ドイツバイエルン州、環境共生都市、自転車都市エアランゲンを訪れたことがある。
エアランゲンのまちづくりの基本理念は、アメリカの大学で都市計画を学んだ市長のハ-ルバ-ク博士とランドスケ-プデザイナ-のグレ-ベ博士によって示され、住民と行政が一体となって着実に実現したまちである。基本理念とは、以下のようなものである。
・豊かな自然との共存。
・人間優先のまちづくり。
・廃棄物のリサイクルの推進。
・水と土の保護。
・省エネルギ-と大気の浄化。
このような理念は、日本のまちづくりでもよく見られる標語である。しかし、エアランゲンは計画に基づきそれを実現し、訪れた人は、この理念の意味を必ず実感することができるまちとなっている。
エアランゲンのまちづくりについては、「みんなでまちを造った」(グレ-ベ著、中村静夫訳、集文社刊)に詳しく書かれている。
以下は、私が都市の中を歩き、自転車で走り、環境共生都市のまちづくりを実感した記録である。
■人間を尊重した中心市街地
▲市街地中心にある宮殿庭園
車で都市の中心部にあるホテルについた。ホテルがまず、人なつこい、暖かみのある印象を受ける。その理由はすぐにわかる。都市の中心部にあるにもかかわらず、ホテルの内外に緑があふれていることや鳥のさえずりが聞こえてくることである。
ホテルに荷物をおいて、早速歩き始める。ホテルの近くに「みんなでまちを造った」の本の一ペ-ジに示された絵と同じ看板が掲げられており、絵の通りのまちとなっている。計画通りきちんと実現したことの記録を残している。
市の中心である鉄道の駅の方にいくことにした。
駅の周辺は、賑やかな商店街になっている。一部の区間は歩行者、自転車だけになっており、大勢の人が歩いている。商店街に接して、大学があり、大学と一体となった宮殿庭園という、広い芝生の公園がある。町の中心部にある公園は手入れ行き届いてとても美しい。公園がまちのシンボルとなっているように見える。
市街地の中心部でも、緑と公園があふれ、商業地は賑わいがあり、大学の存在がまちの風格を示し、人の生活感があふれている。快適で、安全で、ふれあいのあるまさに、人間を尊重した中心市街地となっている。
■自転車都市
▲歩行者と自転車のレーンが決められている
▲市民の多くが自転車を利用している
昨年、訪れたコペンハ-ゲンもそうであったが、ヨ-ロッパの都市では、自転車が多く使われている。
エアランゲンは都市の交通手段として、ドイツでも自転車が多く利用されている都市の一つにあげられている。エアランゲンは、おおむね平坦な地形となっている。
都市のほとんどの場所にいけるように、自転車専用道路、自転車専用ラインが整備されている。
早速、全員、市が貸し出している自転車に乗ることにした。自転車は、係員がていねいに一台、一台チェックして貸し出してくれる。乗る際、若干の使用料と、貸し出す際の担保として、保証金を預ける。ただ、少し困ることは私のように、足の短い日本人にとってサドルが高すぎることである。乗り降りが大変なことを除けば、快適なサイクリングを楽しむことができる。
幹線道路であれば、道の両側に歩道と並んで自転車専用レ-ンがあり、走行方向も決められている。自転車のマナ-も決められており、自転車レ-ンの表示のない歩道は乗って走ってはいけないようである。最初はわからなくておばあさんから注意された。
自転車を多く使うためか、道路を走っている車はあまり多くないように思える。
中心市街地周辺部に駐車場があるため、駐車している車の姿がない。自転車と歩行者が主役で自動車が脇役になっているまちを目のあたりにした。
市街地がコンパクトになっているため、主要な市街地の端から端まで自転車で走って、20分もかからない。
自転車道さえ整備されれば、都市の交通手段として、自転車がいかに優れているかが実感できる。
■みどりあふれる都市
▲ゆったりとした道路には高木の街路樹が整備されている
自転車を走っていて、町中緑がとても目につく。
