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ショーン・ペン監督作品を一気に観る「インディアン・ランナー」「クロッシング・ガード」「プレッジ」

2017-12-27 16:40:11 | 映画

 2016年ショーン・ペン監督作品で劇場未公開の「ラスト・フェイス」を見た後、これが5作目だと知った。ほかの作品を観ていないとは……。

1991年制作「インディアン・ランナー」
 この映画は、ブルース・スプリングスティーンの曲「Highway Patrolman」が基になっているという。
「私の名前はロバーツ。州の仕事をしている。誇り高い仕事を誇りに思っている。フランキーという名前の弟がいる」こういう歌詞をカントリー・ミュージック風で歌う。これがそっくりそのまま物語に展開する。

 1965年ネブラスカ州の冬、パトロール警官ジョー・ロバーツ(デヴィッド・モース)は、雪原の中の道路を逃げる車を追跡していた。急停止した車から降りてきた男が発砲した。ロバーツは、ライフルの照準を合わせて引き金を引いた。一発で相手の心臓を撃ち抜いていた。正当防衛とはいえロバーツの心に深い傷が刻まれた。

 ベトナムの戦場から帰還した弟のフランク(ヴィゴ・モーテンセン)も心に傷のある男だった。ジョーは真っ当な仕事を懸命にこなしているが、フランクはなげやりで喧嘩早い。同じ苦悩を抱えていても対照的なふたり。この世はヒーローとアウトローしかいない。

 妻の出産の日、フランキーはどこかへと旅立った。兄弟でも相容れないものがある。ましてやこの世は地獄だ。 と言いたげなフランキー。
  
1995年制作「クロッシング・ガード」
 娘を交通事故で亡くしたフレディ(ジャック・ニコルソン)は、その事実を直視できない。服役している犯人ジョン(デヴィッド・モース)を殺すことしか考えていない。そんな夫と別れた妻メアリー(アンジェリカ・ヒューストン)の「娘のお墓にも行っていないでしょ?」の問いにも「行ったよ」とは言うが「墓に刻まれた文句は?」「墓石の色は?」「丘の上? それとも木陰?」「墓石は埋め込み式だった?」フレディはこれらには答えられない。嘘をついているからだ。

 ジョンが6年の刑期を終えて出所した。ジョンは実家の庭のモーターホームに住んでいる。そこへ乗り込んだフレディ。銃を突きつけたが弾が入っていない。なんというドジ。ジョンはその隙に飛びかかってもこない。フレディは、「3日後に来る」という捨て台詞。

 やってきた3日後、アルコールをしこたま飲んでいるフレディ。モーターホームの前で座り込んでいると、ライフルを持ったジョンが現れる。覚悟をしたフレディが「ああ、撃てよ。いいよ」。やにわにジョンは、ライフルを投げ出して走り出した。あのライフルには弾が入っていなかったのだろう。

 路地や庭、大通りを抜けて走り続ける。それを追うフレディ。やがてフレディの娘エミリーの墓に倒れこむジョン。エミリーの墓は、埋め込み式だった。色はピンク。それを見降ろすフレディは、やっと現実を受け入れることが出来た。

「クロッシング・ガード」は交通指導員のこと。朝の登校時に交差点で交通整理を行う。人生には青信号も赤信号もない。自らが選ぶ必要がある。この映画もブルース・スプリングスティーンの「Missing」がテーマ曲。
  
2001年制作「プレッジ」
 プレッジは堅い約束を意味する。6時間後に定年を迎える刑事ジェリー(ジャック・ニコルソン)は、自身の送別会の最中、少女が殺された事件が発生する。周囲はもう定年だからほかの人間に任せたら? 

