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映画「マイライフ、マイファミリー The SAVAGE'S’07」劇場未公開

2010-12-04 12:28:56 | 映画

              
 雲ひつない真っ青な空、椰子の木が風に揺れ街路の木々がきれいに刈り込まれている。道路には塵一つ落ちていない。緑の芝生に囲まれた広いドライブウェイの奥には、平屋の瀟洒で明るい建物が見える。穏やかで平和な風景。

 しかし、この建物の中でうんちで壁に介護士への不満を書き連ねるレニー・サヴェージ(フィリップ・ボスコ)と20年の同棲を続ける内縁の妻も認知症という最悪の状況に置かれている人々が暮らしている。

 ここアリゾナ州サンシティ。アメリカの不動産会社デルウェブが、1960年にアリゾナ州の砂漠の真ん中に作った高齢者のみが住む人為的に造られ病院、教会、ショッピングセンター、図書館、テニスコート、ボウリング場、スポーツ公園が完備している実在の町。

 その内縁の妻が突然亡くなる。父親は非婚契約書を交わしていて、同居しても法律上互いの財産は別々で相続権はない。したがって父親は家を出なければならない。
 ジョン・サヴェージ(フィリップ・シーモア・ホフマン)とウェンディ・サヴェージ(ローラ・リニー)の兄妹に思ってもいなかった父親の介護という問題が降りかかる。金持ちでもない二人にとって完全介護の贅沢な施設は、のぞんでも得られるものでもない。
 妹のウェンディはそれでもなんとかしたいと施設の面接にこぎつける。面接のあと駐車場で口喧嘩が始まる。
ジョン「連中の標的は罪悪感を持つ家族。緑豊かな環境は入居者でなく現実から目を背けたい家族のためだ」
ウェンディ「現実って?」
ジョン「入居者の死さ。あの美しい建物はホラーだ。“健康なサポート”“緑豊かな環境”そんな宣伝文句で死を覆い隠している。死とは醜いものだ。クソと小便と腐臭にまみれてる!」

 ジョンの言うことも分かるが、それで一体何が解決できるというのか? いつの日にか誰にでも襲い掛かる老いとの戦い。他人事とは思えない現実。いつ自分が認知症になるかもしれないという不安。
 人はそれぞれ捉え方が違うが、認知症とかアルツハイマーを見ているとむしろガンの方がいいような気がしないでもない。しかし、これは得て勝手で残された介護をする側の論理だし、本人からすれば認知症ほど人間の最期としてはふさわしいものはないのかもしれない。恐怖や不安を感じないで済む。

 一方で自分の心を静めるために「病気」があることに納得している。神様は皮肉はお方で、「出産」という喜びを与えながら「死」という恐怖もお忘れにならなかった。肉体と精神の衰退をもたらす病気があればこそ死を受け入れられる。レニーの死で世代交代が行われ、ジョンもウェンディもそれぞれの道を歩みだす。

監督
タマラ・ジェンキンズ1962年5月ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。
              
キャスト
ローラ・リニー1964年2月ニューヨーク生まれ。
              
フィリップ・シーモア・ホフマン1967年7月ニューヨーク州フェアポート生まれ。’05「カポーティ」でアカデミー主演男優賞を受賞。
              
フィリップ・ボスコ1930年9月ニュージャージー州ジャージーシティ生まれ。
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