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読書 田中貴子「セクシィ古文!」

2010-07-12 13:24:30 | 読書
           
 著者あとがきに、『この本は「性」(ひらたくいえばエロ)を題材とした古文を通じ、ひとりでも多くの人に古文を好きになってもらいたいという願いを込めて企画されたものである』とあるが、読み終わってみて私にはいささか荷が重く、原文を読みたいという意欲は湧かない。

 光源氏は、夫が単身赴任中の空蝉(うつせみ)と二度目の逢瀬を目論むが拒否にあう。用意された客間に寝るが、不機嫌な源氏を心配して部屋にきた空蝉の弟小君(こぎみ)が姉の代わりに食べられているというのがその場面。食べられているというのは、ボーイズラブという意味だ。いくら源氏物語の光源氏の同性愛場面らしきものを示されても、原文を見せられるとそれこそ萎えてしまう。

 「いとらうたしと思す。手さぐりの、細く小さきほど、髪のいと長からざりしけはひのさま通ひたるも、思ひなしにやあはれなり……」とくると腰が引けてしまう。しかし、一つ感心するのは、ネーミングがいいと思う。空蝉なんて語感がいい。

 もともと源氏物語には直截的なエロティックな描写がない。そこを読み取るには、「明瞭な部分をつなぎ合わせ、作者がこのシーンをいれた意図を考え、経験に裏打ちされた想像力で補う」しかないと著者は言う。

 私は瀬戸内寂聴の現代語訳を読みたいと思っているので、果たしてこの場面がどんな記述になっているか楽しみではある。いずれにしても漫画家の田中圭一のマンガともどもたまにはエロに接するのもいいのではないか。それに著者と田中圭一の対談もあり、その中で
圭一「女性がセックスでどうやって快楽を得られるかに関心が生まれたのって、昭和からですよね」
貴子「昭和といっても、戦後すぐはまだ無理だったでしょうけれど」
圭一「1950年代にキンゼイレポートが知られるまでは、女性には性欲がないと本気で思われていました。女性にも性欲があるということを男が知ったのは、つい最近の話」
貴子「女性が性について話したり書いたりし始めるのは、現代になってからでしょう。……」貴子さんのこの言葉、全面的に信じていいものだろうか。例えば春画なんかは男女とも楽しんだようだが。細かいことはともかく、今では女性も男並みに欲情する人も多いのだろう。

 目次を見ると「すごいアソコ!」「同性愛もOK,OK!」「一人エッチ大好き!」「THE・変態!」「普通のセックス!」絢爛豪華なお色気満載。ご興味のある向きはどうぞ!

 著者は、1960年生まれ。国文学者、甲南大学文学部日本語日本文学部教授。著書多数、その中に「仏像が語る知られざるドラマ」があって、これも近々読みたいと思っている。
コメント
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