ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

驕るNHK - 40 ( 吉田総理と吉田教授の意見比較 )

2019-09-08 15:03:31 | 徒然の記
 吉田総理の「著作」の 3回目です。第三章 の憲法に関する叙述を紹介します。
 
 「こうした大きな改革は、大体のところ、多くの国民の支持を得た。」「例えば、新しく発布された憲法は、国民によって支持された。」
 
 「しかし、憲法改正のイニシアティブが、占領軍によって取られたことも、否定し得ない事実である。」「従って、日本人の発意によって作られた憲法と同じように、容易には日本の社会に根づかなかった。」
 
 期待して再読しましたが、ごく普通の文章でした。
 
 「また、憲法改正のような変革を、人々はその好むように受け取った。」
 
 「戦争を放棄した、憲法第9条がそのよい例で、それが自衛のための武装も禁止しているのかどうかについて、初めから、人々の意見は定まらなかった。」
 
 「一般の国民は詳しく考えず、ただ戦前の軍国主義への反動から、第9条を支持したように思われる。」
 
 左翼の人々は、戦争に苦しんだ国民が、諸手を挙げて「憲法」賛成したと説明しますが、氏の捉え方は少し捉え方が違っています。
 
 「法律を変え、政治体制を修正することはやさしいが、それを根づかすのは難しいのである。」
 
 「結局、戦後の改革で日本に根づいたものは、日本側に何らかの基礎があったものであり、それがなく、かつ、日本の実情に沿わなかったものは、独立回復後に変更されたように思われる。」
 
 独立回復後も憲法を変更しなかったところを見ますと、吉田総理は憲法が、日本の実情に合ったものと考えていたのでしょうか。それとも、「日本人の発意によって作られた憲法と同じようには、容易に日本の社会に根づかなかった。」という考えを、終生抱いたままだったのでしょうか。
 
 疑問を解く鍵が、「第四章・奇跡の経済発展 」の中にあるような気がしますので、その部分を紹介します。
 
 「昭和25年の6月、講和条約起草という目的を持って、アチソン国務長官の顧問に任命されたダレス氏が日本を訪れた。」
 
 「この時ダレス氏は日本の安全保障の問題について、日本が軍備を持たない状況を続けることは、国際状況からして到底許されることでないから、講和独立の条件として、日本の再軍備を主張した。」
 
 やはりダレス氏は、日本の再軍備を主張していました。陛下が、独立国には軍が必要であると田島氏に語られ、吉田に会うと言われたのが、丁度この頃です。
 
 しかし田島氏は、陛下のお言葉を抑える厚い壁となりました。
 
 警察予備隊が作られたのは朝鮮戦争の勃発後ですから、ダレス氏が総理と会談したのはこれより少し前の時期です。
 
 「この再軍備要請に対して、私は正面から反対した。」
 
 「当時の日本は、経済自立のための耐乏生活を国民に強いなければならない、困難な時期にあった。」
 
 「そのような時に軍備に巨額のお金を使うことは、日本経済の復興を極めて遅らせたであろう。」
 
 「それは例えて言えば、やせ馬に、重い荷物を負わせるようなものであったに違いない。」「正式な軍を作れば、日本経済がダメになるし、無理をして作れば役に立たない軍しか作れない。」
 
 軍を持ち戦力を維持するためには、どれだけの負担がかかるかを、分かりやすい言葉で説明しています。ダレス氏の要請は二度ありましたが、都度氏は断り、断る理由は常に「経済再建の優先」でした。
 
 ここで、前のブログで取り上げた吉田教授の話に戻ります。
 
 「吉田路線によって、憲法の問題をきちんと議論しないまま、なし崩し的に再軍備が進み、その延長線上に今日があるということを考えると・・・」
 
 総理の言葉を読めばわかる通り、なし崩し的に再軍備を進めたのでなく、国民生活のため経済再建を優先しています。むしろ「きちんと議論をしないまま」にさせた張本人は、田島氏ではなかったのでしょうか。
 
 陛下のご意思を総理に伝えさせなかったウイロビー准将 と芦田首相  、その指令のままに動いた田島氏のラインにこそ、責任があると思えてなりません。
 
 政府内で議論をさせなかったのはこの三人でしたのに、そこを言わず、総理に責任を押しつける吉田教授の意見に、「ねこ庭」は同意しません。
 
 著書の引用で長い横道となりましたが、左傾学者吉田氏の意見の紹介を終わります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驕るNHK - 39 ( 吉田総理が語る「民意」 )

