」AWACS ( 早期警戒管制機 )、エーワックスと読むそうですが、ステント氏の論文で知りました。ネットで調べますと、次のように説明されています。
・「早期警戒管制機とは、軍用機の一種、大型レーダーを搭載し、一定空域を監視し、敵性・友軍の航空機などの空中目標等を探知・追跡する。
・なおかつ、友軍への航空管制や指揮・統制を行う機体である。「空中警戒管制システム」や、「空中警戒管制機」とも呼ばれる。
AWACS機のパイロットには、飛行禁止区域を侵犯した飛行機を、撃墜する任務が課せられているそうです。
ステント氏の論文です。
・NAT0軍のAWACS機の偵察飛行への、ドイツ人パイロットの搭乗問題は、新たな国際的役割をめぐるドイツ社会へ、深い亀裂を生じさせた。
ドイツの政治家の中には、これが自国の基本法 ( 憲法 ) に違反すると考える者がいます。
・ドイツ軍は「基本法」で、いかなる戦闘行為にも参加できないと定められている。参戦行動への参加は、「基本法」違反である。
彼らはこう主張し、作戦行動の違法性を連邦憲法裁判所へ訴えました。裁判所は、立法府自身が問題の決着をつけるまで、憲法上の判断はできないという裁定を下しました。
関連する一連の動きを、氏の論文に沿って、箇条書きにして紹介します。
・AWACS機には、ドイツ人パイロットが乗り組んでいるが、論争はまだ収まりそうにない。
・AWACS機のヨーロッパ域外での行動を巡っても、激しい論議を巻き起こしている。
・1992 ( 平成4 ) 年、コール首相は「ドイツ社会民主党」の反対を押し切り、国連のソマリア人道作戦に、ドイツ軍を派遣する約束をした。
・ソマリアの政情悪化になともない、国連のガリ事務総長が、平和維持軍への派遣を要請してきた。
・連邦議会は、「人道的支援に限る」との条件付きで、1700名の派遣を了承した。
憲法問題に関する、ドイツの各党の主張を並べて紹介します。
1. キリスト教民主同盟
・国連の活動は、集団的安全保障体制の枠内である。
・国連主導の軍事行動は、基本法に違反しない。
2. ドイツ社会民主党
・平和維持のためであっても、域外での作戦行動や、犠牲者を出しかねない活動は、「基本法」違反である。
・ドイツの「基本法」 ( 憲法 ) 改正には、絶対反対である。
3. 自由民主党
・国連の停戦監視部隊への参加のためには、「基本法」を変えねばならない。
並べてみますと、わが国の自民党に相当するのが「キリスト教民主同盟」で、現実を見ない反日・左翼野党に相当するのが、「ドイツ社会民主党」です。どっちつかずの意見を言いながら、結局は改正反対の姿勢ですから、公明党に似ているのが「自由民主党」です。
しかし1992 ( 平成4 ) 年に、連邦憲法裁判所と議会が結論を出しています。
1. 連邦憲法裁判所
・基本法に言う「防衛」 とは、ドイツの国境を守るだけでなく、危機への対応や紛争防止など、世界中のどこであれ、広い意味での、ドイツの安全を守るために必要な行動を指す。
2. ドイツ連邦議会
・NATO域外への派兵を認める。
わが国のように、戦後74年かかっても結論が出さず、国の安全保障を先送りしていません。この点については、さすがドイツと敬意を表します。
ステント氏の「論文」の紹介を、本日で終わります。日高氏の著書は、まだ125ページで、半分のところです。
喫緊の重要事である「敵基地攻撃」について、どうしても紹介したいことが生じましたので、それを優先することにいたしました。不本意ではありますが、一時中断します。