写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

和鮎のコンフィ

2018年08月01日 | 食事・食べ物・飲み物

 家にいても暑すぎるという日、久しぶりに西の軽井沢に向かって11時に家を出た。目的はその途中にあるイタリアン レストラン「トラットリア ルッツオ」でランチをとるためである。

 前回行ったときは日曜日で満席だったため、席が空くのを30分ばかり待たされた。このたびは平日ではあったが予約を入れて出かけた。曲がりくねった渡の瀬ダム湖沿いの山道を北へ30㎞走り、ちょうど1時間かけて到着した。

 客は我々だけで、他には誰もいない。オーナーの奥さんに「こんな日もあるのですね」と言うと「豪雨があったので道が寸断されているのではないかと思っておられるようです」と答える。

 貸し切り状態の店内で、水量の増えた川の流れが望めるいい席に座らせてもらった。「この季節、おすすめのものは何ですか?」と尋ねると「和鮎のコンフィはいかがでしょうか」という。今まで食したことがない珍しいアラカルトに、サラダとバゲット、飲み物にデザートまで付いたランチセットを注文した。

 流れてくるカンツォーネを聞きながらしばらく待っていると、注文の品が出てくる。コンフィ(confit)とはフランス語の「保存する」を語源とし、保存性を上げることのできる物質に浸して調理した食品の総称である。

 このたびのレシピは、鮎に塩をして30分ほどおき、鮎がかぶる位のオリーブオイルとローリエ、タイムを入れて、オーブンを93℃にセットして、約6時間かけてコンフィにする。その後、塩・こしょうで味を整え、厚手の鉄鍋で香ばしく焼いたものだという。

 日本でアユ料理と言えばまずは単純な塩焼きを思い出すが、6時間余り下ごしらえをしたコンフィというものを後学のために初めて食してみた。「骨まで食べられますので頭から全部どうぞ」と言われて、シッポとヒレだけを残して身もワタも全部頂いた。いかにもヨーロッパ人が白ワインを飲みながら食べるのだろうなと思わせるような、ちょっと酸っぱい複雑な味を賞味した。

 食後は、シェフが手作りした自慢のデザート・ティラミスで締めくくり、久しぶりの外食を堪能し、満足の1日を過ごした。