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大事なことは人と人との交流「はじまりへの旅」2016年制作 劇場公開2017年4月

2017-12-11 15:56:41 | 映画

           
 どこの学校にも負けない英才教育に加えアスリートのような運動能力を備えようとも、人と人との交わりがないのは車の両輪の一つが欠けているに等しいと言っているようだ。これは現代の風潮を示唆しているのではないか。巷でスマホに没頭している姿を見ると一縷の危惧を覚える。

 大自然の中で子供6人を育てるベン(ヴィゴ・モーテンセン)の日常は、原始的生活といってもいい。食事は屋外、火は火打石、飲料水は雨水をろ過という具合。食材の肉は、野生のシカを襲って手に入れる。食後は、勉強のための読書。

 ベンが子供たちに質問をする。
「量子のもつれは理解できたか?」
「大丈夫よ」
「そうか。では明日、M理論について物理学者の説とともに発表しろ」

 年齢的には幼稚園児から高校生と幅広い。先の命令は特定の子供に発せられる。この中にお母さんが見当たらない。入院中だが手首を切って自殺したと伝えられる。遺言には火葬してトイレに流してくれとある。仏教徒の母だが遺灰をトイレに流すとは、脚本家ももう少しロマンティックに書けないのかな。

 もっとアンバランスなのが原始的生活なのに、大家族ゆえバスが家族の足となっている。このバスで母親を引き取りに行くわけだ。大自然に囲まれて家族だけの生活が問題なのが、キャンプ場やファミレスなどで露呈する。

 ファミレスに入ったはいいが、ハンバーガーやマフィンは体に悪いとベンが言ってそそくさと出てしまう。何のために入ったんだい、と言いたくなる。入る前から分かっていることだし。

 それにキャンプ場。キャンピング・カーでバカンスを楽しむ人の中で若い女性と親しくなった長男のボウ(ジョージ・マッケイ)。夜、周辺を散歩しているとき、いい雰囲気になってきた。当然キスなんだがボウはしかたが分からない。鼻と鼻をぶつけあったりするものだから、女性のリードで事なきを得た。

 笑いごとではない。わが青春の思い出も似たようなもの。年上の女性だったから安心していられた。ジャーナリスト・評論家の故大宅壮一が「人生二度結婚説」唱えたとか唱えなかったとか、つまり若い時には年上の女性と、年をとれば若い女性とという具合。男から見た勝手な論理と言われそうだが、理にかなっていると思える。フランスのマクロン大統領がそれを実践しているように見える。

 横道にそれたが、世間知らずの人間に育てたくなければ、世の荒波に投げ込んだほうがいい。映画はそんなところだ。 が、昨今の風潮を見ると荒波に投げ込んだが、悪知恵ばかりが目につき学習しない輩が多いのが気にかかる。
   
監督
マット・ロス1970年1月コネチカット州生まれ。

キャスト
ヴィゴ・モーテンセン1958年10月ニューヨーク市マンハッタン生まれ。
フランク・ランジェラ1938年1月ニュージャージー州生まれ。
キャスリン・ハーン1973年7月イリノイ州生まれ。
ジョージ・マッケイ1992年3月イギリス、ロンドン生まれ。
サマンサ・イズラー1998年10月オクラホマ州生まれ。
コメント
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