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玉肌日記

2016年03月12日 | 玉肌日記
【奥湯河原温泉(神奈川県湯河原町)】
関東では北方に比較的よい温泉が比較的多いため、雪道を好んでは運転はしない当方にとって、厳冬期での訪問は実質不可能で、温泉巡りの避寒地(避暑地の対義語)としての伊豆半島は貴重な存在。ただ、惜しむらくはそこに「いかにも観光温泉」的佇まいが多い中、その逆をいく陰影礼賛なる地がここ奥湯河原。湯河原から車で15分程度山奥に走った場所にあり、これよりさらに山を登ればもう箱根という領域にあるが、今回も厳冬期に再訪したが訪問日は東京都内でも積雪リスク有りという日。避寒地のため、決まって冬に来るせいもあるのだが、訪問時はいつも雨天や曇天がほとんどにして今回も同様。しかし、ここ奥湯河原にはまさに曇天がマッチしており、逆に雨天や曇天が添える”しっぽり”とした雰囲気がこれまた非常に好ましい。前述の檀一雄の逃避行の記憶があまりに強い(この旅館の通路には”火宅の人”の該当部分が掲載されておりジックリと見入った)ためか、隠遁感かつ重厚感のある場所は此所以外そう容易には見つからない。オールドファッションな雰囲気を残す宿屋が残っているのも好ましいが、その雰囲気のなか、肌寒い季節に入る温泉はまさに至上極上。泉質は自家源泉のカルシウム―硫酸塩泉だが、単純温泉に近く無色透明無味の非常に綺麗かつプレーンなる湯がオーバーフロー。車の音もまったく聴こえず、非常に静謐。旅館通路にある掲載の原稿に”旅館前を散歩していると猟師が猟犬をつれて山から下りてきた”(水上勉であったか)という文を見たが、今でもまさに猟師が山から下りてきそう。魚も美味。