチンを!というテーマをいただき、一緒につくりあげてきた家で、ぼくにとっても思い出深く、そしてとても気に入っている住宅です。
とにかく来るたびに、いい。そんなふうに思えることが幸せですし、家を大切にしていただけていることをとても嬉しく思います。
建て主のインスタグラムにも日々の様子が紹介されているのですが、なんて映えること!(笑) 久しぶりに訪れましたが、素敵な雰囲気になっていることを日々見せていただけるのは嬉しいものです。



庭には小鳥が遊びに来るようになったそうです。
ランチ会のときにも、バードバスやピーナッツ台に小鳥が次々にやってきます。
トラックがブンブン通る街道沿いに建つロケーションなのに、一歩中に入ると静かで、小さな庭は楽園のようです。

ハンスウェグナーがデザインしたテーブルや、ルイスポールセンのランプも空間に優雅さをもたらしてくれます。
ぼくたちがデザインした窓も、よい雰囲気で庭の風景を切り取ってくれています。

ゆっくり時間が流れる、落ち着く楽しい居場所。
そんな家になったなあと思えて、嬉しくなりました。
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