田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

TAR ター(Tar)

2023年05月18日 15時28分01秒 | 日記

TÁR (2022) - Posters — The Movie Database (TMDB)

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 「イン・ザ・ベッドルーム」「リトル・チルドレン」のトッド・フィールド監督が16年ぶりに手がけた長編作品で、ケイト・ブランシェットを主演に、天才的な才能を持った女性指揮者の苦悩を描いたドラマ。

ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター。天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。

「アビエイター」「ブルージャスミン」でアカデミー賞を2度受賞しているケイト・ブランシェットが主人公リディア・ターを熱演。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ブランシェットが「アイム・ノット・ゼア」に続き自身2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、ブランシェットにとってはゴールデングローブ賞通算4度目の受賞となった第95回アカデミー賞では作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門でノミネート。(映画.comより)

 

 

<2023年5月14日 劇場鑑賞>

 なかなかに長い作品。心して臨んでみると、最初は、才能があり成功している女性指揮者の、セオリーと知性を徹底的にお披露目する場面が続きます。かなり理屈っぽく、私なんかは頭をフル回転して見ないと理解できないシロモノでした。しかしながら、個人的な意見を言うと、彼女の理論は正論で、しかもいろんな価値観を認める度量もあったように思います。レズビアンであることを公開していて、ひいきの団員もいたようですが、それはそれ。どこの世界でもあることです。史上初のことを成し遂げるためのプレッシャーはあったでしょうけれど、それは誰でも同じはず。彼女のエゴが強すぎて他の人格を傷つけたという話らしいのですが、私は、経営者など人の上に立つ人であれば、これくらいのエゴは普通じゃないかと思います。少なくとも私の周りでは、もっと規模の小さな成功者(?)でも、もっと我(が)が立っています。むしろ、ここまで成功している彼女の方が謙虚だったのではないかと思いました。教えを乞う、あるいは雇われるということは、それに上手に順応してゆくしかないということなのではないでしょうか。

 過去に指導していた若い女性が自殺したとの知らせが入り、観客は「そんなお弟子さんいたかなぁ」と戸惑うのですが、どうやらその部分はほとんど描写がなかったようで、私たち観客は、ターと助手とのやり取りから”目をかけていて、メールのやりとりもしていた””でも、厳しく指導したので、彼女は耐えることができなかった”と想像するしかありません。もちろん、ターもショックを受けますし、助手もとても悲しみます。しかし、ターは忙しい。作曲もはかどらない。いままで成功街道をまっしぐらに進んできたため、どうしていいかわからず、助手にメールを削除するよう命じて、今まで通りに生活してしまいます。そんなこんなで、うまくフォローできないうちに、被害者側からの情報がSNSで拡散し、理性的に過ごしていたターの人生が狂い始めます。刺客も放たれます(多分。確信はないけど)。

 男子学生を指導する場面が挿入されます。その学生は、「バッハは、その人となりが気に入らないから、音楽も聴かない」と言います。ターは「音楽と人格に関係が?指揮者なんだから、バッハも聴きなさい」と言います。私は至極正論だと思ったのですが、その後強い態度で彼を諭したこともあり、彼は教室を出て行ってしまいます。すると、後にその動画が悪意のある切り取られ方・合成により、拡散されるという事態を招きます。少し話題になると、すぐにこういいうことが起きる現代って、なんなのでしょうか。病んでますね。彼女はどんどん追い詰められていきます。

 追い詰められすぎた女性が錯乱する・・・それは結果論であって、それだけ彼女が繊細だったということです。確かに彼女は強かった。でも、知性と強さ、それは成功には必須の条件であって、それについてゆけなかった人だって、いて当たり前です。自分ができないからと言って、いちいち死ぬ必要はないし、若い人が亡くなることは悲しいけれど、それを師匠のせいにするなんて、SNSを用いてなんでも自分が被害者だと主張する現代の悪癖ですね。

 映画全般、強すぎたターの自業自得ということになっているようですが、私はむしろ彼女は被害者だと感じました。

 あ、そうそう。随分前に見た「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」のジャクリーヌの名前が出たので、映画を思い出しました。レイチェル・グリフィスとエミリー・ワトソンだったなぁって。懐かしい。

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