写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

私の天守閣

2018年10月26日 | 季節・自然・植物

 運動不足を少しでも解消するため、久しぶりに裏山へ登ってみることにした。ストックを携え、ジュース1缶とスマホをポケットに入れて出発した。出発というほど遠くまで行くわけではなく、岩国の市街地が見渡せる私が好きな場所を目指して出かけた。

 高齢者が1人で山に登って行方不明になる事故はよく新聞で見ている。こんなことのないように100%充電をしておいたスマホは欠かせない山登りグッズである。10月の下旬とは言え、陽が差す坂道を登っていくと汗ばんでくるし息も弾む。

 砂地の急な坂を足を滑らしながら30分も登ると目的の場所についた。腰を下ろし息を整えながら脈を測ってみると、何と130もあった。少し急ぎ過ぎたようである。スマホのアプリで標高を調べてみると、91.5mと出た。

 冷たいジュースを飲みながら、瀬戸内海に広がる市街地を眺めた。時計を見ると14時20分である。先日、生まれたばかりの孫が飛行機に乗って帰っていったが、その時の東京行きの便が出発する時間であることを思い出した。

 デジカメを取り出し、望遠で空港をキャッチすると、どんぴしゃり旅客機が滑走路に向かって出発しているところであった。飛び立つ直前であろう、遠くにいても爆音が大きく聞こえてきた。ややあって、北に向かって離陸する機影をデジカメでとらえることができた。

 「高き屋に のぼりて見れば 煙り立つ 民のかまどは にぎはひにけり」という歌があるが、まさに岩国市民のかまどの煙の見える絶好の場所である。ここは私の天守閣。