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映画 複雑に絡む中東の利権争奪を描く「シリアナ(‘05)」

2006-09-03 11:25:17 | 映画
 この映画には主演俳優はいない。おおよそ人間的な感情はほとんど描出されない。唯一、ブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)の息子がスイミングプールの漏電事故に遭った時、両親の必死の形相ぐらいのもの。
               
 CIA工作員ボブ・バーンズ(ジョージ・クルーニー)、小さな金融コンサルタント会社社員ブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)、中東の小国のナシール王子(アレクザンダー・シディグ)らが運命の糸に手繰り寄せられる。そこにはCIAが遠隔操作する、ピンポイント攻撃が待っていた。
               
 石油大手ケネックス社が天然ガスの採掘権を中国と争い負ける。これにはナシール王子の力が働いている。
 一方キリーンという小会社がカザフスタンで大油田の採掘権を得る。この件に関し司法省もどうやってキリーンが採掘権を得たのか調査を始めていて、大手法律事務所のベネット・ホリデイ(ジェフリー・ライト)も同様の調査を指示される。
               
 石油利権に絡む背後の政治的、経済的、宗教的対立に、産油国の王族の王位継承をめぐる家族の確執、それにまつわる不正や陰謀が渦巻く中東の暗部を、まるで新聞記事を読むように、ドキュメンタリータッチで淡々と語られていく。
               
 それにしても、稼いだ金の使い道の象徴が道路整備という皮肉な場面がある。何もない広大な砂漠にたっぷりと幅を取った片側二車線の舗装道路が交差し、周辺には建物らしきものは皆無の風景。
 一方、労働者階級は、職もない不安な生活を強いられている。いったい中東の現実は、どうなんだろうと考え込んでしまう。

 この映画を観て、原油価格の高騰とあいまって、中東に今一度強い関心を持つきっかけになるのもいいかもしれない。ちなみにシリアナとは、イラク、イラン、シリアを一つの民族国家にまとめあげることを想定したシンクタンクで使われる言葉と言う。
 そのシンクタンクも欧米の企業で、言葉を生み出したのだろう。三国から見れば、冗談はよしてくれと言いたくなるだろう。

 石油をめぐる争いは、かくも見苦しいものであり、今のところ石油の確保が国運を左右すると、中国のなりふりかまわぬ石油あさりが証明している。
 投機の金も絡みガソリンや灯油の価格はばか高くなった。迷惑な話だ。でこの映画、一度観ただけではよく理解できないので、DVDで何度も観るしかない。

監督スティヴン・ギャガン1965年5月ケンタッキー州ルイズヴィル生れ。‘02「ケイティ」に次ぐ監督二作目。この映画の脚本も書いていて、アカデミー脚本賞にノミネートされている。

キャスト ジョージ・クルーニー1961年5月ケンタッキー州キシントン生まれ。’05アカデミー賞では、「グッド・ナイト&グッドラック」で監督賞と脚本賞にノミネートされ、この「シリアナ」では、助演男優賞を受賞している。
 マット・デイモン1970年10月マサチューセッツ州ケンブリッジ生れ。8歳の頃からの親友ベン・アフレックとの共同脚本‘97「グッド・ウィル・ハンティング」でアカデミー脚本賞を受賞。俳優としても同作で主演賞にノミネートされる。’02「ボーン・アイデンティティー」がヒットする。
 アマンダ・ピート1972年ニューヨーク生れ。
 クリス・クーパー1951年7月ミズリー州カンザスシティ生れ。脇役で光る。‘02「アダプテーション」でアカデミー助演男優賞受賞。
 ジェフリー・ライト1965年12月ワシントンDC生まれ。
 クリストファー・プラマー1927年12月オンタリオ州トロンと生れ。
 ウィリアム・ハート1950年3月ワシントンDC生まれ。
 ティム・ブレイク・ネルソン1964年11月オクラホマ州タルサ生まれ。
コメント
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