大きな街路沿って、帯状に公園があったり、街路樹や集合住宅の緑地が連続しており、リゾ-ト都市のようなすばらしい景観を楽しむことができる。
市街地の中でこんなに緑が多いのは、グレ-ベ博士の計画の素晴らしさもあるが、それを実現するためには、住民の協力も相当あるのではないかと想像される。また、市街地はとても清潔で、ゴミなどが見あたらない。ドイツの大都市よりも、町全体の質の高さを感じる。
今回、初めて、クラインガルテン(市民農園)を見学する機会を得たが、クラインガルテンも、庭や生け垣に緑と花があふれ、想像以上に美しかった。
▲市街地中心にある公園
▲クラインガルテン
■自然と共存する都市
エアランゲンの土地利用計画図(Fプラン)を見るとわかるが、公園、農地、樹林地いわゆる自然系の土地利用のまとまりを大事にしている。樹林地であれば、数百haのまとまりがある。川沿いも自然系の土地利用でガ-ドされており、鳥、虫などの動物の生態に配慮されている。
都市は、南北・東西の帯状の緑の軸により、きちんと分断されている。また、一部の地域は自然のそのままの状態で保全する(ビオト-プ)ために、人間も近づけないようになっている。
住民の自然に対する意識が高く、自然系のまとまりを分断する道路の計画があったが、住民の反対で建設されていない。したがって、幹線道路が樹林地の前で、突然止まっている。日本であれば、農地や樹林地を通る道路はすぐにできてしまう。
極端な言い方をすれば、エアランゲンのまちづくりの考え方はまず、現在ある自然の存続を第一義に考え、その中での人間の生活のあり方を考えることのように思えた。
▲小川も自然状態に近い
▲住民運動によって行き止まりとなった道路
■おわりに
私はエアランゲンを見て、実際こんな都市が実現しているのに、驚いた。日本のまちづくりでは、基本理念が忠実に実現していかないことがほとんどなので。理念は、簡潔でよい。忠実に頑固に実現していくことが大切なのだと実感した。
エアランゲンのまちづくりの基本理念は、アメリカの大学で都市計画を学んだ市長のハ-ルバ-ク博士とランドスケ-プデザイナ-のグレ-ベ博士によって示され、住民と行政が一体となって着実に実現したまちである。基本理念とは、以下のようなものである。
・豊かな自然との共存。
・人間優先のまちづくり。
・廃棄物のリサイクルの推進。
・水と土の保護。
・省エネルギ-と大気の浄化。
このような理念は、日本のまちづくりでもよく見られる標語である。しかし、エアランゲンは計画に基づきそれを実現し、訪れた人は、この理念の意味を必ず実感することができるまちとなっている。
エアランゲンのまちづくりについては、「みんなでまちを造った」(グレ-ベ著、中村静夫訳、集文社刊)に詳しく書かれている。
以下は、私が都市の中を歩き、自転車で走り、環境共生都市のまちづくりを実感した記録である。
■人間を尊重した中心市街地
▲市街地中心にある宮殿庭園
車で都市の中心部にあるホテルについた。ホテルがまず、人なつこい、暖かみのある印象を受ける。その理由はすぐにわかる。都市の中心部にあるにもかかわらず、ホテルの内外に緑があふれていることや鳥のさえずりが聞こえてくることである。
ホテルに荷物をおいて、早速歩き始める。ホテルの近くに「みんなでまちを造った」の本の一ペ-ジに示された絵と同じ看板が掲げられており、絵の通りのまちとなっている。計画通りきちんと実現したことの記録を残している。
市の中心である鉄道の駅の方にいくことにした。
駅の周辺は、賑やかな商店街になっている。一部の区間は歩行者、自転車だけになっており、大勢の人が歩いている。商店街に接して、大学があり、大学と一体となった宮殿庭園という、広い芝生の公園がある。町の中心部にある公園は手入れ行き届いてとても美しい。公園がまちのシンボルとなっているように見える。
市街地の中心部でも、緑と公園があふれ、商業地は賑わいがあり、大学の存在がまちの風格を示し、人の生活感があふれている。快適で、安全で、ふれあいのあるまさに、人間を尊重した中心市街地となっている。
