ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

歌舞伎「一谷嫩軍記」「春興鏡獅子」 @東京・国立劇場

2013年10月31日 | 歌舞伎・文楽

Kabuki2s 

歌舞伎「一谷嫩軍記」「春興鏡獅子」 (10月6日 東京・国立劇場)

今回の上京の目的のひとつが歌舞伎観劇。自分は生まれて初めての歌舞伎体験だ。本当は新装なった歌舞伎座での公演をと思っていたが、下調べをしている時にどこかのブログで(失念失礼)、歌舞伎は筋や話の人間関係が分かりにくいものが多いが、ひいきの役者のPV(プロモーション・ビデオ)作品のようなものとして観劇するという見方でもいいと助言してくれていた方が居て、初心者だし、それならば知っている役者が出ている方が楽しめるかなと、以前に著書を何冊か読んだことのある中村幸四郎、市川染五郎が演ずるこの公演を選んだ。

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銀座からバスに乗り、三宅坂で降りて劇場へ。着物を召した方が多く、気分が盛り上がる。正午の開演とあってすでに弁当をパクついている方も多い。安い値段の席でだいたいの場所は事前に分かっていたが、改めて座席を確認すると前から実質4列目の花道横という素晴しい席だった。花道の外側の席は通称「ドブ席」といい、役者が背を向ける事が多いから安いのだとか。へぇー、こんなにいい席なのに。一応イヤホン・ガイドも購入し席に着く。そして待望の幕が上がった。

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まず義太夫節の迫力がすごい。生の唄と三味線の音が会場内に響き渡り、会場は一気に別世界へ。この迫力ある音が両耳から聴けないのはつまらなく、せっかくお金を払ったのだが、すぐにイヤホン・ガイドは外してしまった。花道から役者が登場すると、自分の脇を駆け抜けていく感じなので、これも大迫力。見得を切る時には自分の真上のような感覚で、役者の汗や荒い息遣い、そして台詞が上から降ってくるような感覚に襲われる。マイクで拾ったのではない役者の生の声の迫力あること。

あっという間に幕間になり、遅い昼食を。この日は折角の初歌舞伎観劇だからと創業・嘉永3(1850)年の仕出し弁当の老舗、日本橋の「日本橋弁松総本店」で定番の弁当「並六」を予約してあった。秋らしくご飯は松茸ご飯。HPに「濃ゆい味」と記述するだけあって、しっかりとした味付けの弁当らしいおかずとこの季節ならではの松茸の風味を楽しんだ。最後には甘い豆きんとんがデザート代わり。あっというまに幕間の30分が終わり、席へ戻る。

陣門~組討、そしてクライマックスの熊谷陣屋へと話は進み、自分の子を差し出さねばならなかった無情を嘆く熊谷次郎直実(松本幸四郎)の演技が、染五郎と親子共演しているだけに真に迫ってくる。いやぁ、面白い。事前にある程度話の知識を得て臨んだので、ガイド無しでも戸惑うことなく楽しむことが出来た。テレビでしか見たことがなく、これまであまり興味が持てなかった歌舞伎をこんなに楽しめるとは思わなかった。

(※後日談になるが、同公演中、花道を馬(黒子)に乗って登場する場面で幸四郎が落馬し、観客席に落ちたとの事。幸い怪我無く無事だったとの事だが、真下で見ていた者とすると、あの甲冑を着たまま、あの高さから落ちて怪我がなかったのは奇跡だと思う。)

次の演目は「春興鏡獅子」。染五郎が女形・小姓弥生を演じ、その息子・松本金太郎と中車(香川照之)の息子・市川團子が蝶の精となって共に舞う。色っぽい女形と微笑ましい蝶の精、それに獅子の精に取り憑かれた荒々しい踊りの対比が面白い。

あるきっかけがあって歌舞伎を見てみようと思ったのだが、実際に観る前まではあの厚化粧で、しかも演出は違えど過去と同じ演目を演って、どうやって役者の色を出すんだろうと思っていたが、劇場で観ると表情や息遣いの隅々まで感じる事が出来るので、舞台に出た時に役者によって舞台上の雰囲気まで変わってしまう事が分かる。「華」があるとかってこういうことなのかな。こうなると他の役者も観てみたくなる。舞台装置としての花道それ自体も面白いし、音楽の生演奏だけとっても面白い。どうもハマってしまったようだ。

