写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

襟飾り

2013年03月08日 | 岩国時遊塾

 このところ針金自転車に凝っている。凝っているというよりか生活をかけていると言った方が当たっているか。10年も前から、時に針金自転車を作ってサイドボードに飾ったり、訪ねてきた知人に小さなプレゼントとして渡したりしていた。

 ところが最近になって、今まで作ってきたものとは異なった形の針金自転車を見つけ、いくつか作ってみた。以前のものとは違って、割と簡単に作れる。針金の材質も、従来のアルミから真鍮や黄銅など色のきれいなものを作ってみた。小型のものは小粋な飾り物に使えそうだ。

 そうだ、これを背広の襟飾りにしてみよう。背広といえば 左襟にボタン穴があるがこれを使って飾る。そもそもこのボタン穴は一体何なのか。もともと西洋の紳士用の服は立て襟だったが、簡略化され窮屈さを取り除いていくうちに、現在の背広の形になったと言われている。その立て襟時代の第一ボタンの名残が、あのボタン穴だという。

 19世紀ごろ、襟に花を差してオシャレをしてパーティに出かける風潮が生まれた。一般にラベルホールと呼ばれているが、別名フラワーホールともいわれる所以である。小型の針金自転車をこのフラワーホールに取り付けて飾ろう。

 金色の真鍮針金で3台作ってみた。据え置き用のものと違って襟飾りとあれば、ピンバッジのような取り付け金具がいる。インターネットで調べてみると、ピンバッジの取り付け金具だけが販売されている。私と同じような買い手がいるのだろうか。10個が300円。直ぐに発注したものが今日届いた。

 早速針金自転車と組み合わせてブレザーの襟に取り付けてみると、男の飾り物としてはいい感じだ。当面これをつけて出かけるようなパーティなんぞはない。病院へ行くときにはちょっと似合わないし、はてさて使い道に困っている。そうだ、これを商品化してインターネットオークションで売って生活の足しとしてみるか。

 そんなことよりも、欲しい人にプレゼントして喜んでもらう顔を見る方がいいか。それとも開店したばかりの「時遊塾」の塾章とすることにするか。春の宵、針金を曲げながら一人悩んでいる。