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読書 ジェフリー・アーチャー「運命の息子」

2010-07-22 13:19:56 | 
                
 
 運命とは、物事のなりゆきや人間の身の上を支配し、人の意志で変えることも予測することも出来ない神秘的な力。また、それによって定められている物事のなりゆきや人間の身の上であるが、まさにナット・カートライトとフレッチャー・ダヴェンポートの身の上に起こったことだ。
 
 ジェフリー・アーチャーは、発端からドラマティックに物語を展開していく。マイケル・カートライトとスーザン・カートライト夫妻の双子の兄弟の新生児室のベッドの横には、ロバート・ダヴェンポート、ルース・ダヴェンポート夫妻の一人息子が眠っていた。
 看護婦のミス・ニコルは、ダヴェンポート夫妻のなに不自由ない一生を送る息子を抱き上げようとして立ちすくんだ。多くのお産を経験すれば子供の死は一目でわかるようになる。そして、死が予測できない運命の歯車が回りだすのは、あるときは他人によって下されるとっさの決断である。
 ナットもフレッチャーもハーバードとイエールを優秀な成績で卒業して実業界に躍り出た。そして、二人の運命は知事選挙で対峙することになる。
 映画のシーンが変わるように小説の場面も短い段落で変わっていく。それがテンポのよい印象を与える。欧米人特有の回りくどい言い回しもなく読みやすい文体で一気に読了した。エンタテイメントとして読むには格好の読み物だろう。

 著者は、1940年ロンドン生まれ。イギリス上院・下院議員、保守党幹事長を務め一代貴族(男爵)。北海油田の幽霊会社に投資して全財産を失うが、処女作「百万ドルを取り返せ」が大ヒットして借金を完済。上院議員をスキャンダルで辞任、ロンドン市長選の偽証罪で投獄される。著者本人もかなり小説的で、エンタテイメント横溢の伝記になりそうだ。
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