俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「グラスホッパー」伊坂幸太郎

2005年01月14日 23時57分50秒 | 時系列でご覧ください
直木賞にノミネートされつつ残念ながら今回もまた受賞が叶わなかった伊坂幸太郎。そんな彼の「グラスホッパー」、これがすこぶる面白い。

常にドストエフスキーの「罪と罰」(反対から読むと唾と蜜か、なるほど)の文庫本を持ち歩き、自分が自殺させた亡霊付きまとわれる殺し屋、『鯨』。
自分は所詮操り人形ではないのかと自問自答しつつ、しじみの砂出しを見てしみじみする(それはあたかも、鈴木清順監督作品「殺しの烙印」で米を炊く匂いに興奮する宍戸錠演じる主人公の殺し屋みたいだ)ナイフの達人の殺し屋、『蝉』。
全くの正体不明ながら、この世の中の人の営みを昆虫のように捕らえる「押し屋?」の殺し屋、『槿(あさがお)』。

そして個性的な3人の殺し屋に加えて登場するのが、ある意味自分でまいた種とは言え、巻き込まれ型的に次々とかかわりを持ってしまう元教師の『鈴木』(他の3人に比べてあまりに当たり前すぎるこのネーミングに相応しく彼だけがある意味普通人だ)。

とにかくこうした魅力的な登場人物によって、群像劇的にというか、パラレルに物語は進んでいくのだけれど、そこにちょっとニヤッとする気の効いた会話とか、ありそうでありえなそうな絶妙な舞台設定とか、テンポある展開などが加わることによって、読んでいて本当に小気味良い。

ただ、人生を少しだけ長く過ごしたものからすると、「ブライアン・ジョーンズがローリングストーンズにいた云々」話とか、チャーリー・パーカー云々とかは、いささか咀嚼しきれていないように感じられ、若干鼻白む思いもしないことはなかったけれど、それはともかく、ラストに向かってどんどん話が見事に集束していく緊張感溢れる持って行きかたには本当に感心したし、これぞ新しい感覚の「ハードボイルド小説」かもしれないなとさえ、思ってしまった。

とにかく、えー! 読んでしまったやんけ!とは決して思わないお勧め本です。機会があれば是非!
これも一興と勧めてくれたMさんに感謝。

それと蛇足ながら、そんな風に新しいと言いつつ、実はこの本から「週刊漫画アクション」に書いていた70年代頃の大友克洋作品と相通じるものも感じ取ってしまった。
このオフビート感溢れるポップさがそうさせているのかなと、個人的には納得しているのだけど、さて?


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1 コメント

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こんちは~ (ゆきち)
2006-06-12 18:02:11
いつもありがとうございます「雑板屋」のゆきちと申します。

伊坂作品、トラバいただきましてありがとうございました!

張り切ってお返しに2度ほど日時を変えて送信いたしましたが、反映していないようなので・・・ご連絡させていただきました。

またお邪魔させていただきます。

今後ともよろしくお願いします☆
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