ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『幻想の超大国』 - 7 ( 安保ただ乗り論 )

2020-01-21 13:52:52 | 徒然の記

 アメリカの知識階級といわれる人々が、日本をどのように見ているのか。率直な氏の意見は平易で分かりやすいから有意義です。

 「終戦後の数ヶ月間は、どちらの国も相手の姿勢に驚かされた。アメリカは寛大な戦勝国となり、極めて理性的で、考え抜かれた講和条件を提示した。」「日本の過去の背信行為を罰するのでなく、日本が封建社会から近代工業国へと脱皮するのを助けるものだった。」

 「日本の態度も、アメリカにとって意外なものだった。日本人は狂信的でなく、講和にも抵抗せず、」「戦勝国であるアメリカに学ぼうとする姿勢を示したからである。」「今から考えれば、日米間の講和は類まれな成功を収めた。」

 「軍事的な大バクチに失敗した日本は、天然資源を持たないまま、国際社会で生きていかねばならなくなった。」「憲法の規定によって、日本は真の軍隊を持っておらず、大都市に人口が集中しているため、核兵器による攻撃に特に弱い。」「こうした状況下で日本人は、その驚くほどのエネルギーを経済に注ぎ込んだ。」

 この辺りの説明には、東京裁判を除けば、自分の生きた昭和を思い出し、うなづくことが多くあります。たが「真の軍隊を持っていない」ことや、「核兵器による攻撃に特に弱い」という指摘については、もっと真剣に受け止めるべきです。アメリカ人である氏には無関係なのですが、真の軍隊がなく、核攻撃に弱い国だからこそ、現在日本は核の脅しに屈しています。

 中国や北朝鮮がそれで、彼らは平気で私たちを脅迫ます。

 「アメリカを選ぶか、中国を選ぶか。」「アメリカを選べば、日本に未来はない。中国はいつでも、日本の首都を破壊できる。」

 中国解放軍の将軍が暴言を述べても、反論しません。この記事を掲載したのは、平和を愛する朝日新聞でしたが、日本の新聞なのに中国と一緒に日本を脅しています。北朝鮮は中国のように言葉では脅迫しませんが、その代わり、人工衛星などと大嘘を言いながら、ミサイル実験を繰り返しています。日本海へ向けて何度も発射し、飛距離を伸ばす研究を続けています。一方では地下核実験施設で、小型核の試験をし、実用化の手前まで行っているという噂もあります。

 中川昭一氏が、「日本も、核の議論をすべきでないか。」と言ったのは、保守政治家としての危機感からでした。しかしわが国は反日マスコミの天下ですから、こういう意見は即座に潰されます。「日本を軍国主義に戻すな。」「戦争を許すな。」「平和を守れ」と、反日野党の政治家を煽り反日の活動家たちを騒がせ、まともな意見を粉砕します。私は今でも中川氏は、こうした勢力に殺されたと思っています。

 安倍総理も、IRや移民法、アイヌ新法などにうつつを抜かしている場合でないはずなのに、頼りない保守政治家と成り果てました。話がそれましたので、氏の著書に戻ります。

 「アメリカとソ連が、冷戦のために国力を浪費しているあいだ、日本は冷戦の現場から身を引いて、その尽きせぬエネルギーを、消費材の生産に、向けることができた。」

 「真珠湾から50年が過ぎた今、誰かがアメリカと日本の双方を訪れたとしたら、どちらが戦勝国で、どちらが敗戦国なのか、平和を享受して国力を伸張させたのはどちらなのか。判断に迷うことだろう。」

 おそらくこれが、一般的なアメリカ人の日本観です。別の言葉で表現したのが、「安保タダ乗り論」です。私はこの論を耳にするたび、アメリカの身勝手さを感じます。彼らは日本の憲法改正を望まず、軍の再建も望まず、沢山ある在日米軍基地の撤退も口にしません。彼らには、米国の武器や装備をふんだんに買ってくれる、自衛隊があればいいのです。

 氏の話に出てくるのは相変わらず真珠湾で、彼らの頭の中から、「不意打ちした卑怯な日本人」という記憶が消えないことを教えられました。「日本への恨みは、千年経っても消えない」と、朴槿恵大統領が言いましたが、アメリカ人も心の内は同じだと知るべきです。

 「カリフォルニア大学の、優れた日本研究者、」「チャルマーズ・ジョンソンが、冗談半分で、こう言った。」

 「冷戦は終わった。日本が勝ったのだ。」

 これが、この章の結びの言葉です。初めて聞く名前ですが、チャルマーズ・ジョンソン教授も優れた日本研究家と言いますから、日本に好感をもたない人物が、アメリカにはいくらでもいるということでしょう。

 今回はここで終わりますが、次回もまた、私たちが耳にする機会がない、遠慮のない日本批判を紹介します。

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『幻想の超大国』 - 6 ( 真珠湾攻撃前の日本 )