並木宗輔=作

「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」 二幕三場
陣門・組討・熊谷陣屋

国立劇場美術係=美術
      
序 幕  須磨浦陣門の場   
           同 浜辺組討の場
二幕目 生田森熊谷陣屋の場

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福地桜痴=作

新歌舞伎 
「十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」 長唄囃子連中

国立劇場美術係=美術                        

(出演)
松本 幸四郎
中村 魁春
市川 染五郎
中村 松江
市川 笑也
大谷 廣太郎
松本 金太郎
市川 團子
大谷 廣松
澤村 宗之助
松本 錦吾
市川 高麗蔵
大谷 友右衛門
市川 左團次
        

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元祖長浜屋 @福岡県福岡市

2013年10月30日 | 福岡県

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昭和27(1952)年に創業した長浜ラーメンの老舗名店で、替玉というシステムの発祥の店と言われている「元祖長浜屋」。自分は普段豚骨極細麺のラーメンはあまり積極的にを食べないが、せっかく本場に来たということで、ひと飲みしたあと博多の繁華街から少し離れたこちらまで散歩がてら歩いてみた。

知っている人は知っていると思うが、この店の近辺には似た店が乱立している。しかもここ「元祖長浜屋」の元従業員が出したそうで、ラーメンの仕様から販売形態まで丸写し。店の名前は「元祖ラーメン長浜家」(!)。加えてそのまた店の元従業員が全く同じ名前(!!)で同様の店を近所に出すという信じられない事になっていて、後ろ2軒は当然のことながら裁判沙汰になっているみたい。ま、そりゃそうだ。同じやるにしても目と鼻の先に店舗を構えるという挑戦的な神経が全く理解出来ません。博多ってすごい。

店舗は新装開店してからまだ数年ということで新しく、入口横に券売機が置いてある(といってもラーメンと替玉と酒類のボタンしかない)。ずっと400円だったらしいが、今年の夏から500円に値上げしたとの事。券を渡す時に麺の硬さの好みを伝えて着席。テーブルの上にはふりごまと紅生姜の入った容器が置いてある。もちろん混んでいると相席だろう。

すぐに運ばれてきたラーメンは薄い肉と葱というシンプルな具材で、熱々のスープを飲んでみると噂通り、さほど濃度は濃くなく、あっさりとまでは言わないが楽に飲めるくらいの濃度。いわゆる臭みは少なめで万人受けするスープだと思う。特徴でもある極細麺は「普通」で自分にはちょうどいい茹で加減。この店に限らず多くの人が「バリカタ」を注文するが、自分はあれのどこが良いのか全然分からない。店の人はあまり緊張感なく、次々と入る客をこなしていっているという感じなので、正直味を心配したが、どうしてなかなか旨いラーメンだった。(勘定は¥500)

元祖長浜屋

福岡県福岡市中央区長浜2-5-38 トラストパーク長浜 1

(元祖ラーメン長浜屋 長浜屋 ながはまや)

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並木藪蕎麦 @東京・浅草

2013年10月29日 | 東京都(老舗)

<少し前に訪問した老舗覚え書き・6>

大正2(1913)年創業の浅草・並木通りの並木藪蕎麦が2011年に老朽化の為に建て直しすると聞いてガッカリした人は多かっただろう。あの風情ある建物ともお別れかと。地価の高騰や税金の事を考えると、ビルにでもして上階を貸した方が財政的にも有利だろうことは素人でも想像出来る。実際、数多くの老舗店舗がそういう理由でビルに建て直したり、テナントに入ってしまったりして風情ある歴史的建物の多くは消滅の憂き目にあってきた。

最も蕎麦屋らしい佇まいのひとつだった建物の建て替えが終わって(というか建て替え途中で分かったが)、嬉しい驚きを感じたのは自分だけではないはず。建て替え後もほぼ以前のまま。さすがに真新しい壁面の色はまぶしいが、よくぞここまでという再現ぶり。しかも中の造作、意匠まで以前とほとんど変わらない大英断。店主の矜持を窺い知ることが出来る。店内を含む新旧の比較は施工会社のHPで確認出来る。お見事!

