俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

ワインが飲みたくなる「月曜日に乾杯!」

2005年01月25日 01時09分50秒 | 時系列でご覧ください
オタール・イオセリアーニ監督作品「月曜日に乾杯!」は何ともホンワカした映画だ。
ここで描かれるのはフランスの片田舎のある意味どうってことのない日常だ。そしてそんな日常の中に、煙草咥えながらアルファロメオをぶっ飛ばす婆さんとか、覗きが趣味といういかがわしい神父とか、ねずみをペットにしている女装のオヤジとか、それなりに変な人間もユーモラスに登場してくる。しかし、かといって基本的にそれらによって物語が違った方向に向いたり破綻したりするわけでもなく、ただひたすら変わり映えのしない日常が繰り返されている様子が緩やかに描かれている。

そうした中、主人公・ヴァンサン(ジャック・ビドウが好演!)が仕事と家庭の往復というあまりに単調で、かつ好きな絵もろくすっぽ描けない退屈な日常に嫌気が差し、父親の助言によってイタリアのヴェニスに向かうことによって物語は動く。

と思ったら、そのベニスでもそこで知り合った男たちとともにワインを飲んだり、修道女の生足を覗いたり、屋根に上って見たことのないヴェニスの風景を堪能したり、胡散臭い伯爵(監督本人が怪演!)と出会ったりと、彼の言わば「プチ家出」は心のヴァカンスととなるけれど、それは相変わらずの日常の延長でしかなく、知り合った友人が工場に仕事に出かけることによってヴァンサン自身もそれに気付いて自宅に戻っていく ------ 。

それにしても帰ってきた亭主に対して早速家の修理を頼みつつ、朝クルマをきれいに洗車し、マフラーまでかける女房。何ヶ月も留守にしていたのに「遅かったね」のひと言の彼の母親。あるいはへべれけの二人の中年親爺を軽くあしらうように面倒見るベニスの3人姉妹の母親。彼女たちの「強さ」 「したたかさ」。

古今東西、いつだって男は女の人の手の内にいるのだと改めて実感してしまう包み込むような優しさに満ちた映画だ。

そしてインタビューで監督も語っていたけれど、ベニスという街は交通手段がタクシーですら船なので、電車で街に着いたとき自動車の音が一切聞こえない、そういった新鮮さを持ち合わせた街であることは実感してわかっていたけれど、屋根から見たあの風景は全く予期せぬものだったので、いたく感じ入ってしまった。

あと、まったくの蛇足ながら日本人って、モスクワをモスコーとは、パリをパリスとは、あるいはペキンをペイチンと呼ばないくせに、何故にベニスをヴェネチア、フィレンツエをフローレンス(そのくせローマはローマのままだ!)と呼ぶのだろうか?むむむむ・・・。

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