「月刊ギャラリー」は毎月一日が発売日だが今日本屋に並んでいなかった、どうしたのだろう?
この雑誌というか本で僕が面白いのは読者モニターによる展覧会ベストワーストのランク付けだ。
先月号では渋谷の松濤美術館の「上海」がワースト一位になっていた、どうやら頻繁な展示変えが悪評の原因のようだ。
しかし入館料三百円で文句言うのもどうかと思う。
それなら同じ三百円で今開催の八王子市夢美術館の「城所祥」展はどんな評価を得るだろうか。
松濤の展覧会は一つ一つ解説がキチンとついていた、八王子のは一切なし、ただ版画がずらっと並ぶー。
独学で版画をマスターした人のようで、大学も父親の家業を継ぐつもりで早稲田の商学部へ行ったという。
しかし版画の作風はころころと変わる。
はじめは抽象だ、「Horizon,Vermilion」とかいかにも抽象らしい。
それが数多くの国際公募展に応募するようになると具象も加わってくる。
そして「確かなものに触れる必要」を感じて具象へと回帰する。
画家が手掛かりにしたのがリンゴだ、リンゴの絵が数多く描かれる。
そしてそれまで重要視していなかったモチーフの背景を考慮に入れるようになり写実へと移る。
作風がこうも変遷するのは特定の師匠を持たなかったからではと会場にあったが、まあこの画家の苦悩はうかがえる展示だ。
以上は板目木版画だが、この版画家は木口木版画もやり、詩人三好豊一郎と木口木版画詩集「黙示」をあらわしたり、山の文芸誌「アルプ」に作品を提供するなど知る人ぞ知る版画家だったのだろう。
しかし城所が亡くなり二十年たってやっと地元八王子で初の大規模回顧展が開かれるとチラシにあるようにどうにも地味な印象はつきまとう。
本日は展示解説ボランティアがいますのでお気軽に声をおかけくださいなどとあったが、いかにもこちらに寄ってきて静かな鑑賞を妨げそうなボランティアは僕にとって迷惑な存在。
やはり同じ三百円なら僕は松濤のほうがいい。
「月刊ギャラリー」はいつ発売するのだろう?