ちなみに自分が撮った建て替え以前の写真はこちら↓

Photo

東京一(つまり日本一か)辛いと言われる並木藪のそばつゆ。口をつけてみるとやはりしっかり辛いが出汁の旨味も感じ取れる。ここに裏返しのざるに盛られた蕎麦をちょっとつけて手繰る(どっぷりつけると辛いですよ)。ここより辛いと思えるそばつゆには今のところ遭遇したことはない。特に自分の住む中部地方は、最近でこそそうでもなくなったが、古参の店だとたまり醤油由来なのか、やや甘めのつゆを出す店が多い。実際のところ並木藪のつゆが昔と比べて変わっているのかどうなのかは知らないが、このまま守り続けていって欲しい唯一無二のそばつゆだ。ひとりでテーブルに座るとおばちゃんがさっと新聞紙を持ってきてくれたりする心遣いは相変わらず。混んでいても居心地は悪くないし、ひとり者、カップル、家族、多人数の観光客、とどんな客にも自然体の応対がうれしい。

この後の記事はこちら

並木藪蕎麦

東京都台東区雷門2-11-9

 

(並木薮蕎麦 並木やぶ蕎麦 並木藪そば 並木藪そば 並木やぶ)

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かねます @東京・勝どき

2013年10月28日 | 東京都

勝どき駅のすぐ横にある名物立ち飲み屋。様々な伝説があり、曰く「椅子があれば某格付け三つ星」だの、某国の名シェフが来日時に立ち寄るだのと、とても面白そうなお店。以前店の前を通ったこともあるが待ち合わせの時間があり、残念ながら入ってみる事は出来なかった。

Photo_4

この日は土曜日だったが、土曜は早く開店する事もあると調べていたので、無理やり時間を作って3時半ごろに到着。店の外から中はうかがい知れず、縄のれんだけが掛かっている。思い切って縄のれんをくぐってみると…超満員(笑)。ただ、すばやく皿が空いている人を見てとったので、わざわざ時間作って来た事もあり、少し外で待つ。こうしてまだ明るいうちにビル1階の縄のれんの前で立って待つ、というのはどうにも…かっこ悪い。目論見通り、少し経って人が出てきたので店内へ。

厨房には男性3人。客は15人位立てるだろうか。一番若いのに目配せをして店の奥に案内してもらう。立飲みカウンターの後ろはやっと人が通れる位の狭さなので、皆に通してもらいやっと場所を確保。見た所、少人数のグループや2人連れが多い。客層は50歳代中心といったところ。立ち飲みといっても安くはないので若い人には少し敷居が高いかも。

メニューが書いてある黒板にはかなりクセのある読みづらい字で15、6種類のメニューが書いてある。値段は1品約¥1,000~¥2,000と立ち飲みとしては破格の高値。こういうところは何人かで来て酒肴を分け合うのが一番いいだろうが、自分はひとりなので仕方なく名物メニューの生うに牛巻きと冷や(常温)のお酒(富山の「幻の瀧」だそう)を一杯注文。生肉への規制があってからだろうが、申し訳程度に表面が炙られた霜降りの牛刺しでこぼれ落ちそうな雲丹としそが巻いてある。インパクトは充分。平静を装っていたが、心の中では「うぉー」と叫び声が(笑)。わさびと醤油で食べるが、一口でいくほかない。どちらも質は申し分なし。でも自分にはこの二つを合わせて頬張る良さはいまいち分からない。せっかくの霜降り牛刺しが口一杯に広がる雲丹の風味で埋没してしまうのだ。贅沢な話だがそれがもどかしい。

時間があれば箱すしを頼んでつまみつつ、お酒をもう少しゆっくり飲んでこの店の真髄を味わいたいところだが、残念ながらタイムアップ。この店なら連れと一緒に来て、それぞれのメニューのインパクトを共有した方が絶対楽しいだろうな。(勘定は¥2,600)

かねます

東京都中央区勝どき1-8-1

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烈風 (Reppoo) / Styx

2013年10月26日 | アナログ・レコード

Styx

烈風 (Reppoo) / Styx (1981)

スティクス(Styx)の1981年発売の来日記念盤アナログ・レコード。当時は持っていなかったが、100円コーナーに刺さっていたのでつい購入。日本独自編集で、インパクトあるジャケットといい、コンパクトにまとまったベスト的選曲といい、なかなかの好盤。こういう思い切ったアートワークや選曲での発売を各国の担当レコード会社の裁量に任されて発売出来ていた事が素晴しい。ま、「酢亭久洲=スティクス」の当て字には脱力するが。

