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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

ヴォーゲル氏著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』 -9 ( 米国の代理人だった小泉、竹中両氏 )

2019-09-23 14:37:41 | 徒然の記
 今日で終わりと決めましたが、うまくまとめられるか心配です。広範な研究書なので、割愛の決断が難しいためです。思い切って、222ページから始めます。
 
  ・日本の大企業は、定年退職の年齢を55才から60才の間に定めているが、大抵の人は退職後再就職が必要であり、会社としても、退職後の世話をするのが普通である。
 
  ・会社が従業員に与える、こうした特典の他に会社の持っている山の家、海の家やクラブ、といった施設を利用できるようにすることは、金銭には換算しにくいものである。 
 
  ・こうした社員のための恩典は、東京の米国大使館に勤務している労働問題の専門家、ロバート・イトーマンが指摘するように、日本企業が費やす企業内福利厚生費の総額は、アメリカのそれよりはるかに多いことは明白である。
 
 この指摘の重要性については後から述べるとして、最終章にある、氏の言葉を転記いたします。
 
  ・アメリカ人が現在、日本からの挑戦、更に今後は韓国その他のアジアの国々からの挑戦に、うまく対応できるかは明らかではない。
 
  ・日本が成功したように、アメリカが良い社会を築くため、あと知恵でなく先見の明を持ち、場当たり的対応でなく事前に計画を立て、事態に対処できるようにという願いを込めてこの本は書かれたのである。
 
 アメリカの政治家、企業人、特にウォール街に君臨する金融資本家たちは、本気でこの本を読んだと考えます。
 
 本が出版されたのは、昭和54年の大平内閣の時ですが、その後のアメリカが、いかに計画的に日本潰しを行ったかは、歴史が証明しています。日米の「貿易戦争」は、昭和44年の田中内閣の時から始まり、その幕開けが有名な「日米繊維摩擦」でした。
 
 その後、鉄鋼、カラーテレビ、自動車、半導体の分野で摩擦が高まり、1980 ( 昭和55 ) 年代になると、農産物,コンピュータの貿易品目のみならず、建設,通信,金融,弁護士などサービス分野において、日本の市場開放に関する米国の要求が、強まってきました。
 
 1988 ( 昭和63 )年の竹下内閣の時、アメリカ議会はより強力な手法をとり、日本を、一方的に「不公正貿易国」と認定し、「スーパー 301条」を成立させました。
 
 その翌年には、日米の貿易不均衡を是正するため、貯蓄・投資バランス,流通,企業形態など、「日本の構造問題」を解消することが重要だと主張し、「日米構造協議」が開始されました。現在、日本のマスコミや評論家たちが、「米中貿易戦争」について騒いでいますが、50年前の日本が同じことをやられていた事実を、忘れないことが大事でしょう。
 
 1985 ( 昭和60 )年、中曽根内閣の時、先進5カ国蔵相会議で、第二の敗戦と言われる「プラザ合意」を、受け入れました。米英仏独が安すぎる円に文句をつけ、共同で円高を迫ったという会議です。
 
  ・円が安すぎるため、日本製品が世界に出回り、結果として欧米諸国の製品が売れない。
 
  ・円安のせいで自国産業が弱体化し、経済に悪影響を及ぼしている。
 
  と彼らは主張しました。
 
 「プラザ合意」により、円高が一気に進行し、1ドル235円だった為替レートが、わずか一年で1ドル150円前後になりました。急激な円高を招いた「プラザ合意」は、「第2の敗戦」と言われるほど、日本経済に大きな影を落とす失政でした。しかしこの時中曽根総理は、レーガン大統領と笑顔で対談し、「ロン・ヤスの仲」と、日米関係の良好さをアピールしました。
 
 一方で優秀な官僚たちは、急激な円高に危機を感じ、それを食い止めようと、大幅な金融緩和を実施しました。通貨発行量が増大し、投資先のない資金が不動産へ向かい、バブル景気を招くことにつながりました。
 
 そして間も無くバブルが崩壊し、日本経済の「失われた10年」「20年」、さらに「30年」が続いています。
 
 この中で、平成8年の橋本政権が打ち出した「行財政改革」は、まさにアメリカが求めていた「構造改革」でした。
 
 日本の省庁を1府22省庁から、1府12省庁に再編し、独立行政法人の設置を進め、「聖域」だった郵政事業も手をつけを始めました。橋本氏を評価する意見もありますが、ヴォーゲル氏が賞賛していた「官僚組織」を分断し弱体化させたのですから、大きな失政でした。
 
 一連の動きは、すべてアメリカによって要求されたものです。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』での警告通りに、アメリカが日本潰しを実行したのです。
 
 「郵貯改革」をした小泉改革が、その総仕上げでした。
 
 ポピュリスト政治家の典型だった氏は、竹中平蔵氏を重用し、国民を守ってきた「終身雇用制度」を破壊しました。竹中氏は「正社員」を蛇蝎のごとく嫌悪し、企業の持つ社員用の保養所など、福利厚生施設の全てを、株主のために無用の長物として廃止・売却させました。
 
 現在の若者の貧困化をもたらしたのは、米国の代理人だった竹中氏と、彼を重用した小泉氏です。竹中氏に至っては、正社員の後を埋める「人材派遣会社」の役員に収まっているのですから、「悪徳政商」と呼ばれて当然です。
 
