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人間は愚かではあるが、和解のできる生き物でもある。「レイルウェイ運命の旅路’13」

2014-11-23 16:50:15 | 映画

              
 戦争に勝ち負けがあるが、真の勝利者はない。この映画を観ていると、そんな感想を持つ。真の勝利者とは、神に誓って正義の戦をしたと言えること。

 残念ながら戦争は邪悪だしなんら建設的な側面がない。喜ぶのは武器商人ぐらいなもの。過去に真の勝利者になった国はない。拉致や拷問の類は日常茶飯事だし相手を欺くことに血道をあげるからだ。正にこの映画も拷問が日英の兵士に拭い難い心の傷を残す。それは本人ばかりでなく家族にも及ぶ。

 1942年2月15日英国軍は日本軍のシンガポール攻撃で降伏の憂き目に遭った。当時の日本軍は輸送物資の補給に難渋していた。戦局拡大のため補給路を必要としていたようだ。

 そのためビルマ(現ミャンマー)とタイにまたがる泰麺鉄道の建設が急がれた。英国軍の捕虜や現地人、勿論日本の兵士も狩り出され突貫工事で進めた。マラリア、赤痢、熱帯潰瘍、コレラに悩まされながらの工事だった。

 英国軍の兵士の中にエリック・ローマクス(コリン・ファース)がいた。彼は戦友のフィンレイ(ステラン・スカルスガルド)とともに戦況を知るために受信機を作った。ラジオから流れるアナウンスは、日本軍の敗色濃厚を知らせる。

 その受信機について日本軍憲兵隊の知るところとなったが、発信機だと疑われエリックは、凄惨な拷問を受ける。憲兵隊の通訳として任務についていたのは永瀬隆(若いころは、石田淡朗、のち真田広之)だった。拷問の現場にも立会い、強い口調でエリックに白状を迫る。

 この場面を観ていて憲兵隊の隊長があくまでも送信機だと決め付けているのが、現代の私には不思議に思った。受信機と送信機の違いぐらい分かりそうなものだ。隊長が分からなくても通信兵もいることだから。

 この映画は実話を元にしているので隊長の態度が真実だとすれば、なんと日本軍の脆弱な知識レベルかと思わざるを得ない。ゼロ戦を作る能力があっても、最前線の兵士がこれでは悲劇を重ねるだけだろう。永瀬隆は、そういう立場に置かれていたため、英軍兵士からは憎悪の対象にされていた。

 さて、映画の出だしはロマンティックなものだった。1980年、鉄道マニアのエリックは乗り合わせたパトリシア(ニコール・キッドマン)との出会いがある。二人は恋に落ち結婚する。
 しかし、時々エリックがうなされて飛び起きることを見て心配したパトリシアは、戦友だったフィンレイに事情を迫り口を開かせた。そしてフィンレイから危険な内容として知らされたのが永瀬が生きていることだった。

 エリックは永瀬に会うが、永瀬も戦争の被害者だったことを悟り爾来生涯の友となる。一発の銃弾も炸裂しない戦争映画で重いテーマが心を締め付けるのは間違いない。

 エリックの妻パトリシア役のニコール・キッドマンの顔をしげしげと眺めていると、少し老いた感じがあるが相変わらず美しい。私には完璧な美しさに見える。
 うりざね型、彫りの深い目が大きく、魅惑的なブルーの瞳、匠が彫ったような鼻筋、上品でイチゴのような唇。これ以上ないという造形は、エリザベス・テイラーにも感じたしグレース・ケリーにも感じた。と言うことでキッドマンにはべた惚れ。

 映画の感動的なラスト・シーンに重なって2011年6月永瀬隆、2012年10月エリック・ローマクスの他界を告げる。
           
           
           
           

監督
ジョナサン・デプリッキー オーストラリア人

キャスト
コリン・ファース1960年9月イギリス、ハンプシャー州生まれ。
ニコール・キッドマン1967年6月ハワイ、ホノルル生まれ。
ステラン・スカルスガルド1951年6月スウェーデン生まれ。
真田広之1960年10月東京生まれ。
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