ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『幻想の超大国』 - 11 ( 日本とアメリカの政党の違い )

2020-01-23 17:19:11 | 徒然の記

  氏は、アメリカの繁栄をもたらした最大の貢献者として、ヘンリー・フォード氏とフランクリン・リーズベルト大統領の二人をあげています。二人とも日本で有名ですから私も知っていますが、ここまで評価されているとは意外でした。

 ルーズベルト大統領は、真珠湾攻撃を事前に知りながら、アメリカ国民に知らせなかった人物として、私には嫌悪感しかありません。それでも氏の意見を紹介するのは、アメリカを知る手がかりとして有意義である、という気がするからです。

 「アメリカの繁栄の元となったアイディアを生み出したのは、意外に思えるかも知れないが、互いに相手を憎み合っていた二人の男だった。」

 「その一人は、ヘンリー・フォード一世である。」「彼は、普通の労働者たちに目を向け、大量生産方式により自動車のコストを大幅に下げることで、自分の工場で働いている労働者たちを、同時に自動車の購買者とすることに成功した。」「その意味で彼は、20世紀最大の革命をもたらした一人であり、私が思うに、マルクスやレーニンより、遥かに偉大な存在だった。」

 「ヘンリー・フォードが、一般市民のための自動車を作り出したのを受けて、ドイツでは戦後間もなく、フォルクスワーゲンが大衆車の製造を開始した。同じ頃、まだ西欧諸国より、だいぶ貧しかった日本でさえ、ホンダがまずオートバイを作り、続いて、自動車の生産に乗り出した。」

 フォード氏に続き、ルーズベルト大統領の偉大さを語ります。

 「ルーズベルトは、ニューディールの一連の改革を通じて、資本主義をより洗練した形にし、一般の労働者たちの政治的・経済的な権利を守る体制を作り出した。」

 「ルーズベルトのもとで、資本主義はオーナーや経営者のみに利潤をもたらす野蛮なシステムでなく、経営者側の権利要求を、労働者側の権利要求と、うまく折り合わせたものになった。」

 「彼は労働者を産業の奴隷という地位から解放し、基本的な権利を持つ人間に変えたのである。」「ルーズベルトが作り上げたシステムを、全ての国がそのまま導入したのではないが、大部分の国でうまく機能している。だからこそ彼を、この偉大な革命をもたらした、第二の貢献者と呼ぶことができる。」

 ルーズベルトの作ったシステムが、日本に導入されていると知るのは、驚きでした。

 「皮肉なことに、労働者の権利に関するニューディール的な考え方を、率先して日本に持ち込んだのはルーズベルトを憎悪していた、」「ダグラス・マッカーサーだった。」

 「マッカーサーはそうすることで、戦後の日本において、労働組合と経営側のバランスを、うまく保とうとしたのだ。」

 説明をされると、符合する事実が思い出されます。日本では明治44年に工場法が制定されましたが、内容的には労働者の権利を守るより、経営者側に立つ法律でした。組合運動をする者はアカとみなされ、警察に睨まれていましたから、活動は非合法でした。

 調べてみますと、次のような情報がありました。

 「日本の労働法の本格的な形成は、第二次世界大戦後に始まり、1945 ( 昭和20年 )に(旧)労働組合法、次いで1946(昭和21年)に、労働関係調整法が制定された。」

 つまりこれはGHQ統治下のことで、マッカーサーが作らせたものです。それだけでなくマッカーサーは共産党を合法化し、獄中にあった幹部を釈放し、組合活動を認可しました。「占領軍は解放軍である」と、共産党の委員長徳田氏が感激したのは、この時の話です。

 こうしてみますと、良きにつけ悪しきにつけ日本の戦後史は、アメリカ抜きで語れないことが分かります。

 「ブルーカラー層が伸長した時代の、アメリカの政治体制は、高度成長期の日本の体制とよく似ている。当時の民主党は、日本における自民党のような存在だった。」

 全てアメリカの影響だと言いたいのかも知れませんが、そこは違います。アメリカの民主党と日本の自民党が似ているのは、双方が政権を担当したということくらいで、それ以外は似ていません。

 自民党は労働者の権利を守る党でなく、むしろ経営者側の党で、組合から資金をもらい、労働者の権利を主張しているのは反日左翼の社会党でした。

 そして全く似ていない点は、アメリカの民主党と共和党が共に祖国を愛しているのに、戦後日本の政党は、保守も野党も「愛国心」を失っているところです。もっと日本を観察しなさいと、この部分では注文がつけたくなりました。

 書評はやっと70ページです。329ページの本ですから前途遼遠ですが、いつものことなので気にしません。気にする点があるとすれば、私がいなくなった後で発見しても、長すぎるブログを、息子たちが読んでくれるかという点です。

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『幻想の超大国』 - 10 ( 米国人と日本人の反省の違い )

2020-01-23 09:25:49 | 徒然の記

 久しぶりに学生時代の自分に戻り、学徒として氏の説明に耳を傾けます。

 「かくして、今世紀に入ってアメリカが最初に生み出し、50年以上にわたって繁栄の土台としてきた、ブルーカラー中流階級が、永続的なものでないことが明らかになった。」「こうしたことこそ、現在のアメリカが直面している危機の本質に他ならない。」

