知人の女性と奥さんを車に乗せて用事を済ませての帰り道のことである。時計を見ると11時45分であった。駅近くのファミレスでランチをとって帰ることにした。平日の昼前といっても席の半分くらいは女性客で埋まっている。外の景色が見えるいい席が空いていたので、周囲に座っている先客の顔を見ることもなく、一直線で席に向かった。
注文を終えて雑談をしているとき、突然「茅野クン」、「茅野クン」と二部合唱のように私の名前を呼ぶ声がした。声の方を見ると、見覚えのある2人の女性が笑顔で私に挨拶をしてくれている。
1人は小中高と同じ学校のよく知っている同級生、もう1人は高校だけの同級生であったが、いずれも1年半ぶりの顔である。「おお、どうしたの?」と聞くと「高校の同級生仲間でランチをしにきたところなの」と屈託のない顔で笑っている。
仕切りを隔てた隣の席をのぞき込むと、ほかに3人の女性が座っていた。席を立って挨拶にいくと、いずれも顔も名前も知っている同級生である。「お久しぶりですが、皆さん相変わらずおきれいでお元気そうで……」と挨拶をする。
特別面白いことを言ったわけでもないのに、皆さん楽しそうに大笑いをする。1人1人と深い付き合いはないけれど、何年かに1度くらい、何かの機会に顔を合わせる程度の同級生である。そんな仲間から突然「茅野クン」と、クン呼びされるのも、学生時代に戻ったみたいで心地よい。
帰りの車の中で奥さんから「お父さんって、同級生の前ではクン呼びされるのねっ」と、冷やかされるが、こればっかりは相手のことなのでどうしようもない。ともあれ、犬も歩けば5人の熟女に当たり、喜寿を超えてクン呼びされ悦に入ったというお話である。
積もる話は、またの機会まで。お楽しみに。
寒さ厳しくなりました。くれぐれもご自愛ください。では。