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読書 ガブリエル・ガルシア=マルケス「わが悲しき娼婦たちの思い出」

2007-03-25 10:00:17 | 読書

              
 マルケスは、1982年にノーベル文学賞を受賞した。この本は、川端康成の「眠れる美女」に想を得て、77歳のときの創作という。
 「眠れる美女」は、67歳の老人だし、この本はもっと高齢で90歳の誕生祝に処女と戯れたいと願う。共通しているのは老人の性にまつわるもので、裸の年若い女が眠っているベッドで横臥(おうが)しながらその精気を求める。
 どちらの作品の主人公も、女性関係は旺盛だった。ただ役立たずになったとき、一体どう対処するか。「眠れる美女」は、失った青春の哀切や死の恐怖におののき、寂寞としたものがこみ上げてくるが、こちらの方は体中にキスをしたり汗を拭ってやったりするが、怒り狂って部屋をめちゃめちゃにしてしまう。勿論曲解の上で。
 この恋する美女に、自分の財産を残すことを決め、おまけに100歳を迎えるため希望の人生が始まり、いつの日かこの上ない愛に恵まれて幸せな死を迎えることになるだろうと言い放つ。マルケス本人は、新聞報道によると今年80歳になり、祝福の行事が行はれたが称賛への感想を聞かれ「望んでいない。身を隠すよ」の一言だったそうだ。キューバのカストロ議長とも親交が深いという。
              
              ガブリエル・ガルシア=マルケス

 そして、この本の中の音楽は、バッハ「チェロの独奏のための六つの組曲」、ワグナー「クラリネットと弦楽のためのアダージョ」、ドビュッシー「サキソフォンのための狂詩曲」、ブルックナー「弦楽五重奏」、ブラームス「バイオリンとピアノのソナタ第一番」などが出てくるが、私のクラシック・コレクションには無かった。

 この本に面白い記述やユニークな視点もあって楽しませてくれた。誕生日のお祝品の中にぞくぞくさせられるのもある。日本女性もこんなユーモアがあればいいなあと思う。
 “秘書たちはキス・マークの入った絹のトランクスを贈り物にくれて、添えられたカードを見ると、脱がせてあげます、と書いてあった。それを見て、若い女友達が、われわれ老人をもはや現役ではないだろうと高をくくって、きわどいいたずらを仕掛けてくるが、これも老いの楽しみの一つだと考えた”このキス・マークの一杯ついたトランクスを穿いて寝ると元気が出るのだろうか。

 私事で恐縮ながら、まだ完全に衰えていないことが分かった。先日、脂肪腫が気になって皮膚科に行った。診察室は女の先生で、左腕にかなり大きな膨らみがあるので見せた。
「ほかにもありますか?」
「ええ、右腕や太ももの付け根付近にもあります」
「じゃあ、見せてください」
 ズボンを下ろしたが、パンツはつけてウロウロしているとベッドを指差しここに横になってと言い始めた。全部脱ぐわけにいかないし、どうしたものかと考えていてチョットきわどいが、パンツを半分ほどズリ下ろした。
 そこの小さな脂肪腫を触診してきた。そのとき私は、チョットもやもやとした変な気分になりかけた。不必要なところが膨らんできたら困ったことになる。
 幸い触診はそこで終わった。頭の中では、まだまだ捨てたものではないと呟いていた。ちなみに、左腕の脂肪腫は摘出して、検査の結果は悪性ではなかった。
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