映画「パッチギ!」のメインテーマとして流れていたフォーク・クルセダースによる「イムジン河」。68年に発表された際、僅か数日間ラジオで流れた後、突如発売中止になったことは当時中学生でご多分に漏れずすっかりフォークルファンだった私の記憶にもしっかり残っている。
でも確か違うグループによる同じ曲のレコードを何らかの手段で手に入れたなというおぼろげな記憶のもと、シングルレコードがほとんどほったらかし状態 . . . 本文を読む
「レイの前に音楽があり、レイの後ろに音楽がありました」 by ボニー・レイット
ご存知レイ・チャールズの人生を描いたその名もズバリの映画「レイ」は良くも悪しくもとても真面目な作品だった。
映画の中で初めてアトランティックレコードのスタジオでレコーディングする際、「駄目だ、それじゃ、チャールズ・ブラウンやナットキング・コールの真似じゃないか」と言われ、一計を案じたカーティス・アームストロング扮す . . . 本文を読む
昨夜、映画監督の高橋伴明と彼の新作映画「火火(ひび)」のプロデューサーである日下部さんという二人を交えて昔からの仲間が集まって飲む機会があり、実は伴明さんと会うのは10数年ぶりだったけれど、そんな空白期間を微塵も感じないとても自然な再会が出来てすっかり嬉しくなってしまった。
そしてその伴明さんを囲んでこうしたメンバーで一緒に飲むのは大阪で実際に起きた三菱銀行強盗事件をモデルにした宇崎竜童主演作品 . . . 本文を読む
今や山本晋也カントクより名前と顔が一致する映画監督となってしまった井筒和幸の「ガキ帝国」「岸和田少年愚連隊」に続く関西を舞台とした青春群像劇であるこの「パッチギ!」は、いろんな意味で味わい深い作品だ。
まずもって、当時社会現象化したオックスの失神コンサートに始まり、毛沢東、フリーセックス、ボーリング、レオポン、キング牧師、全共闘(京大西部講堂まで!)などなど、1968年という時代設定をなんだかん . . . 本文を読む
オタール・イオセリアーニ監督作品「月曜日に乾杯!」は何ともホンワカした映画だ。
ここで描かれるのはフランスの片田舎のある意味どうってことのない日常だ。そしてそんな日常の中に、煙草咥えながらアルファロメオをぶっ飛ばす婆さんとか、覗きが趣味といういかがわしい神父とか、ねずみをペットにしている女装のオヤジとか、それなりに変な人間もユーモラスに登場してくる。しかし、かといって基本的にそれらによって物語が違 . . . 本文を読む
「きみはいま何歳だい、エマ」 「二十七よ」 ああ、神よ。神よ。神よ。 「どうしてそんなことを訊くの」
ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョップリン、ブライアン・ジョーンズ、ジム・モリソン、カート・コバーン。彼らの名前を大声で列挙しそうになる。が、そうはせずに、言う。 「二十七歳か。ウァオ」
今まで読んだアメリカの小説で多分一番ロックスターおよびグループの名前が数多く出てくる小説、それ . . . 本文を読む
昔、初めてニューヨークでホットドッグを食べたとき、(当時の日本ではまだ魚肉ソーセージが主流でシャウエッセンみたいな気の効いた本物風のソーセージすらほとんど存在していなかったので)とびっきり美味しく感じたことがあった。
あるいは小さいときに通っていた学校や場所に行くとその小ささに驚くことがある。
そんな風に当時の感覚を今に照らし合わせるとそんなギャップが出てくる、そういうことって実は人生の中で少なか . . . 本文を読む
そしてそしてそのままで終わらないのが脅威の50歳トリオ。続いては金沢の新宿ゴールデン街、新天地という朝まで営業の店が連なるエリアに店を構えるロック飲み屋「HaKaSe」へ。
ここの店主である通称・はかせ(年上だけど、呼び捨てにしてしまう、ごめん)、とにかく年季の入ったロックファンで、教わることは未だに多い。
そして昨夜4人で一番盛り上がったのが、かつてのグループサウンズブームの時、異彩を放って . . . 本文を読む
そして「四遊」さんですっかり満足したあと平賀さんとともに柿木畠の「もっきりや」に行くと、そこには翌日ライヴを行なう新生PONTA BOX のメンバーが先乗りでやってきていた。
1997年以来ですから、もう8年にもなるんですね。あの一世を風靡したポンタボックスが新メンバーで帰ってきます。
第一作の"PONTA BOX"が出たのが1994年、あの時のツアー、もっきりやは一月でしたが、カチンカチンに凍 . . . 本文を読む
このブログを始めて以来、個人的に良く知っているお店は紹介しないという自分の中でのこだわりみたいなものがあったけれど、あえて、あえて紹介してしまう金沢の尾山町という繁華街から少し外れたところにある「四遊」さん。
ご主人一人でやっているこじんまりとしたこの日本料理のお店へ昨日はもうかれこれ30年の付き合いとなる友人たちと一緒に出かけたのだけど、いつもながらの料理の素晴らしさに一同ただひたすら平伏して . . . 本文を読む
ジェームズ・バリが、「ピーター・パン」のモデルとなった少年と出会い、その物語を完成させるまでを描いた映画「ネバーランド」。
映画の中で、主人公のバリが公園で出会った4人兄弟の子供たちとともに play(=遊び)するシーンがたびたび出てくる。飼い犬を熊と見立てて一緒に踊るシーン、裏庭がいつのまにか西部の街となる西部劇のシーン、あるいは海賊船の甲板のシーン、それらはいつしか現実から虚構へ、つまり同じ . . . 本文を読む
後にキューバ革命の英雄となる23歳の医学生エルネスト・ゲバラが年上の親友アルネストとともに中古のポンコツオートバイに乗って南米大陸を放浪するという”ロードムービー”である「モーターサイクル・ダイアリーズ」。
映画の前半、二人の乗るバイク1939年型ノートン500がなんとか走り続けてきたあたりは、まさしく青春ロードムービーといった感がつよかったが、そのバイクが壊れてともに走れなくなったあたりからい . . . 本文を読む
直木賞にノミネートされつつ残念ながら今回もまた受賞が叶わなかった伊坂幸太郎。そんな彼の「グラスホッパー」、これがすこぶる面白い。
常にドストエフスキーの「罪と罰」(反対から読むと唾と蜜か、なるほど)の文庫本を持ち歩き、自分が自殺させた亡霊付きまとわれる殺し屋、『鯨』。
自分は所詮操り人形ではないのかと自問自答しつつ、しじみの砂出しを見てしみじみする(それはあたかも、鈴木清順監督作品「殺しの烙印」 . . . 本文を読む
親しい読書好きな友人からも勧められ、世の中的にも評価が高い話題の原りょうの9年ぶりの新作だという「愚か者死すべし」を読んだ。
実はこの本の前に矢作俊彦の「ロング・グッドバイ」を読んでいたとき、---- あまりに月並みなリアクションで、書くのも我ながら気が引けるけれど ---- とにかく無性にハードリキュールが飲みたくなって、深夜のコンビでジャック・ダニエルのポケット瓶を買い求めて、久々のバーボン . . . 本文を読む
気の利いた会話、鮮やかな風景描写、存在感際立つ登場人物、そして酒と女に拳銃 ------ 。矢作俊彦の「ロング・グッドバイ」は、読んでいて極めて納まりの良いあくまでもオーセンティックな日本語のハードボイルド小説だ。
タイトルはもちろんレイモンド・チャンドラーの「THE LONG GOODBYE」へのオマージュを込めつつ、「THE WRONG GOODBYE」とするあたりがいかにも著者らしい。
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