 ジェリーは根っからの仕事人間だった。雪の降りしきる事件現場で「ボタンを鑑識に回せ」と鋭い着眼点も見せる。遺族に顛末を話すのをみんなが嫌がる。それを引き受けたのがジェリー。泣き叫んだ遺族の母親から「神に誓って犯人を捕まえろ」と約束させられる。

 そして容疑者としてトビー(ベニチオ・デル・トロ)が連れてこられる。取り調べて「殺した」とは言うものの「誰を?」「いつ?」「どのように?」が不明。それでも警察は留置を決め警官が連れだした。その時トビーはその警官の銃を奪って口にくわえて拳銃自殺を果たす。警察はトビーを犯人と決めつけて一件落着。

 腑に落ちないジェリーは、退職後もガソリンスタンドを買い取って犯人を待ち伏せる。殺された少女が描いた絵、背が高く黒い服を着てバンのような車が描いてある。唯一の手がかりと言ってもいい。

 ガソリンを売る合間に池でマスを釣ったりする、そんな日常の中にレストランのローリー(ロビン・ライト・ペン)と親しくなる。子持ちのローリーにはクリシー(ポーリン・ロバーツ)という娘がいる。少女殺人事件が頭の中で大部分を占めているジェリーにとってクリシーは目が離せない存在となる。

 夜はベッドで絵本を読んで聞かせる。そういう風景を見るローリーにとって、別れた暴力亭主との違いに心が動く。その暴力亭主に襲われてけがをしたローリーが娘を連れて夜中、ジェリーの家に飛び込んでくる。これがきっかけとなってジュリーの強い勧めもあってローリー親子も引っ越してくる。まるで新しい所帯を持ったようだ。

 そんなある夜、クリシーから「魔法使いからチョコのヤマアラシを貰った。明日またくれる」と言う。それを聞いたジェリーは「こいつが犯人だ」と確信する。二人の秘密にしようと言って場所を聞く。近くのピクニック広場だ。

 自転車で広場に行ったクリシーを遠巻きに警察のスタン(アーロン・エッカート)やSWATの数人が待ち伏せする。犯人がなかなか現れない。車が一台勢いよく広場に止まる。降りてきたローリーがジェリーをなじる。「クリシーをオトリにして人でなし」罵詈雑言の嵐。

 引き上げるスタンが目にしたのは、トラックと正面衝突をしたバンの燃え盛る現場だった。多分、このバンに乗った男が犯人だと示唆しているように思われる。それとは知らないジェリーは、気がふれたのか閉店してボロボロになったガソリンスタンドで独り言を繰り返す姿があった。
  
 以上三本のショーン・ペン監督作品であるが、登場する男の性格描写を「インディアン・ランナー」のフランク、「クロッシング・ガード」のフレディ、「プレッジ」のジェリーともども頑固で一徹、そして風変わり。しかもすべて悲しみに覆われている。ショーン・ペンは悲しみの美学を描きたいのだろうか。

 「プレッジ」のジェリーは頭がおかしくなるが、はたして長年刑事をやった男が恋人のなじりに対してそういう状態になるだろうか。これなんかよく分からない部分だ。映画は全体として見せるものがあればいいので些細なことに拘ることもない。作品としては平均以上の出来で、観る人を満足させるだろう。

 ちなみに「プレッジ」でジャック・ニコルソンが駆るSUVは、日本ではお目にかからなくなったイスズのビッグホーンだった。牧草地の有刺鉄線をなぎ倒しながら疾駆する姿は、馬の疾駆とは違った迫力があった。この場面はショーン・ペンの遊びだったのかもしれない。こういう車で荒れ地を走る快感を知っているのかも。ショーン・ペンは男の子。

監督
ショーン・ペン

キャスト
デヴィッド・モース、ヴィゴ・モーテンセン、ヴァレリア・ゴリノ、パトリシア・アークエット、チャールズ・ブロンソン、デニス・ホッパー ベニチオ・デル・トロ、ジャック・ニコルソン、アンジェリカ・ヒューストン、ロビン・ライト、パイパー・ローリー、アーロン・エッカート、ヘレン・ミレン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ミッキー・ローク、サム・シェパード、パトリシア・クラークソン。

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