終端言語

様々な場面における会話でしばしば現れる『それを言っちゃあおしめぇよ』
となりそうな言葉がある。

例えば、半ばキレ気味で『俺だってそうなんだ！』とか、『それがお前の
成長に繋がる』とか、『そもそも～』や『大体～』から始まるような
言葉がそれである。
この言葉が出てきた時には、おそらく相手は会話や議論、交渉を続ける
気力を失うであろう。実際問題、会話や議論、交渉はその時点で終了である。
なぜならば、相手の気力を萎えさせたのは、その言葉から議論の余地がない
事を察した為で、双方が模索するはずであったものが、単なる答え探しに
なっていた（そしてその答えが相手の望むものではない）事を悟った為
でもある。平たく言えば『話にならない』と思われたのである。

こういった言葉が飛び出した場合、速やかにその会話を終了させるべきで
あるが、往々にしてそうは問屋が下ろさない場合が多い。その言葉を
発した側としては、相手の答え（発した側にとっての正解）を聞くまで、
会話は終了していないのだから。
『かように一方的な話、聞き入れるわけにはまいりませぬ』と返した
ところで、『一方的？はて面妖な。ただ確かに、最良の結果に繋がる
可能性はそう多くはなかろうがね』とかわされるのがオチである。
このやりとりだけを見ても、会話の余地など既にないことが分かろう。

本質的な解決方法は、言葉を発した側が自覚し改める以外にない。
他者の諌言や教訓などはアテにはできない。当の本人が痛い目を見て、
考えや行動を改め、それが言葉になるまで待つしかない。
ゆえに遠ざけるか、去るのが一番手っ取り早い。
しかしながら、そのどれも叶わないのが常であり、今日も誰かが何かを
押し殺すのである。