昨年の12月31日から元旦の一日を、ネットの動画で過ごしました。テレビ東京が過去に放映した、「昭和歌謡大全集」です。
司会が玉置宏氏と水前寺清子さんの二人で、特別司会がコロンビアトップ氏で、第一弾から第9弾まであり、一弾が前後編に分かれていますから、全部で18篇の動画です。一編が 1時間20分なので、十分見応えがありました。最初は何気なく見ていましたが、次第に夢中になりました。
息子たちには縁のない歌手ですが、「ねこ庭」のブログを訪問される方々には、懐かしい名前ばかりではないでしょうか。故人となった歌手が多いので、一層懐かしい動画でした。
藤山一郎 市 丸 小唄勝太郎 東海林太郎 高田浩吉 淡谷のり子
霧島昇 渡辺はまこ 灰田勝彦 小畑実 岡晴夫 伊藤久男
過去に戻る楽しさと、喜びを教えてくれる動画でした。日頃は「温故知新」の読書をしていますが、これに劣らない感動がありました。
司会をしている玉置宏氏は、立て板に水の司会ですが、ネットの情報では既に故人でした。水前寺清子さんも瑞々しい女ぶりですが、きっと今老人の仲間なのだと思います。番組タイトルの背景を流れている画面が、「砂川闘争」や「60年安保闘争」ですから、これだけでも時代を感じさせられます。
砂川闘争は、昭和40年の立川基地の拡張に反対する闘争で、60年安保闘争は、昭和34年の騒動で、岸首相が退陣しました。この動画がいつ放映されたのか、番組の中で説明がありませんが、「長谷川町子さんが、国民栄誉賞に内定しました」と、玉置氏が語っていましたので、平成4年の動画だと見当をつけました。
「たかが歌番組、されど歌番組」です。背景を少し調べるだけで、戦前戦後の日本の歴史が浮かび出てきます。今は亡き父と、すっかり老人になった母の顔を思い出しながら、思い出の歌謡曲を聴いていますと、いつしか自分も子供の頃に戻ってしまいました。反日左翼の腐れマスコミと、日頃は散々貶しているテレビ局が、違った顔を見せてくれました。
歌は全て録画で紹介され、招待された歌手たちが、スタジオに置かれたテーブルに三々五々と座り、聴いているだけです。歌手たちは年をとり、往年の輝きと美しさはなく、若かった頃の自分を懐かしみながら見ている、とこういう構成です。
スタジオに大写しになった画面に、歌っている若い日の彼や彼女たちが現れ、「昭和14年のヒット曲、昭和46年12月放映。」、などとテロップが流れます。皆が眺めている動画が平成4年で、それを見ている私が令和元年末から令和2年の元旦ですから、どれほど凝縮された歳月の動画になるのか、これだけでも価値がありそうです。
テロップを見ていて、マスコミはついこの間まで、反日左翼ではなかったという事実に、気づきました。反日左翼なら、決して放映しない歌を、平気でお茶の間に流していました。
出征兵士を送る歌 昭和14年ヒット曲 昭和45年12月放映 林伊佐緒
暁に祈る 昭和15年ヒット曲 昭和44年12月放映 伊藤久男
二つの歌は、文字通り戦争へ行く兵士を送る激励の歌で、軍歌そのものです。また次の歌は戦後の日本を歌ったもので、戦争賛美でなく、否定の歌でもありません。辛く悲しい心を歌った、庶民の歌です。父や母や、叔父や叔母たちが、ラジオで聞き入っていた姿が思い出されました。
九段の母 昭和14年ヒット曲 昭和46年12月放映 塩まさる
かえり船 昭和21年ヒット曲 昭和46年12月放映 田端義夫
星の流れに 昭和22年ヒット曲 昭和49年12月放映 菊池章子
異国の丘 昭和23年ヒット曲 昭和44年12月放映 竹山逸郎
岸壁の母 昭和29年ヒット曲 昭和50年12月放映 菊池章子
東京だよおっかさん 昭和32年ヒット曲 昭和46年12月放映 島倉千代子
歌われているのは、異国の地で故国日本を恋うる人や、九段に祀られた息子や夫を忍ぶ人の心です。無謀な戦争の犠牲になった恨みとか、国に強制されたという憎しみは、歌われていません。こうしてみますと、昭和44年から昭和50年代の前半までのマスコミは、「反日・左翼」ではなかったという事実が、見えてきます。
「戦後74年間、反日左翼の偏見で、マスコミは国民を扇動し続けた」と、私がこれまでブログで述べてきたのは、間違いであったと知りました。「昭和歌謡大全集」は、テレビ東京の番組ですが、この時期には他局でも、似たような歌番組が放映されていることも、分かりました。当時の国民が、戦前戦後の歌を懐かしみ、多くの希望を寄せたため、各局が競って歌の特集を作っていたのです。
反日左翼が前面に出て、過去の日本を否定し憎みだしたのは、最近の話というとこになるのかもしれません。本論に入る前に、スペースがなくなってしまいましたが、歌を聞くに際し、このような面倒な理屈を考えていたのではありません。楽しみつつ、懐かしみつつ、聴いたのに、ブログにしますと、ついこんな調子になってしまいます。
明日は、楽しく懐かしい、本題に入ります。