さてこの展覧会をどう評価すべきか。
ベニヤ板で囲まれた「通路」を歩く。
すると壁沿いにはこの芸術家のこれまでの業績を示す写真が並んでいる。
ベニヤ板をふいと抜けると広い場所があり、人が作業していたりする。
どうやらこの芸術家の現在進行形のプロジェクトがそこにはあるようだ。
ネットでもいろいろ物議をかもしている東京都現代美術館「川俣正ー通路」の展覧会だ。
2005年の横浜トリエンナーレの総合ディレクターを務めた川俣は相当の実力者らしい。
しかしベニヤ板で囲って周囲を見渡せなくしたのがよろしくない、僕にはこの人何者?という印象しか受けない。
現在進行中のプロジェクトはたとえば「サヴァイヴァルイン東京・ラボ」とか「wah・ラボ」とか「セルフポートレイト・ラボ」とかがある。
「サヴァイヴァルイン東京」というのは悪趣味極まりない。
いきなり「路上生活者の情報求む」と書かれている。
そして都内あちこちでの路上生活者マップと路上生活者インタヴューが貼ってある。
人は誰でも好き好んで路上生活をしているわけではない、それを美術館に飾る神経が理解できない。
「wah・ラボ」とは二月にアイデアを募集して川俣さんやスタッフ、来場者が決めた実現したいアイデアのようだ、それは「地面の中に家がある」というアイデア、僕には実現不可能に思えるがこの人たちは本気なのだろうかー。
「セルフポートレート・ラボ」とは精神を病んだ人たちに自画像を描いてもらい、それをマッピングすることのようだ。
展覧会チラシの「医療は通路である」とはこれをさすのであろう。
そのほか「通路カフェ」なるものがあり、コーヒーを販売していたり、外国語のビデオが上映されていたり、全体として何を主張したいのか全く分からない。
常設展示の岡本太郎「明日の神話」をまた見る。
そこでは知的障害者の人々が巨大な絵をスケッチしていた。
悪趣味な「通路」などとは違ってこちらの活動のほうがよほど純粋に思えた。