■自転車都市
▲歩行者と自転車のレーンが決められている
▲市民の多くが自転車を利用している
昨年、訪れたコペンハ-ゲンもそうであったが、ヨ-ロッパの都市では、自転車が多く使われている。
エアランゲンは都市の交通手段として、ドイツでも自転車が多く利用されている都市の一つにあげられている。エアランゲンは、おおむね平坦な地形となっている。
都市のほとんどの場所にいけるように、自転車専用道路、自転車専用ラインが整備されている。
早速、全員、市が貸し出している自転車に乗ることにした。自転車は、係員がていねいに一台、一台チェックして貸し出してくれる。乗る際、若干の使用料と、貸し出す際の担保として、保証金を預ける。ただ、少し困ることは私のように、足の短い日本人にとってサドルが高すぎることである。乗り降りが大変なことを除けば、快適なサイクリングを楽しむことができる。
幹線道路であれば、道の両側に歩道と並んで自転車専用レ-ンがあり、走行方向も決められている。自転車のマナ-も決められており、自転車レ-ンの表示のない歩道は乗って走ってはいけないようである。最初はわからなくておばあさんから注意された。
自転車を多く使うためか、道路を走っている車はあまり多くないように思える。
中心市街地周辺部に駐車場があるため、駐車している車の姿がない。自転車と歩行者が主役で自動車が脇役になっているまちを目のあたりにした。
市街地がコンパクトになっているため、主要な市街地の端から端まで自転車で走って、20分もかからない。
自転車道さえ整備されれば、都市の交通手段として、自転車がいかに優れているかが実感できる。
■みどりあふれる都市
▲ゆったりとした道路には高木の街路樹が整備されている
自転車を走っていて、町中緑がとても目につく。
大きな街路沿って、帯状に公園があったり、街路樹や集合住宅の緑地が連続しており、リゾ-ト都市のようなすばらしい景観を楽しむことができる。
市街地の中でこんなに緑が多いのは、グレ-ベ博士の計画の素晴らしさもあるが、それを実現するためには、住民の協力も相当あるのではないかと想像される。また、市街地はとても清潔で、ゴミなどが見あたらない。ドイツの大都市よりも、町全体の質の高さを感じる。
今回、初めて、クラインガルテン(市民農園)を見学する機会を得たが、クラインガルテンも、庭や生け垣に緑と花があふれ、想像以上に美しかった。
▲市街地中心にある公園
▲クラインガルテン
■自然と共存する都市
エアランゲンの土地利用計画図(Fプラン)を見るとわかるが、公園、農地、樹林地いわゆる自然系の土地利用のまとまりを大事にしている。樹林地であれば、数百haのまとまりがある。川沿いも自然系の土地利用でガ-ドされており、鳥、虫などの動物の生態に配慮されている。
都市は、南北・東西の帯状の緑の軸により、きちんと分断されている。また、一部の地域は自然のそのままの状態で保全する(ビオト-プ)ために、人間も近づけないようになっている。
住民の自然に対する意識が高く、自然系のまとまりを分断する道路の計画があったが、住民の反対で建設されていない。したがって、幹線道路が樹林地の前で、突然止まっている。日本であれば、農地や樹林地を通る道路はすぐにできてしまう。
極端な言い方をすれば、エアランゲンのまちづくりの考え方はまず、現在ある自然の存続を第一義に考え、その中での人間の生活のあり方を考えることのように思えた。
▲小川も自然状態に近い
▲住民運動によって行き止まりとなった道路
■おわりに
私はエアランゲンを見て、実際こんな都市が実現しているのに、驚いた。日本のまちづくりでは、基本理念が忠実に実現していかないことがほとんどなので。理念は、簡潔でよい。忠実に頑固に実現していくことが大切なのだと実感した。
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