2020-01-21 08:34:03 | 徒然の記

 真珠湾攻撃前の日本について、氏がどのように捉えていたのか、興味深い叙述があります。一人のアメリカ人記者の意見に過ぎませんが、現在の反日左翼の人々の意見とそのまま重なります。

 「日本は封建的で前近代的な社会構造と、若い狂信的な軍人たちとの途方もない野望の間で、引き裂かれていた。政局は混乱しており、文官たちに力はなく、政治機構は崩壊寸前だった。」

 おそらく氏は、満州事変 (  昭和6年 )や、5・15事件 (  昭和7年 )当時の日本を語っているのだと思います。

 「大東亜共栄圏のビジョンと、武士道精神の勝利を信じる軍の若手将校たちは、軍部の方針に賛成しない政治指導者たちを、片っ端から暗殺したが、彼らはテロリストとしてでなく、真の大和魂を体現した英雄として扱われた。」「当時の日本は、西欧から民主主義の形だけは借りていたものの、民主主義の本質は無視され、背後へと押しやられていた。」

 ここに書かれている日本は、一面の事実です。氏の意見は、戦後の日本で出版された反日左翼の書からの知識だと思います。当時の日本で盛んに本を書いていたのは、反日左翼の学者たちです。保守系の学者の著作は、GHQが焼却処分していましたから、日本の歴史とご先祖を否定し、GHQに迎合する変節学者の本しかありませんでした。

 欧米列強の侵略から国を守るため、大東亜戦争が始まったことを当然氏は知りません。政局が混乱しても、天皇陛下がおられる限り日本の政治機構が崩壊しないことも、反日の学者たちの書では説明されません。

 まして昭和天皇が2・26事件に際し、自ら兵を率い、反徒の征伐をすると言われたことなど、知るはずもありません。反日左翼の学者たちは、戦後の若者たちを惑わせただけでなく、国際社会にも間違った発信をしたのですから、「獅子身中の虫」でした。

 「真珠湾攻撃」という一度の事件で、アメリカの指導者たちは、際限のない軍拡競争に陥ったと氏が説明しています。当時の世界では、西欧の列強が武力にものを言わせ、アジアを侵略し植民地にしていました。小国である日本が国を挙げ、祖国防衛に突き進んで何がおかしいのでしょう。二つの海に守られたアメリカと違い、日本の危機は目の前にあったのです。

 こういう歴史を知らないから、氏は「若い狂信的な軍人たち」、「途方もない野望」などと言葉を乱用します。反日左翼の学者から知識を得れば、こような意見となるのは当然です。

 「軍部は、ヨーロッパ諸国がアジアを切り分けて、植民地化したのに習い、新たな帝国を建設しようと目論んだ。」「帝国を建設する目的の一つは、かって西欧諸国がしたように、弱小国を征服することで、日本の力を認めさせることであった。」

 ここでも氏は、間違いをしています。日清・日露の戦争で、日本が戦った国は果たして弱小国であったのか。それらの戦争は、「日本の力を認めさせる」というより、国運を賭けた戦争だったのです。反日左翼の学者たちのせいで、日本の若者たちが、国の歴史を否定するようになったことを思えば、氏の間違いを責められません。日本人ですら間違う、ましてアメリカ人においておや、です。

 「不幸なことに青年将校たちは、世界の情勢に全く無知だった。彼らの目はいつも内側を向いており、大和魂の神話を盲信し、日本人の優越性を信じて疑わなかった。」

 次の叙述を読んだとき絶句し、次の瞬間に笑いました。

 「日本と先進国との間の緊張が高まると、軍人たちは、自分たちの主張を強化するのに国際情勢を利用した。日本の帝国主義的野望に対し、先進諸国が警告を発するたびに、それは諸外国が日本を軽視している証拠だと言い、日本の実力を見せてやらねばならないと、声高な主張がなされた。」

 世界情勢に全く無知な軍人が、どうして国際情勢を利用できるのでしょう。無知でないから、そういうことができると考えなかったのでしょうか。無意識なのでしょうが、氏は自分たちのことを「先進諸国」と呼んでいます。尊大な白人の衣が、少し顔を覗かせています。

 もっとおかしな点は、戦前の日本に関する氏の無知です。「日本の実力を見せてやらねばならない」と声高に叫んでいたのは、誰だったのか。戦争を賛美し戦意を高揚させていたのは、ニューヨーク・タイムズが提携している朝日新聞だったことを、知らないのでしょうか。無知であることは幸いなりです。知っていればこのような恥ずかしい意見を、著作で述べる勇気は出なかったはずです。

 書評は現在50ページです。読んでいるとうんざりしますが、息子たちには参考になる意見です。少し割愛できないかと、次回は工夫してみます。

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