自分が初めてスティクスを聴いたのはNHKで放送されていた貴重な洋楽番組「ヤング・ミュージック・ショー」の武道館ライヴの映像だった(こういう人も多いのでは?)。当時我が家には新し物好きの父が購入したビクター製のビデオテープレコーダーがすでにあった。当時の記憶を基に検索をかけてみると、なんと当時の値段は約25万円(!)とのこと。確かに録画用のVHS生テープが1本5,000円位した記憶があるからそんなものかもしれない。そこにこのスティクスの武道館ライヴ映像も録画して何度も見たからあの番組の印象は強い。

ちなみにその当時のビデオ・デッキがこれ↓ チャンネルがアナログ・ダイヤルだ(!)

Victor

つまり時期的にはあの名盤「Paradise Theater」には間に合っておらず、後追い。もちろん番組を見た後にレコードを買いに走ったのは言うまでもない。それでもヒット曲「Babe」ぐらいは聴いていたかな。

スティクスはバンドとして行き着いた先が、邦題「ミスター・ロボット」として知られる「Kilroy Was Here」だったのでキワモノっぽいイメージは拭えないが(笑)、ストーリー性を含んだプログレっぽい展開に、アメリカらしいハード・ロックとポップが組み合わさった多彩で面白い音楽性を持っていた。「Paradise~」に収録の「Half Penny Two Penny」のハードなギター・リフなんて今でもしびれるほどかっこいい。日本では某評論家達が「産業ロック」と名付けて揶揄したために、あまり音楽性うんぬんで語られることのなかったバンドだが、人気は安定してあったように思う。久しぶりに聴いたが、編集盤で内容がバラバラとはいえ、なかなか良かった。バンドに歌える人間が3人もいるというのはなかなかの強み。

A-Side
1  Borrowed Time
2  Crystal Ball   
3  A.D. 1928
4  Rockin' The Paradise
5  Suite Madame Blue
6  Boat On The River

B-Side
1  Come Sail Away 
2  Renegade
3  Miss America   
4  Blue Collar Man (Long Nights)
5  Babe 

(中古店にて購入¥105)

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玉川食堂 @福岡県北九州市

2013年10月25日 | 福岡県

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小倉の駅前の商店街をブラブラと歩いてみる。すぐ近くの「魚町銀天街」と呼ばれるアーケード街は戦後、昭和26年に出来た日本で初めてのアーケード街なのだとか。その他にもいくつか商店街があり、ここでもチェーン店の攻勢と店舗の均質化というつまらない状況は他所と変わらないが、それでも地元の店が頑張っている様子が分かる。この日、昼食に選んだのはこの魚町銀天街アーケードにある「百万両」という手芸屋のビルの地下にある「玉川食堂」。入口のホワイトボードには「今年で95年」と書いてあったので、創業は大正7(1918)年ということになるのだろうか。

お店は古びた地下の飲食街の端にあり、飲食街自体がかなり古びている。開店していそうなのは他に数軒で、空きテナントというか空間も目立つ。店の前にはショーケースにたくさんサンプルが並べられている。こういう大きさのものって懐かしいなぁ。店に入ると中はさほど大きくなく、テーブルがいくつかと小上がりもあるようだ。奥の厨房には主人と女性3人がいて、たくさんのフライパンが吊るされているのが見える。店の規模の割に人が多いので、永年に渡って小倉の人々の胃袋を満たしてきたんだろうな。

支那天定食という鶏肉の天ぷらを注文。胸肉だと思うが薄めの味付けと柔らかい食感で、そのまま食べたり、醤油をかけてみたりして熱々を頬張った。定食には味噌汁と小鉢が付いてくるが、結構な種類の中から自分で選ぶことが出来て、自分はきんぴらごぼうを選んでみた。初めて使った福岡県の濃い口醤油の味はとても甘く、このきんぴらもかなり甘口。なるほどこちらの醤油はこうなんだね。面白い。(勘定は¥680)

玉川食堂

北九州市小倉北区魚町2-3-21 B1F

(たまがわしょくどう、たまかわしょくどう)

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喜寿司 @東京・日本橋人形町

2013年10月24日 | 東京都(老舗)