 「アメリカは、ここ数十年の長きにわたって、類を見ないほどの繁栄を享受したきた。」「その間、アメリカン・ドリームの中核となってきたのは、子供たちの世代は、親の世代より良い生活ができるという信仰だった。」

 「しかしアメリカは、ついに旅路の果てにまで行き着いてしまった。」「今アメリカ人の多くは、口にこそ出さないものの、次の世代は今のような生活を維持できないのではないかという、深刻な恐れを抱いているのだ。」

 陽気で、時に乱暴で、騒々しく、しかし親切で横柄でもあったアメリカ人が、ここまで本心を語るとは考えもしないことでした。できることなら私たちも、戦前の日本の一時期を、氏のように自らの言葉で問い直すことはできないのだろうかと、そんな想いに駆られます。

 「ベトナム戦争は、ウィリアム・フルブライト元上院議員の言葉を借りれば、 〈 力の傲慢〉を、象徴するものだった。同じように、第二次世界大戦後のアメリカは、〈 豊かさの傲慢〉ゆえに数多くの経済的過ちを犯した。」

 「アメリカ国民はアメリカの産業が、国内市場を永遠に独占し続けることができ、外国の企業などは競争相手にならないと信じ込んでいた。」「こうした過ちの多くは、確かにアメリカ固有のものである。」

 悲観的な意見を聞かされても、敬意を覚えるのはなぜだろう。暗い事実を語っていても、氏が卑屈にならないのはなぜかと考えました。そして発見したのは、愛国心でした。愛国心を失わなければ、国の状況が如何様に変化しても、国民は誇りと自信を失わないという発見です。だから、次の言葉が続きます。

 「しかしそれでもなお、世界経済が新たな秩序に移行しつつある現在、アメリカの経験は、諸外国とりわけ日本への教訓となるだろう。」「国際的な競争が激化する時代に、ブルーカラー中心の産業形態を維持し続けるのは困難である。」「貧しいが、向上意欲に燃えている国々が、低賃金で労働力を維持できることを武器に、工業に進出し、基礎的な分野を一手に引き受けることになるからだ。」

 この謙虚さが、私たちには欠けていました。世界第二の経済大国になった時、〈 豊かさの傲慢〉のため、日本は多くの国に敵を作ってしまいました。「東京裁判史観」を信じ、形だけの反省をし、卑屈になりながら、結局は〈 豊かさの傲慢〉に負けてしまいました。

 米国人と、私たち日本人の反省の違いがどこから生まれるのか、決定的な原因は愛国心です。氏は愛国心を失っていないから、厳しい反省をしても、アメリカそのものには希望を抱いています。

 第二次対戦後のに日本の多くは、日本の過去を否定しご先祖を憎み、国そのものへの信頼を捨てました。つまりごく普通の国々が持っている、愛国心を捨てたのです。愛国心のない人間の反省は、その場限りのもので根っ子がありません。

 これまで何度か紹介しましたが、マレーシアのノンチック氏の書いた詩を思い出します。氏は戦時中に日本が受け入れた東南アジア留学生の一人で、戦後マレーシアの上院議員になっています。アセアンの設立に尽力した、リーダーの一人です。この詩は、日本人が失っているものを教えています。謙虚に読みたいものです。
 
 かって 日本人は 清らかで美しかった
 かって 日本人は 親切でこころ豊かだった
 アジアの国の誰にでも
 自分のことのように 一生懸命つくしてくれた
 
 何千万人もの 人の中には 少しは 変な人もいたし
 おこりんぼや わがままな人もいた
 自分の考えを おしつけて いばってばかりいる人だって
 いなかったわけじゃない
 
 でも その頃の日本人は そんな少しの いやなこととや
 不愉快さを超えて おおらかで まじめで
 希望にみちて明るかった
 
 戦後の日本人は 自分たちのことを 悪者だと思い込まされた
 学校でも ジャーナリズムも そうだとしか教えなかったから
 まじめに
 自分たちの父祖や先輩は
 悪いことばかりした残酷無情な
 ひどい人たちだったと 思っているようだ
 
 だから アジアの国に行ったら ひたすら ぺこぺこあやまって
 私たちはそんなことはいたしませんと
 いえばよいと思っている。
 
 そのくせ 経済力がついてきて 技術が向上してくると
 自分の国や自分までが えらいと思うようになってきて
 うわべや 口先では すまなかった 悪かったといいながら
 ひとりよがりの 
 自分本位の えらそうな態度をする
 そんな 今の日本人が 心配だ
 
 ほんとうに どうなっちまったんだろう
 日本人は そんなはずじゃなかったのに
 本当の日本人を知っているわたしたちは
 今は いつも 歯がゆくて 
 悔しい思いがする
 
  自分たちだけで 集まっては 自分たちだけの 楽しみや
 ぜいたくに ふけりながら 自分がお世話になって住んでいる
 自分の会社が仕事をしている その国と国民のことを
 さげすんだ目で見たり バカにしたりする
 
 こんなひとたちと 本当に 仲良くしていけるのだろうか
 
 どうして日本人は
 こんなになってしまったんだ         
 
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