2019-09-08 06:37:59 | 徒然の記
 本日も総理の著作の続きで、紹介しているのは第三章 の部分です。
 
   第一章 明治の創業  ・・・ 冒険と成功
 
   第二章 近代化のジレンマ
 
   第三章 戦後の二、三年  ・・・ 困難と努力
 
   第四章 奇跡の経済発展  ・・・ 勤勉と幸運
 
   第五章 奇跡の後で
 
 「アメリカで組織され、準備を進めてきた人々」と、総理が言っているのは、ウイロビー准将の率いる「民政局」メンバーのことです。准将に嫌われた政治家ですから、苦労したはずなのにそういうことは書いていません。
 
 「彼らの中で、ニュー・ディーラーはその典型であり、計画や理念を重んじ、その実行に努力を集中して、それが日本の実情に合致して良い結果をあげうるかどうかは、あまり意に介しないようであった。」
 
 「のみならず、政府側の担当者が、いろいろ進言忠告を試みることは、たとえ、計画の推進を有利にしようとするものでも、時には、しばしば占領行政に対する抵抗と受け取られ、時には妨害と解された時もあった。」
 
 保守系学者の著作を読みますと、GHQは大抵悪辣な組織として語られ、敗戦国の日本を権柄ずくで扱ったと、そう言うトーンで終始します。しかし総理の言葉には違った響きがあり、違った重みがあります。
 
 「どうもアメリカ人は、理想に走り、相手方の感情を、軽視しがちである。」
 
 「机上で理想的なプランを立て、それが良いと決まると、しゃにむにこれ、押し付ける。拒んだり、喜ばなかったりすると、怒る。」
 
 「善意ではあるが、相手の気持ちとか歴史、伝統などというものを、とかく無視してしまう。この熱心な改革者との交渉は、日本人にとって、ユニークな交渉であった。」
 
 抑制された文章なので、そのまま読んでしまいますが、この裏には、総理や政府関係者の苦労が隠されています。息子たちには無理でしょうが、私たちの年代の人間なら、心の痛む叙述ではないでしょうか。
 
 「もっとも、すべてのアメリカ人が、このような人々だけではなかったのであり、マッカーサー元帥と一緒に戦ってきた軍人たちは、ともかく占領を成功させることを考えていたようで、一部の改革者たちの行き過ぎを多少制約する働きをした。」
 
 ウイロビー准将の「民政局」と対立していたのは、ホイットニー少将の「情報局」でした。
 
 反共主義者の少将は吉田氏を支持していましたが、吉田総理は人物名に触れず、客観的な叙述にとどめています。何度も比較したくありませんが、こっそりメモを書き公表した人物とは、品格が違うようです。
 
 短気なワンマンとして語られる総理でしたが、著作を読みますと、見識のある指導者だったことが分かります。生真面目に現実的思考をされる陛下と、基本的に楽天思考の総理は、敗戦後の日本には最適の指導者だったのでないかと思えます。
 
 「結果的には、アメリカの占領政策はかなりの成功を収めた。理想主義的な改革は、戦後の混乱と絶望の状態にあった日本人に、将来への希望を与えた。」
 
 「少なくともそれは、日本人の生活を単なるその日暮らしには、終わらせなかった。おそらく日本人は、アメリカ人の楽天主義に共通するものを持っているのかもしれない。」
 
 「しかし、何よりも大切なことは、日本人がアメリカの理想主義的な改革を、消化するだけの、能力を持っていたからであろう。」
 
 権謀術策の政界に生き、GHQを相手に交渉をしても、文章には攻撃や批判がありません。一時の感情に左右されず、事実を冷静に見る目を失わない総理に、敬意を表したくなります。
 
 「また、議会政治の経験があったことは、選挙制度導入時にありがちな混乱と弊害を少なくさせた。大きな改革にも関わらず、それは政治に継続性を与えることになった。」
 
 「選挙をする国民が、大正時代からある政党の議員に多くの票を投じたからである。」
 
 「それは、ニューディーラーたちをはじめとして、根本的な改革を望んでいた人々を失望させることであったかもしれない。」
 
 「確かにこのことは、改革を抑制する方向に作用した。しかしだからこそ、日本社会の混乱が少なかったのである。」
 
 この部分は、息子たちのため少し説明が入ります。最初の選挙で、ニューディーラーたちは、共産党や社会党の議員が大量当選すると期待していたのに、国民が多数票を投じたのは、以前からある保守党だったという話です。
 
 「今から振り返ってみると、もっと改革がなされるべきであったという気持ちは、全く湧かない。逆にあれだけの改革が、大した混乱もなしに、よくもできたものだと、しみじみ感ずる。」
 
 総理が語っているのは、「民意の大きさ」だと思います。GHQとマスコミが鳴り物入りで推奨しても、国民は左翼政党を選択しませんでした。民意が、一方的な宣伝や、力ずくで作られるものでないことを教える叙述ではないでしょうか。
 
 「だからこそ、日本社会の混乱が少なかったのである。」
 
 総理の言葉を噛み締めながら、憲法と再軍備に関する話を次回に紹介します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする