万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ドローン攻撃事件は誰の犯行?-最も可能性の高いシナリオ

2023年05月05日 12時11分01秒 | 国際政治
 今月5月3日、ロシアにおいて大統領執務室が置かれているクレムリンに、無人機であるドローンが攻撃を試みるという事件が発生しました。翌日にはロシア大統領府が、ウクライナ側によるプーチン大統領の暗殺を狙った犯行であるとする見方を公表し、報復も示唆する事態となりました。その一方で、同事件には不自然な点が見られることから、様々な憶測が飛び交うこととなったのです。

 国家間の交戦状態にあって一方の国が攻撃を受けた場合、通常は、相手敵国による仕業と見なされがちです。しかしながら、今般のドローン攻撃事件をウクライナ側の犯行と、即座に断定できないことには、それなりの理由があります。過去の歴史に関する客観的な検証が進み、かつ、ネットの普及により情報量が飛躍的に増大した今日、偽旗作戦の実在性が証明されているからです。このため、犯人と名指しされたウクライナ側によって主張されたのが、ロシア自作自演説でした。既にウクライナ側は5月に大規模な反転攻勢を計画しているとされますので、自作自演説が正しければ、プーチン大統領は、自身が暗殺の危機にあったことをアピールすることで、ロシア国民の対ウ敵愾心及び国民間の団結心を高め、戦時体制の強化を促すための国内対策であったのかもしれません。

 しかしながら、ドローン攻撃事件の解明については、一筋縄ではいかないようです。その後、元ロシア国会議員のイリヤ・ポノマリョフ氏がロシア国内の反プーチン勢力による犯行とする見解を示したことから、新たな可能性が加わることとなりました。また、同国には、目下、プーチン大統領に批判的とされる民間傭兵組織ワグネルも存在しており、大統領に対する威嚇の意味を込めた‘軍事的行為’を行なう能力を有しています。その一方で、ウクライナ側でも、反ゼレンスキー勢力が暗躍している可能性もありますし、アゾフ大隊といった民兵組織から昇格した部隊も戦争の激化を目的に秘密工作活動に従事しているかもしれません。ロシア及びウクライナの両当事国のみならず、ここに、両国内の反政府勢力による犯行という線も浮上してくるのです。

 以上に、二国間の関係から見た可能性について述べてきましたが、ここで注意を要する点は、ロシア側が、ウクライナによる攻撃の背景には、それを命じたアメリカが潜んでいると指摘していることです。この見解に従えば、ロシアの報復対象にはアメリカも含まれることとなり、今般のドローン攻撃事件は、一気に第三次世界大戦の入り口まで人類を引きずり込んでしまうのです。

 かくして、ドローン攻撃事件は、国際社会を世界大戦の危機に陥れるのですが、同事件の解明に当たっては、従来の国家間対立という二次元構図では、‘真犯人’に行き着くことは困難なように思えます。三次元構図、即ち、国際社会を上部から操る世界権力の存在を仮定しますと、今般の事件にあって最も可能性が高いシナリオは、世界権力による世界大戦並びに軍事全体主義体制への誘導作戦の一環ということになりましょう。

 クレムリンの元老院ドームの屋根にドローンが激突するシーンの動画は、2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロを思い起こさせます。今になって考えてみますと、何故、世界貿易センタービルへの激突シーンを見事に捉えた動画が撮影されたのか、それも謎なのですが、今般の事件でも、狙い澄ましたかのようにドローンによる攻撃の瞬間が撮影されている点に不自然さがあります。しかも、攻撃機の数も、9.11事件と同じく2機であったとされます(攻撃は、15分間隔とされる)。両事件の共通性は、一体、何を意味するのでしょうか。そして、二機とも撃墜されたとされていますが、首都上空の防空システムが機能せず、クレムリンのドームの屋根あるいはロシア国旗にぶつかる寸前の瞬間に撃墜したのか、これも謎なのです(ドーム屋根には二人の人影があり、この二人が撃墜の任務にあたったのであれば、より遠方に飛行している段階で打ち落としたはずですし、迎撃したのかどうかも判然としない・・・)。

 また、ドローンについては、ウクライナの首都キーウでも奇妙な事件が発生しています。クレムリンでの事件後の翌4日にあって、同市上空でドローンが撃墜されたというものです。当初は、ロシア側による報復との見方もありましたが、ウクライナ当局は、自国のドローンが制御不能に陥ったために撃墜したと説明しています。これが事実であれば、ウクライナ国内では、ロシア軍とウクライナ軍の双方がドローンによる空中戦を演じていることになります。通常は、ドローンに対しては、地対空ミサイルで迎撃するはずですので、首都キーウにあってウクライナ軍のドローンが展開している理由が定かではないのです(国民には、敵機であるのか、自軍のドローンであるのか判別がつかない・・・)。

 歴史を振り返りますと、近代以降の世界大戦や戦争の前夜には、必ずと言ってもよいほどに、真相が闇の中となるような謎の事件が発生しているものです。今般のドローン事件も、世界権力による世界支配計画の文脈で理解した方が真相にたどり着く公算が高く、同事件が仮にその予兆であるならば、三次元構図を前提とし、世界大戦化を阻止するための対策を急ぐべきではないかと思うのです。

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