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ねこ庭の独り言

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高橋正衛氏著『昭和の軍閥』 -2 ( 成績重視の官僚世界 )

2019-04-16 21:01:24 | 徒然の記
 高橋氏は、軍閥と呼ばれた戦前の軍について、丁寧に説明しています。2ページから始まる、「軍隊を考える基本的事項」は、知らないことばかりでした。
 
 「5・15事件」や、「2・26事件」を理解するためにも、欠かせない知識です。諸外国の軍でも同じなのか、日本に特有の組織風土なのか知りませんが役に立ちました。
 
  ・期とは、陸軍幼年学校、陸軍士官学校の、卒業年次をいう。海軍兵学校も、同じである。
 
  ・幼年学校、陸軍士官学校が、陸軍の正統的な将校を養成し教育する学校である。
 
  ・陸軍士官学校、海軍兵学校の上級学校として、陸軍大学校、海軍大学校がある。 
  ・幼年学校、陸士をおなじ年に卒業した者が、互いに同期生という。
 
 陸軍士官学校には予科と本科があり、予科だけで終わった者と本科へ進んだ者は、処遇が違っています。
 
 〈 士官学校の予科卒業者  〉
 
  ・兵科と、配属される連隊が決定する。兵科とは、歩兵、砲兵、騎兵などを言い、配属された連隊を「原隊」という。
 
 〈 士官学校の本科卒業者 〉
 
  ・所属する原隊から、陸軍士官学校へ派遣された士官候補生、という身分になる。
 
 高橋氏の説明を紹介します。
 
  ・陸軍士官学校を卒業すると、見習士官となり、少尉に任官し、将校となる。」「同時に、原隊の将校団の一員となる。
 
  ・同期とは、14才頃の幼年学校から、陸士卒業の22、3才までの、少年期から大人になる人生の多感な時期を、共に過ごした仲間である。
 
  ・全員が、学校内の寄宿舎に寝起きし、起床から就寝まで、おなじ構内で、おなじ食事をし、授業を受け、おなじ時間の自習をする。」「おなじ教官に訓育、教育されて、大人になり、将校になる。
 
  ・各人が個人的に、異なる行動がとれるのは、わずかに日曜日に外出を許される半日である。」「同期生とは、文字通り、おなじ釜のメシを食った仲間となる。
 
  ・私の同期、俺の同期と、50才、60才になった旧軍人の言葉には、独特の響きがある。」「親兄弟よりも心の通った心情を、お互いに抱き得るのである。
 
 なるほどと思いながら読みますと、ここから氏の問題提起が始まります。
 
  ・軍閥の形成という面から見ると、じつはここに、問題の一つが存する。通常の学校ならば、昭和⚪︎⚪︎年度卒業生名簿というべきものが作られるが、陸士ではこれが表面に出ず、「陸軍将校実役定年名簿」と名付けられる一冊の名簿に、全将校が位置付けられるのである。
 
  ・元帥、大将という最高位の軍人から少尉まで、軍人の全将校中に占める席次 (  軍では序列という。)は、常に定まっているのである。この序列は、陸軍士官学校を卒業した時は、成績順に、名簿の末端に名前を連ねる。
 
 ここから、少し込み入った説明になります。
 
   ・軍隊の将校を送り出す、正当な養成機関は、陸軍士官学校ただ一つである。
 卒業生は、全員陸軍の将校になる。世間並みに言い換えると、陸軍では陸士という学校の卒業生が、全員陸軍に集団就職しているとも例えられよう。だから将校は、一冊の定年名簿に収められているのである。
 
  ・年数が経つと、この最初の序列に変化が起こる。ある期の軍人が、同期や先輩を越えて、序列が上になることがいくらでもある。
 
  ・同時にこの名簿から、予備役編入 ( 退職 ) の順番も、自ずと定まってくるのである。将校になるときは同時同期でも、20年25年経つと、一人は大佐で連隊長、他は中佐で連隊付きということが、いくらでも起こるのである。
 
  ・陸軍大将という、ピラミッドの頂点を目指して、同期生が同時に進撃するわけである。」「大将の数は決まっているから、誰かが必ず中途で退職させられる。
 
  ・この進級、昇進の、唯一絶対の基準は、陸軍士官学校の成績なのである。なぜなら成績は、あらゆる条件が同一の生活の結果から、出て来た順位なのである。
 
  ・親の威光も、財力も、まったく及ばないところで出て来た順位である。これには、全員従うしかない。成績が、軍人の一生を左右する基準となっても、誰も文句を言うなという建前である。
 
  ・同期とは、もっとも激しい競争相手であるとともに、もっとも親しい人生の仲間であるという、矛盾した正反対の性向を、根本に内蔵しているのである。
 
 軍が消滅した戦後の日本で、軍と同じ運営をしているのが官僚組織です。
 
 各省のトップである次官は、いわば大将の地位に匹敵し、同期入省の官僚は軍人と同様、親の威光や財力と関係なく、本人の実力で地位が決まります。
 
 つまり成績です。東大の法学部を何番の成績で卒業し、国家公務員試験を何番で合格したかで、一生が決まります。
 
 政治家は多くの場合、本人の実力より親の威光や財力が物を言いますが、官僚の世界は本人の実力( 能力 )です。判定には、いろいろな意見や方法がありますが、なんといっても成績を基準にすれば、不平不満がもっとも生まれにくく、本人たちも納得します。
 
 人生を実力で切り開き、切磋琢磨し勉強している官僚に、歴史観も信念もない政治家は、太刀打ちできません。沖縄の基地問題を白紙に戻し、米国の信頼を失わせた鳩山元総理が、「勉強すればするほど、沖縄の基地の重要性がわかった。」と、歴史に残るバカ発言をしましたが、官僚たちは内心で軽蔑していたに違いありません。
 
 軍のない日本で最強官僚組織は財務省で、ここに最優秀の人材が集まり、政治家とは無関係に、日本の政治を動かしています。もしかすると、軍の復活をもっとも恐れ、警戒しているのは、官僚たちなのかもしれません。
 
 戦後、政治家は彼らの手の中で動かされ、日本の復興がなされました。優秀でやる気のある官僚は、自ら政界へ転身し、首相になっています。ネットで調べると分ります。こんなにも、多くの官僚が首相をしていたのかと、驚かれるはずです。
 
 愚かな国民が、バカな政治家を選んでくれれば、官僚は思うままの政治がやれます。財務省を超える最強の官僚組織である軍の復活を、彼らが歓迎するはずがありません。マスコミに忖度させ、愚かな反日左翼勢力をそれとなく支援し、「安部が、安部が」と、騒がせてているのは彼らではないかと、そんな邪推も生じてきます。
 
 明日も氏の言葉を頼りに、紹介を続けます。
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