写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

執 念

2019年03月11日 | 生活・ニュース

 25年前、長距離通勤の電車の中でラジオを聞くために、胸ポケットに入るほどの小さな携帯ラジオを買った。退職後は、夕方の散歩で野球の実況を聞くために愛用していた。ところが時々電源スイッチが入らなくなることが起きた。液晶の画面を見ると「HOLD」というマークが出ている。

 ラジオを聞いているときに、何かの拍子で電源スイッチやチューナーのボタンに触れた時、スイッチが切れたり放送局が変わったりしないように全ての操作を「現状維持」しておくためのスライド式のスイッチ(H)が装備されている。

 原因究明をやってみると、Hスイッチをoffにしていても、いつの間にかonになっていることが分かった。これでは電源スイッチを切った状態で電源スイッチを入れても入らない。カチカチとHスイッチを上下に動かしているとやっと「HOLD」の表示が消える時がある。

 その瞬間を狙って電源スイッチを入れると、やっと電源が入ることがある。これではおいそれとラジオを聞くわけにはいかない。このラジオを諦めて、スマホのradikoでカープの試合を聞けるようにしたが、山口県で広島県の放送を聞くには年間4200円払わなければいけない。

 それなら新しく携帯ラジオを買った方がよいと判断し電器店に出かけようとしたが、何でも壊れた時には、一応分解してみる癖がある。この古いラジオも壊れて元々、分解してみることにした。裏蓋にある3本のビスを外し、力を入れてジワリ蓋を外す。

 Hスイッチを触っているとポロリと小さなプラスチック部品が外れて落ちた。その状態で液晶画面を見ると今までいつも点いていた「HOLD」という表示が消えている。電源スイッチを入れると普通にラジオが聞こえてきて、好きな局の番組を聞くこともできた。

 かくして、「一部破壊による蘇生」を果たした古い携帯ラジオを、一段と愛おしく感じた。それにしても「HOLD」なんて機能は、私にとっては無用であったばかりか、もう少しのところでラジオ生命を失うような長物であった。電器店に行くのが少し先になり、年間4200円の節約にもなった。何ごとも、まずはやってみることが大事ということか。

 


2 コメント

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見習いたいが (tatu_no_ko)
2019-03-13 08:27:43
こんな執念なら歓迎ですが、それをこなす技量が必須、
真似ができません。
エディオンへ走ってしまいます。
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tatu_no_koさん (ロードスター)
2019-03-14 09:01:08
こんなこともあるんですね。
何でもまずはやってみる、という姿勢は持ち続けたいと思っています。でも成功しないケースの方が多いですよ(笑)。
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