万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ムーンショット計画は‘誰’のため?-必要電力から推理されるシナリオ

2023年05月11日 12時00分09秒 | 統治制度論
 日本国政府が推進しているムーンショット計画は、2050年までにも目標を達成できば、表向きでは‘全ての人’に恩恵が均霑するかのように謳っております。目標1のターゲットも、「誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター 基盤」を掲げており、同研究開発プロジェクトの‘公益性’をアピールしています。しかしながら、国民は、政府の言う「誰もが」を信じても良いのでしょうか。

 例えば、目標1のサイバネティック・アバター基盤が構築された暁には、国民の一人一人が自らの分身アバターを10体以上保有することができるとされます。ところが、複数の分身達が同時に活動するには膨大なエネルギーを要する点については、すっかり抜け落ちています。生物であれば、摂取した食物から体内の代謝機能でエネルギーを得ることができるのですが、3D上のアバターであれ、ロボットであれ、外部からエネルギー、即ち、電力を供給する必要があるのです。

しかも、目標7では、「主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」を目指していますので、年齢の制約を超えてアバターの数は爆発的に増加します。また、目標8のように自然災害や気候までコントロールするとなりますと、さらに莫大なエネルギーを要します。このことは、Society 5.0時代とは、電力の大量消費社会であることを示しているのです。因みに、内閣府によれば、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されています。

 政府がSociety 5.0時代に向けて率先してデジタル化に邁進する一方で、その行く手には、必要電力の確保と供給という、あまりにも高い壁が立ちはだかっています。現状を見ましても、ウクライナ紛争を機にエネルギー資源の調達への不安、並びに、コスト高となる再生エネの普及から電力料金が軒並み跳ね上がっています。電力料金の急騰に国民が悲鳴を上げる状況に至っているのですが、Society 5.0時代を迎えるには、先ずもってエネルギー不足を解消すると共に、エネルギー供給量を増やさなければならないはずです。しかしながら、日本国政府が掲げる9つの目標にあって、エネルギーに関する項目は見当たりません。目標4として、「地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」が掲げてあるに過ぎないのです。

 Society 5.0時代に伴う電力不足の問題については、既にAIに代わるOIの研究開発が進んでいることからも伺えます。現行のAIが広く普及すれば、深刻な電力不足に見舞われることが予測されるため、電力供給を必要としない人の脳細胞を用いようというのが、OI開発の目的なのです(もっとも、電力は要しないとしても、OIが生物である以上、ブドウ糖等によるエネルギー・チャージが必要なのでは・・・)。

 それでは、エネルギー不足の問題を無視する政府の姿勢は、一体、何を意味するのでしょうか。上述した矛盾点を最も合理的に説明するとすれば、恐ろしいシナリオが浮かび上がってきます。それは、100歳までの健康生活や複数のアバター保有、あるいは、目標10の心のやすらぎ等の先端的なテクノロジーの恩恵は、世界経済フォーラム等のメンバーを中心とした一部の富裕層に限定される一方で、他の大多数の人類には、政府による心身両面における徹底管理、昆虫食の強要、電力不足による劣悪な生活環境等が待っているというものです。そして、コロナ・ワクチン等による人口削減計画が実しやかに囁かれるのも、エネルギー供給のキャパシティーを考慮すれば、Society 5.0時代にあっては、現在の人類の人口は多すぎるからかもしれません。現在の人口規模を抱えたままでSociety 5.0を実現することは、殆ど不可能なのですから。

 以上に述べてきましたように、ムーンショット計画には世界権力による人類支配のシナリオが潜んでいるとしますと、日本国民は、まったくもって政府を信頼しなくなることでしょう。国民にとりましては、自らが納めた税金が、外部の富裕層のために使われるのみならず、その結果として、国民は政府の管理・監視の対象となり、目に見えない牢獄に閉じ込められてしまうのですから。今日の政府の動きを見ておりますと、このシナリオ、陰謀論として一笑に付すことができないリアリティーがあるように思えるのです。

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