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映画 「扉をたたく人(‘07)」

2010-01-14 11:38:02 | 映画

 この映画も「退屈しなかった」。コネチカット州の大学で教鞭をとるウォルター(リチャード・ジェンキンズ)は、妻を亡くしてから覇気をなくしていて、いつもの内容、いつもの話し方、いつもの手順でいつもの時間に終わる講義を繰り返していた。
 ところが気の進まない論文の発表のため、ニューヨークの自宅アパートに戻ってみると、そこには賃貸アパート詐欺(こんな犯罪があるのだろうか)にかかった見知らぬ二人がいた。シリア出身のタレク(ハーズ・スレイマン)とセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)の不法滞在者だった。
        
 二人は荷物をまとめて出ていくが、見かねたウォルターは引き留める。次第にお互いを理解しあいジャンベ(アフリカン・ドラム)奏者のタレクが、叩き方を教えていく。ある日二人は地下鉄駅で無札入場を咎められ、9.11以降のアラブ系への監視を強めていた警察は、タリクを逮捕、拘留した。
 毎日のように拘置所を訪れるウォルター。そこへ息子を探して母モーナ(ヒアム・アッバス)が偶然訊ねてくる。(映画の中ではまさに偶然で、不自然な気がする)タレクの恋人ゼイナブに会わせたり、「オペラ座の怪人」を鑑賞したりしてウォルターとモーナの心にほのかに燃えるものが芽生える。
        
 しかし、タレクは強制送還されてしまう。母モーナも息子のいるシリアに戻る決意をする。空港での別離のシーンは、淡々としていて涙がぼろぼろと流れる大げさなものではなかった。ゲートに向かうモーナが、振り返ってウォルターを見つめるのもごく自然で、観る者の心を揺さぶる。
        
 タレクもモーナもいなくなったが、地下鉄駅構内でジャンベを一心に叩くウォルターの姿は、閉ざしていた心の扉がようやく開かれたことを示していた。なお、この映画でリチャード・ジェンキンズは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
 
監督トム・マッカーシー1969年ニュージャージー州生まれ。俳優としての出演が多くこれが監督二作目。
リチャード・ジェンキンズ1947年イリノイ州生まれ。本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされる。
ヒアム・アッバス1960年イスラエル生まれ。
ハーズ・スレイマン、レバノン生まれ。
ダナイ・グリラ、アイオワ州生まれ。
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