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<少し前に訪問した老舗覚え書き・5>

歩けば老舗に当たる日本橋・人形町。ビルに入っているような会社やその辺の酒屋でも創業が江戸時代や明治時代だったりするので、老舗めぐりが好きな自分にとっては興味が尽きず、歩いていてもキョロキョロしてしまう魅力的な街だ。芸者の置屋だったという古い建物のここは江戸前鮨の名店「喜寿司」(実際の喜の字は七が三つ)。大正12年(1923)の創業という老舗で、今も古き佳き江戸前鮨の佇まいを残している。風格ある建物自体は昭和27年に置屋を改装したそうだ。お昼の開店してすぐの時間に飛び込みで入ってみた。店内は名店に共通するピシッとした空気があり、隅々まで綺麗で、白いカバーのかけられた椅子が清々しい。若い店員の応対もしっかりしていて気持ちが良く、生憎の天気であわてて買った安いビニール傘を預けるのが少々恥ずかしくなる(笑)。

見せてもらった品書きには「おきまり」(値段は3種)があったので、一人前を注文。歴史ある古い鮨屋にはだいたいおきまりがあるので飛び込みでカウンターに案内されても安心だ。おきまりは1貫づつ握られ、煮切りが塗られている。どのタネも切りつけが綺麗で、とても満足出来る8貫(+巻物)だった。昼のおきまりなのでどれも飛びっきりのタネという訳ではないが、仕事のしてあるタネはそれを感じさせないという利点もある。足りなければ好きなタネを追加することももちろん出来る。この日はあいにく予定があり、追加はなしでさっと店を出た。ここのバラちらしもぜひ試してみたいなぁ。小肌やかんぴょう、おぼろなどの昔ながらの仕事を一口づつ味わいながらお酒をいただきたい…。(勘定は¥3,675)

この後の記事はこちら

喜寿司

東京都中央区日本橋人形町2-7-13

 

 

(きずし きすし)

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登運とん @東京・有楽町

2013年10月23日 | 東京都(老舗)

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有楽町のガード下と言えばここ「登運とん」(とんとん)。このあたりを歩いた事がある人なら一度は目にしたことがあるだろう天井の低いガード下に並べられた簡易テーブルとイス、それにモクモクと煙るもつやきの煙。戦後しばらくしての昭和28年(1953)創業の老舗で、店の路上看板には「いんてり・ばばぁの店」(笑)と表示されている。由来は知らないが、名物ばばぁがいたのだろうか。ここの店の「もつやき」とは豚のもつ(ホルモン)の事。上の写真は雨の日の昼3時頃なので人はまだ少ないが、それでも何組かがもうすっかり出来あがっている。これが夜になるとまさにカオス状態になり、店が簡易テーブルで席を増設しても座れない事も。以前、新橋方面からせっかくだからあのガード下へ行こうと幾人かで流れてきた時も座れず断念したことがある。

この日は1人だったが、特に用事はなかったので空いた席に着いて燗酒(富貴)ともつやきを何本か注文。昔ながらのという感じで甘味がやや強く、得意なタイプの酒ではないが、雰囲気重視なのでOK。もつやきはこういう店としては値段はやや高めだけれど、さすがに旨い。ちなみにつくねも旨い。まだ店がのんびりしているので、あのごちゃごちゃとした特有の風情は感じられないが、道行く人たちの視線を浴びながら昼間から酒を嗜むのはなんだか悪くない気分。

この店の客層はいつも本当に様々で、自分のようなおひとり様から、若いカップル、サラリーマンのグループ、お歳を召した方、訳ありっぽい方々、など本当にバラエティに富んでいる。この日とは別の日の週末の夜に連れと飲みに行ったが、その時は大混雑で、もういろいろなもつの部位が売り切れてしまっていたほど。場所的にも新橋、日比谷、有楽町、銀座の各駅から近いので通りがかりにちょっとだけ一杯ということになるのだろう。みな考える事は同じだ。でも一度はここに座ってみたいよね、やっぱり。(勘定は¥1,200程)

登運とん (とんとん) 

