だらだら日記goo編

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絵を通して人生観を語る

2006-09-26 22:18:09 | アート・文化

これは単なる名画展を超えたすばらしい展覧会だ。

藝大美術館の「NHK日曜美術館30年」を記念した展覧会、有料なら行く気持ちもなかったが、またインターネットミュージアムさんから招待券が届いたのでどんなものかいってみる、すばらしい、文化人や他の芸術家の眼を通して絵画が語られているのだ。

たとえば遠藤周作はルオーを取り上げる、ルオーの絵に見られるイエスは「みんなと一緒に肩を並べて道を歩いてくれる同伴者」イエスだ。

青の時代のピカソを語るのは五木寛之だ、五木は旧約の「蒼ざめた馬」を引用して「ピカソの青の時代の青も、悲しみだけでなく何か人間に対する信頼のようなものを背後に持っているような気がします」と語る。

夭折の画家関根正二を取り上げたのは今東光だ。

「関根のバーミリオン」という言葉があるそうだ、朱を使った関根の作品だ。

バーミリオンは高い、だから「信仰の悲しみ」の女性五人のうち朱の色は一人だけだ、あとはお金がないから朱は使えなかったのだという。

ルドンを取り上げるのは武満だ、「ルドンは絶えず母性というものに憧れ母性を求めていたんじゃないかと思います」と語る。

こういう解釈がどこまであっているかはどうでもいいことだ、大切なのは絵を眺めながら文化人の人生観がそこに浮き彫りになっていることだ、これが大切だ。

池田満寿夫は棟方の版画の中に「あらゆるものの中に神が宿っている、人間が宿っている」と評し、熊谷守一を取り上げた画家は「九十歳になってこの形に到達したということは大変なことだ」と評する、「シンプルなものほど難しい、いらないものをどんどん取り除いていった姿だから」と説得力ある説明をする。

さらに展示はアトリエ訪問で、岡本太郎だの三岸節子だのへとおよび、さらに「知られざる作家へのまなざし」と題して、奄美大島の田村一村や、三鷹で回顧展が開かれた高島野十郎やら小泉清へと及ぶ、この小泉清というのははじめて聞くが、小泉八雲の子供で三歳で父を失い西洋的追及と東洋的解脱のはざまに苦労した画家らしい。

会場にはテレビのダイジェストも六箇所放送してあってテレビ放送の部分はきちんとカタログに文字として収録されてある。

今年一番の展覧会かもしれない、これから全国巡回乞うご期待。