 ヴォーゲル氏は、日本がこうした状況になることを願って著書を出版し、アメリカの指導層を動かし、日本を弱体化させることに成功しました。
 
 本日で書評を終わりますが、氏の著作を明日の日本を考える材料にし、他国から、これ以上日本の伝統や文化が破壊されないようにすべきと、私は警鐘を鳴らします。
 
 日本を守るには、昭和天皇が願われたように、国を守る「軍の再建」と「憲法改正」が最低の条件です。息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々にも、提案します。今後は、日本の政治に口出しする国内の外国勢力を、掃除しなければなりません。
 
 日本正常化の一歩がここから始まると信じ、何度でも繰り返します。
 
  1.  国会議員の二重国籍禁止法の制定
    該当する議員には、帰化を促し、これを拒む議員は、国外退去とする。
 
  2. NHK役員の二重国籍禁止法の制定
    該当する役員には、帰化を促し、これを拒む役員は、免職とする。
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ヴォーゲル氏著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』 - 8 ( 官僚組織の日米比較 )

2019-09-23 07:38:46 | 徒然の記
    「政・官・財の癒着」という言葉が、ひところずいぶん流行りました。
 
 国民を忘れ、政治家と官僚と財界人が密室で会合し、私利私欲を肥やすと、そんな意味で使われていました。
 
 しかしヴォーゲル氏は、私たちとは違った視点でこの問題を取り上げています。日本経済を大きく成長させた通産省について、かなりのページを費やしています。40年前の話ですから今とは違いますが、著名な米国人学者の意見として参考になります。
 
  ・経済成長に関して、最大のイニシアチィブを発揮するのは、通産省である。通産省は、極めて熱心に産業界の面倒を見るので「教育ママ」という、異名があるほどである。
 
 「産業界の教育ママ」という意味なのでしょうが、初めて聞きます。アメリカでは、日本の経済成長の中心となったのは官庁だ、という視点で見ていたことを教えられます。
 
  ・産業構造の再編成のため大胆な構想を打ち出し、将来の日本が国際競争力を発揮しそうな分野に、資本を集中させていこうとしているのも通産省である。
 
 経済企画庁や運輸省、大蔵省など、多くの省庁がありますが、氏の説明によりますと、当時の第一人者は通産省です。ひ弱な日本企業のため、国際市場という名の戦場で先頭に立ち、戦ったのが通産省の官僚たちということになります。
 
  ・1960 ( 昭和35 ) 年代後半に、賃金が西欧の水準に追いついた時、通産省は労働集約型産業よりも、資本集約型産業に資本を集中しようとした。
 
  ・1973 ( 昭和48 ) 年のオイルショック以降は、エネルギー消費型産業よりも、「サービス産業」および、「情報・知識産業」に、重点を置く政策を推進しようとしている。」
 
  ・通産省の狙いは、企業間の競争を弱めることにあるのでなく、潜在的に強い競争力を秘めた企業を作り出すことである。
 
  ・通産省が、優れた行政効果を上げられるのは、法的権限を駆使するからではない。その行政能力もさることながら民間企業が、通産省を良き指導者として認め、協力するからである。
 
  ・アメリカの企業は、役人に情報を与えるのを渋るところがあるし、役人の方は、企業を助けるよりむしろ規制しようとする態度で、臨みがちである。
 
  ・それに反して日本の官僚は、国内企業の状態について、アメリカの官僚より、はるかに詳しい情報を得ているし、場合によってはアメリカの企業についても、より詳しい情報を持っていたりするのだ。
 
 米国との比較で説明されると、根拠もなく通産省を評価しているのでないことが、分かります。通産省に、民間企業が自主的に協力する理由として、氏は5つの事実をあげています。
 
   1.  通産省が、各分野の企業の発展を真剣に考慮していることを、企業側がよく知っていること。
 
   2.  通産省の提供する資料と分析が、優れていること。
 
   3.  通産省の役人と、企業幹部の交流がさまざまなレベルで、公式・非公式に行われていること。 ( 料亭の奥座敷で、開かれる歓談も含まれる )
 
   4.  通産省が企業の要請を聞く場合、日頃の協力的な企業を優先することを企業側が知っていること。
 
      5.  通産省が、常に業界全体の意思を反映しつつ行動すること。
 
 特に3.については、氏が興味深い説明をしています。
 
  ・企業と役人が親しくなり、接待をしばしば受けると、アメリカでは非難の的となるが、日本では、役人が接待を受けたからといって、直ちに両者が馴れ合いの関係にあるということには、ならない。
 
  ・同業他社も、役人を接待しているし、役人の最終的な決定は、接待の仕方や、個人の心証などに左右されないからである。決定を下すのは、個人でなく、その産業界を担当しているグループなので、個人的な、好悪の感情の入り込む余地は、ほとんどない。
 
 褒め過ぎでないかと首を傾げたくなりますが、ブログの最初で述べたように、氏の意見は日本礼賛でなく、祖国アメリカへの警鐘です。こんな日本は油断ならないぞと、米国政府と企業に警告を発しています。
 
 次の叙述は、さらに重要な指摘だと思います。
 
  ・通産省と産業界のあり方は、そのまま他の省と、民間部門との関係に当てはまる。他の省、すなわち大蔵省、建設省、運輸省、郵政省、農林水産省などは、どれも、それぞれに関係のある業界の発展に全面的な責任を負う。
 
  ・大蔵省と銀行、保険会社との関係は、通産省と製造業界との関係に酷似している。
 
 こうして氏は、各省庁と民間企業の関係と、日本の官僚組織の優位性を米国との比較で詳細に説明します。大企業における社員の一体感、日本の教育、福祉、防犯と、広範な研究の結果が、綴られていきます。
 
 しかして今、氏の賞賛する日本の特質はどうなったのか、
 
 次回はこの点について考え、著書の紹介を終わりたいと思います。
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