東京都千代田区有楽町2-1-10

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北九州駅弁当 @福岡県北九州市

2013年10月22日 | 福岡県

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仕事で九州の小倉に新幹線で出張。恥ずかしながらこの歳になってやっと九州初上陸です。到着したのがちょうど昼前だったので在来線のホームに降り、名物となっている「かしわうどん」を食べに7、8番ホームに行ってみた。ここは創業明治24(1891)年という老舗の駅弁会社が運営する、いわゆる立ち食いうどん店。ホーム上に店舗があり、まるで名古屋の新幹線ホームにある立ち食いきしめん店のよう。このホームとは別のホームにも店があるらしいが、なぜかこの7、8番ホームの売上が突出しているのだそう。

店では電車待ちの何人かがうどんを掻き込んでいる。一口、二口食べ、ほとんどを食べ残してホームに滑り込んだ電車に飛び乗って行ってしまった猛者もいた(笑)。注文した「かしわうどん」には甘辛く煮られた細切れのかしわ(鶏肉)とネギとかまぼこが載っていて、小さめの丼に入ったうどんは当然半茹でのものを温めなおすタイプ。出汁は色、味ともに淡麗でとても旨い。うどんは讃岐うどんのようないわゆるコシのあるものではなくヤワめのもの。現在、巷ではうどんに限らず麺類において、何でもかんでもコシがあるのを良しとするような風潮があって、中にはしっかり茹でが出来ていないものをコシとはき違えている硬くて不味い麺にも遭遇する。ここのうどんの麺はもちろんヤワだが、つるっとした喉越しで、これはこれでいい。トッピングのかしわは、細切れで甘めの味付けなので、食感といい鶏肉らしさはあまりなく、牛しぐれ煮などとあまり区別がつかないくらい。だんだん甘味が移り、出汁の味も変わってくる。するっと食べられて、シンプルで旨い。おまけに安い。自分はあまり温かいうどんを好まないが、これならいつでもお腹に入りそうだ。

鶏肉の事を「かしわ」と呼ぶのは西日本以外の地方ではあまり無いのかな。何を隠そう私の住む(範囲は分からないが)中部地方では普通に「かしわ」と呼ぶので全然違和感はない。私の住む中部の地域は意外と関西語の影響が強いのは確かだが、なぜ中部の一部にだけ「かしわ」という呼称が浸透したのだろう。(勘定は¥350)

北九州駅弁当

福岡県北九州市小倉北区浅野1 JR小倉駅構内

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紀文寿司 @東京・浅草

2013年10月21日 | 東京都(老舗)

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<少し前に訪問した老舗覚え書き・4>

浅草で明治36(1903)年という創業100年以上の老舗でありながら、メディアへの露出は割と少ないお店。自分がこの店を知ったのは先代の関谷文吉氏の著書「魚味礼讃」を読んだことがあったから。この本の、ただの鮨屋の主人とは思えない、下地としてある(魚に限らない)驚くほどの知識、魚の味を言葉にして表す表現力、それに驚くような様々な例えに驚愕した覚えがある。こんな鮨屋の主人がいるのか…。是非そんな人が握る店を訪ねてみたいと思っていたが、調べてみると関谷氏はは若くして亡くなったようだった。現在はその関谷氏の兄がやっていると聞いた事がある(でもよく知らない)。

休日の昼時だったのでこの界隈はかなり人通りが多く、有名店は並んでいる客が目立ったりもしているが、角に立つこの店の佇まいはまるで時空が違うよう。店に入ってもホワイトボードを除いて平成の世を感じさせるものがほとんど無い(笑)。昔盛り込みに使ったであろう大きな寿司桶が飾られている。小上がりもあり、想像していたより広いつけ場には常連客と談笑する初老の方と若い衆。初老の方がかの関谷氏の兄だろうか。自分は寡黙な若い方に握ってもらう。

特上のおきまりを注文。おきまりは皿盛りではなく1つづつ握ってくれた。どれも江戸前鮨らしい仕事がなされた握り。握り手は若いが、決して今流行っているようなスタイリッシュな鮨ではなく、やや大きめの昔からこうだったであろう古いタイプだ。小肌や穴子あたりのタネが昔の鮨を彷彿とさせる。あっけないほど短い時間で食べ終わってしまったのが惜しくなるくらいだった。満足。でももっとこの店の雰囲気に飲まれていたかった。たぶんこの店ではゆっくり腰を落ち着けて食べてもびっくりするような値段にはならないんじゃないかな。(勘定は¥3,570)

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紀文寿司

東京都台東区浅草1-17-10

(紀文 きぶんずし きぶんすし)

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