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飯泉太子宗(いいずみ としたか)著「壊れても仏像」

2009-08-14 06:45:29 | 読書

          
 副題が「文化財修復のはなし」とあって、著者は仏像の修理に長年携わってきて、そこから見えるものを軽妙な語り口で綴ってあり一読しておくとお寺めぐりも一層楽しくなりそうだ。
 この世に存在するものは、必ず消滅する運命にある。ましてや木造の仏像をはじめ諸建築物は、管理が悪ければぼろぼろと崩れて土に返る。1300年前のままある訳が無い。お堂や仏像を何とかいい状態で維持しようとする気持ちが連綿と続くことが大事という。今あるお堂や仏像は必ず補修されている。それは認めなくてはならない。
 お寺に行くと「国宝」をはじめ「国指定重要文化財」とか「県指定重要文化財」、「市指定」や「町指定」などもあって、しずれも大書した標識が立ててある。多分に客寄せの意味もあるのだろうが、これが修理などの時には県なり市や町が負担しなくてはならない。予算の少ないところでは、指定が少ないという結果になっているかもしれない。
 そこで気づいたのは、境内にトイレがあるか、ないか。あるとすればキレイか。このトイレの状態で、そのお寺の懐具合が推察できようと言うもの。裕福な自治体やお寺は、広いスペースに水洗でバリアフリーというトイレになっている。そうそう見かけないが、あることはある。この不況下、真っ先に予算を削られる文化財関係。せめてお参りのときには、浄財を奮発しようと思う。
 いろいろと興味深い話があるが、茨城県石岡市菖蒲沢の集落での修理の話は、地元住民の熱意が伝わってくる。今は薬師如来が安置された薬師堂のみであるが、無住の寺というのも幸いしたのか、新聞の記事になり寄付金も集まったらしい。(在住の寺なら新聞記事にならない。特定の団体や個人の利益になる記事は書けないらしい)
 なにせ、山道を十五分も歩かなければ、薬師堂にたどり着けない。村人の人海戦術で仏像を担ぎ下ろし担ぎ上げたという。この薬師堂にも行ってみたいと思う。
 著者は、1974年生まれ。東北芸術工科大学、芸術学部(文化財保存)卒業。1997年~2003年(財)美術院国宝修理所に勤務。国宝、重要文化財の仏像の修復に携わる。2003年~2004年吉備文化財修復所に勤務。
 退職後、夫婦で世界一周の旅へ。およそ一年半の間、世界中の文化遺産を見て歩く。2006年帰国。2007年特定非営利活動法人「古仏修復工房」を設立。関東を中心にNPO活動による仏像・文化財修復を行っている。

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