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「孤高の画家」また一人

2006-09-10 22:18:08 | アート・文化

展示カタログにいうごとく「近代絵画史における漫画、新南画、水墨画に対する検証は十分になされているとはいいがたい」

確かに岡本太郎の父、一平、そして横山大観と同級生というわりにはこの画家は知られていない。

しかし近代美術館所蔵の「鵜飼六題」など水墨のにじみやぼかしをたっぷり使い、大観の「生々流転」に匹敵する作品と思う。

洋画から漫画へ、そして日本画へ、さらに水墨画へと転じた近藤浩一郎、その全貌を見渡す展覧会を練馬区立美術館へと観に行く。

卒業制作の「五十三駅」からして僕らは非凡なものを見出す。

卒業制作といえばアトリエで書くのが普通だがこの人はキャンバスを戸外に持って卒業制作とした、その絵は明らかに西洋印象派の影響が見て取れる。

「旅」がこの人の作画の糧となったようだが若いときから旅好きだったらしい。

その後読売新聞社へ入って漫画を描き、川端龍子などの日本画研究「珊瑚会」に所属した、今回はその珊瑚会のメンバーの作品も多数展示されるのがうれしい。

その後ヨーロッパに渡ったが特にめぼしいものは見出せず、ついでに寄った中国の水墨画に徹底した影響を受けた人だ。

後にまた渡欧したときはアンドレマルローと親交を結び、パリで個展を開いたという、知っている人には知っているのだろうが、僕はぜんぜん知らなかった画家だ。

で、水墨では穏やかな自然をたっぷりと表現する、カタログ表紙になっている田植えの風景とか闇夜に浮かぶ白梅とか葡萄とかー。

そこには強烈な主張はないが悠然とした構えがある。

もともと山梨に生まれた人で、当然のごとく富士山を描く。

その悠然とした表現は観るものを圧倒する。

展覧会はいろいろな角度から近藤の業績に迫ろうとする、練馬の常としてすいているのでこちらもたっぷりと鑑賞できる。

「孤高の画家」と呼ばれる人をもう何人鑑賞してきたことかー僕の内面がそういう画家とマッチするのかもしれない。

この展覧会は練馬のあと山梨県立美術館に巡回します。