だらだら日記goo編

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「余白」との格闘

2008-03-04 21:51:58 | インポート

描かれているのは鳥ばかり、あとは余白、単純といったら単純極まりない作品ばかりだ。

しかしこの画家が鳥を自宅で1600羽も飼っており、画家自身「鳥は私の化身です」といっていることと、「余白の表現」に長い間苦しんだということで鳥と余白、それがこの画家の人生を象徴している。

上村淳之、偉大なる上村松園を祖母に持ち、父はこれまた有名な上村松篁、画家の道に進むのが当然とも思われるが実は建築家を目指して上京したのだという、しかし絵のない生活に耐えられずにやはり画家になることにしたのだそうだ。

その回顧展が日本橋三越で始まったので観にゆく。フランスで行われた展覧会の帰国展だ。

余白の表現に苦しんでいた淳之、言い換えれば「余白の中にリアリティある空間を描き上げることができず、単なる空虚な空間にすぎないのではないかとの疑念を常に抱いていた」画家はある時朝もやの中に水の張られた一枚の田が美しく光り、そこに三羽の鳥がたたずんでいた、水と鳥と大気が一つに溶け合い何と美しい空間かと思い一気に描き上げたという。

それが作品「晨」、1974である。

画家はその時余白の表現はこれでいいのではと思ったという。

あと忘れてはいけないのが白鷹だ。

父親が晩年描きたいと言い続け、狩野派の絵に登場するから絶対にいるはずだといっても、純粋な白鷹は見つからない、それでロシアから輸入したのだという。

しかし父親は結局白鷹を描くことなく亡くなってしまった、画家にとって白鷹を描くことはおそらく父親へのオマージュとなったのだろう。

出品作品は少ないが一つ一つ観ていくとなかなか興味深い。

このあと福岡と名古屋の三越に巡回します。