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今年は片山潜・生誕150周年でした

2009年12月24日 | 現在おすすめの本

 労働運動機関紙の先達といえば『労働世界』(1897~1901)ですが、今年はその創刊者片山潜の生誕150周年でした。

 私と片山潜の出会いは1996年11月の関西勤労者教育協会・戦前の出版物を保存する会主催の「片山潜バスツアー」にお誘いを受けたことが始まりでした。当時私の上司であった小森孝児さんと一緒に参加、バス中で〈クイズ・片山潜ABC〉を解きながら生家のある岡山県久米南町羽出木に向かいました。記念碑への献花、資料館の見学、そして生家でおにぎりや漬け物をご馳走になりながら、猿橋真(当時:関西勤労協副会長)の「日本の労働運動と片山潜」と題する講演を聴いたことを覚えています。

 片山潜は1859年(安政6)、現在の岡山県久米南町で庄屋の家に生まれました。明治の開国を数年後に迎えるこの時期、全国には大凶作による米価高騰、生活困窮、課役重税、村役人の乱脈などで農民や庶民の暴動、打ち壊し、また百姓一揆が広がり、遠くヨーロッパでは国際労働者協会が作られた頃でした。

 小学校時代より学問好きだった潜はより高い学問を志して上京、印刷工、漢学塾などを経て25歳で渡米、その後13年間働きながら大学を転々としつつも学びを深め、キリスト教入信、そして社会主義に目覚めていきます。

 37歳の時に帰国、1897年にキリスト教社会主義の立場から東京に貧しき人々のための社会事業施設「キングスレー館」を開設。また日清戦争後の社会情勢を背景に労働運動が巻き起こる中、高野房太郎らと労働組合期成会を結成、日本初の労働組合である鉄工組合の発会を行い、そして労働運動の本格的な機関紙『労働世界』を創刊したのです。

 発行は労働新聞社が行い、タブロイド判10ページ、1部2銭、個人購読制、月2回刊で100号まで発行されています。創刊号では「労働世界の目的は『労働は神聖なり』『団結は勢力なり』との金言を実行する」と約束し、「これはそれまで労働が下賤な仕事として見られ、労働者の団結など全く考えられなかったことに対する、新鮮な叫びだった」(隅谷三喜男)のです。

 毎号の最後のページは英文欄で、労働運動の先輩にあたる英米などの労働運動情報などが載っていて、世界に開かれた目を養うことも編集方針の1つでした。

 現在『労働世界』の実物を目にすることは残存自体が稀少なため困難ですが、その復刻紙面の一部を『〈労働世界〉と片山潜』(解説・小森孝児、監修・隅谷三喜男・1997年・日本機関紙出版)で手にすることができます。最も遅くに発見された4号分と2色刷の創刊号を含む全10号分90頁を解説書と参照資料紙面付きのセットにしています。

 手にすれば日本の労働運動草創期の機関紙活動の熱きパワーを実感することができます。


『労働世界』の復刻紙面とガイドブックを収録


これが『労働世界』の創刊号

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