The Howlin' Wolf Album / Howlin' Wolf (1969)
ブルースの巨人、ハウリン・ウルフ(Howlin' Wolf)の1969年発表の問題作。一応「The Howlin' Wolf Album」と呼ばれているが、何が問題って、まずジャケット表にデカデカと『これはハウリン・ウルフのニュー・アルバムです。彼は気に入っていません。もっとも最初はエレキ・ギターさえも気に入りませんでした。』と大書きしてある。何という呆れたマーケティング(笑)。同門のマディ・ウォータース(Muddy Waters)の「Electric Mud」(’68)や、以前に紹介したボ・ディドリー(Bo Diddley)の「The Black Gladiator」(’70)と同様に、当時隆盛のワウワウ・ギターを多用したファンク、サイケデリックよりのロックバンドとの共演を企画(強制?)されたアルバム。経済的にもレコード会社的にも妥協を強いられたのだとうは思うが、レコードジャケットのこれはウケ狙いだったのか、実際に投げやりだったのか…。
バンドはマディ版と全く同じメンバー+相棒のヒューバート・サムリン(Hubert Sumlin)とのこと。ちなみにマーシャル・チェス(※当時Chess Recordsの社長)がプロデュースしているが、彼は翌年に父と叔父が創業したチェス・レコードを離れ、あのローリング・ストーンズ・レコーズ(Rolling Stones Records)の創業社長に就任している。
それはさておき肝心の内容は、マディのアルバム程の違和感というか不整合感は無く、ボのようなハマりっぷりも無いが、さすがアクの強いダミ声のウルフは、ピート・コージー(Pete Cosey)らの鋭利なギターやワウワウの効果に引き摺られることなく、力ずくでまとめている。過去の代表曲はアレンジこそ当時風だが、ウルフ自身がそこまで嫌う程の違和感は感じられない。5なんてアレンジもなかなかカッコイイと思うんだけどなァ(逆に6はちょっと…)。こうしてみると同じプロダクションではあっても マディ < ウルフ < ボ、と年毎にアルバムとしてはまとまっているような気がするが、それが面白いかどうかはまた別の話。セールスも結局最初のマディ版が一番良かったと聞く。ま、ウルフはこのアルバムの事を「犬のクソ」と言っていたらしいし(笑)、チェスもあのジャケはやっぱりセールスの足を引っ張ったと反省したらしいから、いつだってアーティストとレコード会社の間にははいろいろあるっていう話だ。
amazonにて購入(¥879)
- CD (2013/12/11)
- Disc : 1
- Format: Limited Edition, Original recording remastered
- Label : ユニバーサル ミュージック